うつ病や不安障害の患者さんは、肩こり、頭痛、腰痛などに悩まされている方が多い。心配や後悔は、自ずとあちこちの筋肉(主として背部側の筋肉)を緊張させます。筋肉の緊張が続くと、筋肉は固くなって痛みが生じます。その対策の一つとして“ストレッチ”を勧めていますが、正しいストレッチのやりかたを理解している人はほとんどいません。「会社で朝にラジオ体操をやってますから」などと、ストレッチと柔軟体操を混同していている方がほとんどです。

 

 “ストレッチ”とは筋肉を軽く引っ張って、伸ばした筋肉の局所血流を良くすることです。一方、柔軟とは柔軟体操とも呼び、関節の可動域を広げることを目的として行われる体操です。肩こり・頭痛・腰痛などの対策としては、ストレッチが適しています。ラジオ体操などは、あまり役に立たず、間違ったやり方をすると(力を入れ過ぎたり、筋肉を伸ばしすぎたりすると)、かえって痛みが増すことさえあります。ストレッチを習慣化すると、日常生活において生じる筋肉の緊張を緩和し、肩こり・頭痛・腰痛などを予防することもできます。ストレッチは時間をかけてゆっくりと、痛みや凝りのある筋肉を伸ばすことが重要です。無理に押さえつけたり、弾みをつけたりするのは逆効果です。

 私がクリニックで20年近く使っている、“ストレッチ指導用のプリント”は、以下のようなものです。

 


 肩こり・頭痛・腰痛予防のための、正しいストレッチのやり方

1)  反動をつけずにゆっくり伸ばす。

2)  痛みを感じない、心地よい程度に伸ばし(30秒~40秒)保持する

3)  ストレッチ中は、ゆっくりとした呼吸を心がける(決して呼吸を止めない)。

4)  ストレッチする筋を常に頭で意識しながら伸びているのを感じながら)行う。

5)  右側の筋のストレッチをやったら、左側も必ずやる。

6)  毎日、できれば1日のうちに何回でも行うとよい。

 

 長年続けていると、何時でも何処でも自分のやり方で、やれるようになります。

 

                         ○○メンタルクリニック


 

 このプリントを手渡して説明する際に強調することは、

 

<5秒10秒では短すぎますよ、20秒以上(30秒くらい)ゆったりと伸ばしてくださいね、筋肉がのびて血流がよくなるには、それくらいの時間が必要です。40秒以上やって悪いわけではありませんが、時間をかけた割には効率が悪いんです>

<力んで息を止めると、血液に酸素が送り込まれず、筋肉にも酸素が届かないので、リラックスして、ゆっくりと呼吸してくださいね>

ストレッチする筋肉を常に頭で意識しながら行うこと。肢位(手・足・首・腰の位置や形や角度)を真似ることだけに注意が向けられてしまうと、肝心の伸ばしたい筋肉がのびていないことが往々にしてあります。筋肉のつき方には個人差があって、同じような肢位をしていても、のびている筋肉が違います。ある程度までは肢位を真似たとして、後は微妙に手足の角度などを調整し、自分が伸ばしたい筋肉の位置を確認して、その筋肉を伸ばせるようにならならないと、正しいストレッチにはなりません>

息を吐いたときに、お目当ての筋肉が、気持ちよく伸びている、伸びていると感じながらやることが大切です。そうすることで、ただ筋肉を伸ばしただけよりも、血流が増加するということがわかっています。>

<左右両方やるといいのは、体の左右のバランスを崩さないためです。凝っているのが右肩だけだとしても、左肩もストレッチしてあげてくださいね>などです。

 

 診察室で実際にやってもらって、お目当ての筋肉が伸びているかを確認します。伸びているのが別の筋肉のときは、肢位を微調整してもらい、お目当ての筋肉にたどりついてもらいます。上達すると肢位にこだわらないで、何時でも、何処でも、自分のやり方で(電車の中・スーパーのベンチ・オフィスの椅子など)、伸ばしたい筋肉を伸ばすことができるようになります。

 

 おじいちゃん先生が、テニスの後、暗闇の中でひとり静かにやるストレッチは、息を吐きながら、イーチ、ニイー、サーン・・・と、20まで数を数えながらやります。このようにやれば、ストレッチをやりながら瞑想をやっていることにもなるので、一石二鳥です。もっとも、年を取ると何日も筋肉痛が続くので、痛みが早くとれるようにと、仕方なくやっている、というのが本音です。