M子さん 72歳 通院歴:11年 診断名:恐怖症性不安障害、身体表現性障害

 「27歳までは、友人同士で旅行もしたし、一人でどこにでも行けたのに、次男を出産した直後に、自転車で外出した時に、パニック発作をおこしてから、一人で外出もできず、電車にも乗れなくなってしまった」その後は、徒歩圏内の生活。子育てと庭木の手入れだけをやった、30年間だったという。

 平成17年12月風邪をこじらせたのを機に、耳鼻科、内科など、あちこちの病院を受診。特に異常ないと言われたが、「自分がおかしいのではないか」と、しだいに不安感が強くなり、以前から信頼していた漢方医に相談したところ、『新薬を飲むと気道が狭くなって、死ぬこともありますよ』と脅かされた。以来、不安、焦燥感、抑うつ気分がエスカレート、内科からデパスをもらったが、治まらず。近所の知人の紹介で、当クリニック初診。

 平成18年2月、初診時の主訴は、「胃に物が入ると、体のあっちこっちが痛む。のどに膜がはるような感じや、手、足、肩など、体のどこかが痛みだす。夕方、デパスが切れてくると、特に不安で、夫には携帯電話を持ってもらった。夫を早く解放してあげたい」と。 薬物療法は順調に進んだ。まずは、1日当たり、ドグマチール(50)2錠、メイラックス(1)1錠、ですんなり落ち着いた。平成19年2月からは、デプロメール(50)1錠、ドグマチール(50)1錠、平成21年7月からは、デプロメール(50)1錠のみの処方となっている。

 しかし、30年間一人で外出できなかったツケは大きかった。ソラナックス(0.4)1錠、屯用(外出1~2時間前に飲んでおく)を使っての、恐怖突入の日々が始まった。通院2年後には、近所には一人で外出。電車にもエレベーターにも乗れるようになった。陶芸教室にも通うようになった。その後の通院では、「30年前にここに来ていたら、人生変わったかもしれない」いうのが口癖となった。<30年前では、私はまだ医者になっていません>と二人で笑う。そして、平成25年1月、最後の砦が崩れた。「自転車に乗って外出できた。○○○駅がずっと遠かったのに、すごい近いので驚いた。20年前からずっとそう思ってた。今年はいろいろやってみようかな」と。その後、彼女の行動範囲はぐんぐん広がっていった。毎年6月、彼女から頂く超大粒のブルーベリーはとても美味しい。確か、来週に予約が入っているはず。