手動瞑想を習慣化することの難しさを、日々痛感しています。このブログに何回も出てきているテーマですが、永遠のテーマかもしれません。

 薬物療法が効いて完全寛解に至り、病気になる前の日常生活を取り戻すと、薬を服用することは忘れないけれど、知らず知らずのうちに、手動瞑想の習慣が薄れていきます。毎回、<これ(手動瞑想の動作)、やってますか?>と声掛けするのですが、「すっかり忘れていました。忙しくて・・・」という患者さんの反応が最も多い。せっかく覚えた手動瞑想(ヴィパッサナー瞑想)を続けることができれば、<再発予防や薬の減量が可能になるだけでなく、“心配や後悔”をしにくい性格に変えていくことができ、ゆくゆくは人格者にもなれますよ>と笑いながら伝えるのですが、笑ってごまかされてしまいます。

 

 マインドフルネス普及の火付け役となった、ベトナム出身の高僧、ティク・ナット・ハンの著作、『微笑みを生きる-“気づき”の瞑想と実践』の引用です。

 

 “気づきのベル(マインドフルネスベル)”では、

「私たちの僧院では鐘の音を聞いて、いま、ここに戻る練習をします。鐘の音を聞いたら、すぐに話をやめ、考え事をやめ、自分自身に戻って、微笑みながら息の観察をします。何をしていてもちょっと仕事をやめて、呼吸を味わいます。・・・」

 

 “ドライヴィング・メディテーション(運転瞑想)”

「・・・車を運転するとき私たちが考えることは、ただ目的地に着くことだけです。だから赤信号にあったら、いらだちます。赤信号は目的地に着くのを遅らせる憎い敵になります。しかし赤信号を、いま、ここに戻るための“気づきのベル”だと考えることもできるのです。今度赤信号になったら、にっこり笑って息に戻ってみてください。『息を吸って 私はしずか 息を吐いて 私は微笑む』と(三回分の呼吸を味わいます)。とても簡単に、いらだった自分から心地よくくつろいだ自分に変身することができます。同じ赤信号でもまったく別のものになります。赤信号はもう私たちの友だちになって、いま、ここ、この一瞬に生きることの大切さを教えてくれます。・・・」

 

 現在私が利用している、“気づきのベル”は、

 

①    車の運転中に赤信号で停車したとき

②    入浴時、最初に湯船に入っているとき

③    トイレで、用を足しているとき

④    パソコンの起動を待っているとき

⑤    夜、寝床に着いたとき

⑥    パソコンを使った作業が一段落したとき

⑦    テレビを見ていて、コマーシャルが始まったとき

⑧    アメーバブログを開くとき

⑨    診療中に、患者さんが途切れたとき

 

 私の場合は、上記の気づきのベルを利用して、手動瞑想14動作ワンクールもしくは呼吸三回から五回分を、場面に応じて使い分けています。 1か月間実践してみて感じたことは、気づきのベルに気づいて、手動瞑想もしくは呼吸瞑想を始めると、つまらない追っかけ思考をストップさせて、いま、ここに戻ってくることができます。さらに、「○○○・・・と考えていたな」と、現在の思考ではなく、直前の思考(5秒前、10秒前、時には5分前)に気づくことができます。これを日々実践することで、知らず知らずにやってしまう“心配や後悔”をストップさせ、思考をリセットできるのではないか、という期待も膨らみました。2週間前からは、「忙しくて・・・」という患者さんにも、この“気づきのベル”を勧めているところです。このブログを投稿したら、パソコンの電源を切り、手動瞑想の14動作をワンクールやって寝床につきます。

 

 マインドフルネス認知療法の中では、瞑想の習慣化や直接問題に対処するための手段として、“3分間呼吸空間法”というのがあります。毎日決めた時間に3回、さらに、何らかの困難を感じた時には3分間、呼吸瞑想をやるというものです。しかし、これも、毎日やるということを習慣化するのはとても難しいものでした。患者さんにとって、3分間は短いようで長いようです。それなら、10秒間でも、18回やれば3分間、54回やれば9分間、・・・という発想でやってみてはどうか、ということです。気づきのベルは、いつでも・どこでも・何秒でも自分仕様で設定できるというのが強みです。修行レベルからすると、「なんと姑息な!」といわれそうですが、医療用の認知行動療法としては、とても有用な手段になると期待しています。皆さんも、自分専用の“気づきのベル”を設定してみませんか。

 

*この記事と関連した、「気づきのベル、あれいいですね」- Yさんの場合 - という記事があります。