A子さんが今日(平成29年7月〇日)の最初の患者さんだった。初っ端に、こういう“お土産”を頂くと、その日一日の診察は快適です。「息子夫婦と孫がキャンプに行ったんです。孫が風邪をひていて、前だったら、行くのをやめさせようとしていたと思います。前日に電話をくれたけど、前だったら、そのことが気になってしょうがなかった。今回は放っておけた。向こうに着いたら電話してとも言わなかった。息子がキャンプから帰って電話をくれるまで、実際に心配していなかった」という“お土産”です。

 

A子さん(75歳)、初診:平成28年3月 診断名:不安神経症 うつ状態

 初診時、「もともとひどい心配性で、石橋を叩いて渡るという性格」「ここ一年くらい、気力がわかず何もしたくない。一人で住んでいるので、いろいろなこと心配して、それが普通じゃない」「血圧のことが1日中気になっていて、血圧がちょっとでも上がったり下がったりしたら、すぐに病院に行ったり、息子に電話する」「気分にむらがあり、物事を悪いほうばかり考えて後悔ばかりしている」「息子からは、思考力が低下している、同じことを何度も言うと言われる」という訴え。血圧が高く、内科からは血圧のくすりのほかに、ソラナックス(0.4)1錠を朝夕に処方されていた。何かあると一日何回でも息子に電話をかけるため、息子のほうが根を上げていた。内因性うつ病のようなエネルギーレベルの低下はなく、神経症性うつ病(不安抑うつ状態)と診断。

 ジェイゾロフト(25)1錠、夕食後 ソラナックス(0.4)1錠 不安時、の処方で、うつ状態は軽快。息子への頻回の電話はなくなり、一人でも電車で外出(一年以上電車にのれなかった)。庭仕事や散歩の習慣も復活した。しかし何かあると、持ち前の心配性と反芻思考が顔を出し、悩み苦しみは絶えることはなかった。

 平成28年11月より呼吸瞑想開始、平成29年4月からは手動瞑想に切り替えた。この8か月、朝晩15分間、欠かさずに瞑想を続けた。これまでにも「瞑想していない時でも、『しまった妄想だ』と気づける」「息子に何か言われても、腹が立ったり、イライラしたりしなくなったし、息子に来てほしいとは思わなくなった」「テレビを見ていても、いつも他のことを考えているのが分かった」といった、いくつかの気づきを語ってくれていたけれど、今日の気づきは、性格変化が起こったと言ってもいいくらいのものだった。ヴィパッサナー瞑想を始めてから、未だ8ヶ月足らずのことである。

 

 A子さんは、誠実で理解力があり、論理的な話し方をされる方です。それでもなお、「母さんの話には主語がない」と息子さんに責められていた。しかし私から見ると、A子さんの理解力と素直さが、手動瞑想(ヴィパッサナー瞑想)の趣旨を早々に理解し、習慣化できたことで、こんなに早く“氷解”(性格変化)が訪れたのだと思う。