O子さん、診断名:PTSD、神経症うつ病、強迫性障害

 かつては、様々な強迫症状に悩まされましたが、現在は、ほとんどの強迫症状が消退し、元気に就職活動をしています。先週の面接でのやりとりです。

 

「先生には、今日お伺いしたいことがありまして。ずいぶん前に頂いたラキソベロン液(緩下剤)を毎日飲んでいると、とても快適なので、今日、頂こうと思うんですが、いかがなものかと思いまして?」と、やや照れ臭そうに言う。

<ラキソベロン、何時から、どれくらいの量を使ってるの?>

「1週間前から、毎日30滴です」

<飲まないと、何日くらい出ないの?>

「飲まなくても、だいたい毎日出るんですが、出る量が少なくて、すっきりしないんです」

<オッと危ない!それは排便強迫という症状の入り口だよ。便の量は食べたものの種類によっても、その日の体調によっても違うし、便のボリュームや自分の感覚(残便感)で、便秘だと判断するのは間違いよ。下剤を使うのは、3日間つづけて排便がなかったら、と決めておかないと>

「やっぱりそうですか。お訊きしてよかったです。まずいのかなと思ったんです」と。

 

 便秘治療の専門家は、「便秘とは、3日以上の排便がない、排便が毎日あっても35グラム以下(ピンポン球1個程度)の状況のことをいう」と定義し、「腸の長さや、大腸での水分吸収には個人差があるため、毎日排便がある必要もないし、不調がないなら治療の必要はない」といいます。さらに、「『毎日排便がないとだめ』、『すっきりしないからだめ』との強迫観念から症状(便秘)を改善しにくくしてしまう。便の形などの先入観にとらわれ、治療効果に納得できない人もいる」ともいいます。

 

 精神科領域では、摂食障害、うつ状態、強迫性障害など患者さんに、この排便強迫が多々見られます。私のクリニックでも、毎日排便があるにもかかわらず、長年にわたって「毎日下剤と浣腸を併用しています」という患者さんがいました。排便強迫にハマってしまうと、下剤や浣腸の乱用を、わかっちゃいるけど止められず、さまざまな胃腸障害、便通異常、肛門疾患、電解質バランスの異常などの身体疾患を合併することになります。下剤を使う場合は、自分の感覚を信用しないで、「3日以上でなかったら使う」など、決めたルールを厳守する必要があります。ハマってしまってからでは遅すぎるんです。

 

 

補足:『毎日排便がないとダメ』、『すっきりしないからダメ』という強迫観念への対応策としては、『すっきりしないとダメ』という思考にいち早く気づくこと、「すっきりしないとダメ、と私は考えた」と何度でもラベリングすることが効果的です。これにいち早く気づいてもらうために、手動瞑想の習慣化をお勧めしています(手動瞑想をやってみようと思われる方へ(4)参照)。