精神科治療において、冬場の寝室の温度はとても重要な要素の一つだと思う。例年、急に寒くなり始めた頃や、低温の日が続くときに、精神症状が悪化するような人は対策が必要です(夏場の寝室の温度も大切です)。
K子さん(34歳)通院歴:3年 診断名:神経症性うつ病、月経前症候群(軽度)
K子さんは、最近の1年間は休職することなく仕事を継続できている。症状が悪化すると、朝起きれなくなり、遅刻や欠勤が多くなる。昨年の冬場には、K子さんと以下のようなやり取りがあった。
平成29年12月9日「一昨日、昨日あたりから、風邪のような症状で、関節が痛くて、熱はないけれど。(このような傾向は)2~3年前から、気温が下がりだす頃にあるような気がする。先週末の(木)から(金)にかけては、眠くて寝てばかりいた。寝汗もひどくて夜中に目が覚めてしまう」という訴えがあった。<低体温気味ですね・・・>と。
平成30年1月13日「年末年始の休みに入ってから疲れやすい。今月に入って何度か遅刻した。行ってしまえばいいんだけど、家を出るまでが大変。気持ちもウツっぽい」といわれて、一瞬・・・うつ状態の再発?が懸念されたのですが、・・・「(会社に)行ってしまえばいいんだけど・・・」ということを考慮すると、<朝起きた時に、深部体温が下がったままなので目が覚めにくく、起きた後も深部体温がなかなか上がってきてくれないので、体がだるくてボーっとしてるんじゃないかな。寝室に温度計を置くようにして、睡眠中の室温(とくに朝起きるときの室温)が15℃以下にならないように暖房してください>と伝えた。
そして2週間後(平成30年1月27日)、「寝てる間も暖房をつけて、部屋の温度をあげていた。寝汗をかかなくなって、ちょっと楽になった。朝も起きやすくなったし、憂うつ感も少し減ったような気がする。遅刻もしてません」と、訴えていた症状が改善した。
*深部体温というのは、体の表面温度(腋下体温)ではなく、脳や内臓など、体の深部の温度です。日中活動しているときに最も高くなり、睡眠中に最も低くなります。その変動幅は1~1.5℃近くあります。深部体温の日内リズムが何らかの理由で崩れれると、体調不良やうつ状態の誘因になったりします。日内リズムを崩す原因には、種々の精神障害、過労、夜更かし、食べ過ぎ飲み過ぎ、過激な運動、過度の心配、寒暖差、低気圧、スマホのやりすぎ、・・・など数え上げればきりがありません。
そして、今年の冬は・・・
平成30年12月21日「今年の冬は、今のところ大丈夫です。寝ているときの暖房はちゃんとやってます。昼も冷えないように気をつけてます。PMS(月経前症候群)もあるけど、そんなに酷くない」と。今年のK子さんは、起きているときも、眠っているときも、外気温(寒暖差)に体温リズムが乱されないよう細心の注意を払っています。この2年間、手動瞑想が習慣化しているので、自分の身体感覚(温度感覚)を正しくモニターできるようになっているのかもしれません。
K子さんの場合は、例年冬場になると、体温調節が上手くいかなくなっていた。とりわけ早朝の室温が低すぎると、深部体温が下がったままなので、起き辛くなっていたようです。寝室の温度を16~19℃に保っておくと、起床前の深部体温の上昇を助けてくれるので、目覚めやすくなり、朝の動き出しがスムーズになります。
睡眠専門医によれば、「冬の寝室の温度は、16~19℃の範囲がベスト(個人差あり)。これ以上室温が高いと、冬の就寝環境(毛布やパジャマの保温性)を考えれば、暑くて寝ている間に布団をはいだりしてしまう可能性がある。また、これ以上室温が低いと、呼吸によって肺が冷やされる。結果、体温が下がりすぎて、睡眠の質が悪くなる。
寝室と居間が別の人は、その気温差にも注意したい。暖かい居間から急に寒い寝室に入ると、交感神経が刺激されて目が覚めてしまう。結果、寝つきが悪くなる。冬は、寝る1時間くらい前から、寝室の温度を16~19℃に整えておきたい」ということです。
蛇足:さて、私が患者さんにお勧めしている、冬場の寝室の暖房器具は、就眠中だけに使うオイルヒーターです(輻射熱を利用、1万円以下で買える)。一般の方々、とりわけご老人にはお勧めです。寝室の温度を16~19℃の低めに保つにはもってこいです。オイルヒーターは、風が出ない、乾燥しにくい、空気を汚さない、音が出ないなど、エアコンやファンヒーターにはないメリットがあります。若い人には「電気代がかかる」と敬遠されがちですが、睡眠中だけに限定して使えば(日中の暖房には使わない)、電気代もそれほど高くはつきません。何しろ、朝の目覚めやすさが全然違います(私が長年にわたり実証済み)。さらに、寝室の温度を16~19℃に保つことは、就眠中に知らず知らずのうちに寒さで体を緊張させ、朝起きたら首や肩が凝って頭痛がするということの予防にもなります。なんだかオイルヒータの営業をやっているような文章になってしまったようですが。
とにかく、ゴチャゴチャした理論は抜きにして、“質の良い睡眠のためには、寝室は春や秋のような快適な温度にしておくのがよい”ということなんです。