ヴィパッサナー瞑想を日々の診療に取り入れるようになって6か月がたちました。始めは 呼吸瞑想(本来の仏教瞑想法)、を使っていたのですが、患者さんがその技法を習得するのが難しく、3か月前からは、手動瞑想(タイで考案された仏教瞑想法)に切り替えています。こちらは、とても乗りが良く、瞑想を習慣化するのが容易なようです。何を隠そう、私自身もこちらを使って瞑想することが多くなってしまいました。

 さて、私の精神科診療歴は36年に及びますが、あっと驚かされたことが二度あります。  

一度は、SSRIという抗うつ剤が世に出たとき、そして、二度目がヴィパッサナー瞑想によって患者さんの症状が大きく変わる(内省力が向上する)のを目の当たりにした時でした。この成果を多くの人に伝えたい、精神科診療所でこの技法を導入するにあたって、どんな問題点があるのかを整理してゆきたい、と思って私はこのブログを書き始めることにしました。現在100名以上の患者さんに適用しています。その成果や問題点については、おいおい紹介していきます。

 

補足:

 伝統的瞑想法には、“サマタ瞑想”と“ヴィパッサナー瞑想”があります。手動瞑想は、“ヴィパッサナー瞑想”に属します(サマタ瞑想の要素も含まれる)。

 

 サマタ瞑想:

注意の集中高めることを目的とした瞑想法で、ヨガや座禅など、多くの人が瞑想という言葉を聞いて想像するものです。

 

 ヴィパッサナー瞑想:

「気づきの瞑想」や「洞察の瞑想」ともいわれ、今の自分に気づく。パーリ語でvi ヴィとは「ありのままに・明瞭に・客観的に」、passanâ パッサナーとは「観察する・観る・心の目で見る」という意味です。「今この瞬間の自分自身をよく観る」ということです。精神集中や精神修養、リラクゼーションなどを主たる目的とするものではありません。

 ヴィパッサナーは、一つの型にはまった瞑想法ではなく、特別な世界に到達したり、人と違う超越的な力を得るためのものでもありません。また、なにかを信ずるという宗教でもなく、イデオロギーや主義でもありません。あらゆるとらわれや執着から生まれる悩み苦しみを離れるための方法です。また、自分を客観的(分析的)に観ることで、内省力や問題解決能力を高めるためのトレーニングとも言えます。