令和6年2月8日からスタートした森秀太郎(ひでたろう)著「はり入門」実技セミナーだったのですが、私が胆石で手術入院ということで中断という事態になりました。しかしながら4月14日に軽快退院でき、5月8日現在は退院後3週間が過ぎて仕事もこれまでと同じようにできるようになったので、本セミナーも再開することにしました。延期したのは4月12日分と4月26日分ですが、これを7月12日と7月26日に振り替えました。




1.会場:東京都国立市中1丁目10-34「国立市中1丁目集会所」
  JR中央国立駅、南口下車 徒歩3分



2.開催時間 午後4時~6時30分頃  
3.定員:各回とも12名、 見学は2名以内。(定員になり次第〆切)
4.日程と予約状況

 

        以前の予約状況は破棄し、新たに募集しています。以前予約していた方々でも、

  改めて新規として予約をお願いします。

 ◎参加特典として初回参加時、「五十音順 経穴名の語源」PDF送付。
 ◎参加予定者には毎回、開催約1週間前にPDFを送付。

             

     残席数は令和8年7月25日現在の状況。

 第一回 2月8日(日曜)終了

 第二回 2月22日(日曜)終了

 第三回 3月8日(日曜)終了

    第四回 3月22日(日曜)終了
 第五回 7月12日(日曜) 終了

 第六回 7月26日(日曜) 終了

 

 

 

  実技では、似田のほか当会理事の<小野寺文人><岡本雅典 >

  指導にあたります。
 5.会費:一般8000円、学生7000円、見学4000円。当日払い。

        領収書発行します。
6.当日ご持参品 
 ①書籍、森秀太郎著「はり入門」医道の日本社刊(持参しなくても可)

          古書として2000円未満で購入できます。
 ②筆記用具
     各回オリジナルカラーテキスト配布。針灸実技の用具類支給。
7.懇親会
        講習会後、駅前の居酒屋にて懇親会実施します。 飲食費は3000~3500円程度

    (当日受付)
8.参加お申し込み方法
         参加御希望の方は、①参加希望会のテーマと参加予定日、②氏名、③住所、

  ④電話、⑤Eメールアドレスを明記の上、下記メールにご連絡ください。

  お問い合わせは、下記メールまたはお電話でお願いします。お申し込み〆切は各 

      回とも開催前日午後3時頃まで。参加者12名に達した場合、その時点で受付終

      了。各回ごとに見学者は2名以内。
    7月
         連絡先:あんご針灸院 似田 敦(にただあつし) 
        電話042(576)4418 

       メールアドレス nitadakai825@jcom.zaq.ne.jp

 1.坐骨神経痛における下肢の治療穴
 
     坐骨神経痛による下肢痛では、腰部の大腸兪や殿部の梨状筋部に圧痛点が出現することが多く、この圧痛点は鍼灸の治療点ともなる。加えて下肢症状部位の圧痛点にも施術するのが普通に行われている。
 坐骨神経痛の2大原因とは、①腰椎椎間板ヘルニアや変形性腰痛症による腰部神経根症と、②殿部梨状筋緊張による坐骨神経絞扼障害(=梨状筋症候群)である。
 ただ梨状筋が坐骨神経を絞扼したとしても下肢への痛みやシビレが症状が出てくるかは問題のあるところである。それは神経線維の知覚枝は上行性だからである。一方、神経線維の運動成分は下行性なので、臀部の梨状筋緊張により当然ながら下肢筋のコリや痛みが現れる。
 加茂淳医師(令和8年2月8日急逝!)は、殿部の坐骨神経ブロック点に刺針すると、下肢に電撃様針響が得られるのは、坐骨神経の知覚神経線維ではなく運動神経線維刺激による下肢筋の痙縮であると記している。これはMPS(筋膜症候群)の考え方になる。

 下肢への施術も同じことがいえる。下腿を走行する主要神経には脛骨神経、深腓骨神経、浅腓骨神経などがある。坐骨神経痛時の下肢症状は、これらの<神経痛>によるものではないので、脛骨神経痛、深腓骨神経痛、浅腓骨神経痛というような表現は適切とはいえず、これらの神経が支配する筋膜症とよぶのが正しいのである。そしてこれらの筋中にあるトリガーポイントに対する施術が治療になる。

2.下肢の主な神経の運動枝と知覚枝の症状
 脛骨神経、深腓骨神経、浅腓骨神経の運動枝症状と知覚枝症状を簡単にまとめた。赤字はとくに重要な症状であり、青字は重要な疾患名である。詳細すぎる一覧表は、学習する者にとって苦痛である。臨床針灸師は、細かな知識よりも、実用的な内容を把握しべきである。重要なポイントは、①下肢症状は筋の運動枝の興奮に原因があり、知覚枝は関係がない。②足関節以下の部位では神経が筋を運動支配していないので症状は知覚枝が症状をつくる、の2点である。

 ただし伏在神経の終枝である下腿内側皮枝は下腿内側皮膚を知覚支配する。この事実は、三陰交は針よりも皮内鍼や灸などの皮膚刺激が適することを示唆している。

 
  

 

1)運動神経症状
        従来から針灸臨床でよく行われているのが下肢症状を経絡走行別に分類することで

 ある。この方式は科学的とはいえないが、下肢を走行する神経の知覚枝よりも運動

 枝に注目しており、筋コリ反応を治療点としていて実用的な方法といえる。

    A.深腓骨神経の運動枝症状(前脛骨筋や長趾伸筋の緊張)
     下腿前面症状、胃経ルート

    B.浅腓骨神経の運動枝症状(長・短腓骨筋緊張)
     下腿外側症状、胆経ルート

    C.脛骨神経の運動枝症状(腓腹筋、ヒラメ筋緊張など多数)
     下腿後側~下腿内側症状(同上の筋)、膀胱経・脾経ルート


2)知覚神経症状
        では知覚枝症状とは何だろうか。これは日常臨床的には、とりあえずは次の内容が      重要である。知覚神経症状部位は、下腿部ではなく、足関節よりも遠位になるよう

    だ。皮神経の興奮なので撮痛反応が出てくる。
    A.深腓骨神経の知覚神経症状:前足根管症候群(太衝の知覚異常)
    B.浅腓骨神経の知覚神経症状:外側腓腹皮神経(下腿外側~足背)知覚異常
    C.脛骨神経の知覚神経症状:①腓腹神経(下腿後側覚異常)
                 ②足底痛(足根管症候群、踵脂肪褥炎、足底筋膜炎)

3.坐骨神経痛に対する筆者の常用刺針技法
1)深腓骨神経への刺針
    ①足三里 
        代田文誌は、足三里に刺針して下方に響かない時には効果はないと書いている。           仰臥位で膝伸展位。脛骨粗面の外方5分からの深刺。前脛骨筋トリガーを刺激す            ることで下腿前下方へ響かせる。




    ②中封
  足関節前面、前脛骨筋腱の下を刺入点として、長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱の裏を

     くぐるよう刺入する。途中で深腓骨神経を刺激する。これは前足根管症候群で使

        用する。本疾患は、中封で深腓骨神経が絞扼した結果、太衝部に知覚鈍麻や疼痛

       が出現するものである。前足根管による深腓骨神経絞扼により、太衝あたりに知覚

   鈍麻や痛みが出現する。
              



 

 

2)浅腓骨神経への刺針
     ①陽陵泉
  学校協会教科書では腓骨頭の前下方を取穴するが、この位置からでは下方へ響き

  を与えにくいので、筆者は足三里と教科書陽陵泉の位置の中点から床面に対して

  直刺している。長母趾伸筋刺激になる。(「足三里」図参照)

 


   
    ②懸鐘
        足の外果尖の上3寸。私は長腓骨筋腱の前縁で短腓骨筋中に懸鐘を定めて

       いる。この筋腱の下を下腿筋膜に覆われて腓骨神経が通過している。薄い

        筋層なので針も斜刺~横刺するのがよい。







3)脛骨神経運動枝への刺針
    ①地機
        仰臥位で股関節外転、治療側の膝を屈して足底を健側の膝内側に付着させる。

        の体位では腓腹筋がゆるみ、ヒラメ筋が緊張しているので、ヒラメ筋の緊張が触

        知しやすくなる。下腿内側を4等分し、陰陵泉から下1/4の処で、ヒラメ筋起始部

    になる。コリに対して直刺し、下腿内側下方に響かせる。







   ②照海
       足裏に行く脛骨神経は、足内果の下を通って、足裏から足指に向かう。足内果と 踵

      骨野間には屈筋支帯があり、この下の間隙(足根管)を後脛骨神経が縦走してい

      る。この部は圧迫されやすく、圧迫により症状が出てきたものを足根管症候群と

  よぶ。      




 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 手掌、第3第4中手骨間基部で、道具を握る際、中指頭が手掌にぶつかるところに心包経の労宮穴をとる。労宮の<宮>とは広い屋敷のことで、ここでは手掌のこと。手掌部にあって、手指を使いすぎると疲れが出るところである。

1.手指にある3関節 

 手指には、DIP関節とPIP関節(ただし母指はIP関節のみ)、MP関節という3種の関節がある。DIP屈曲は深指屈筋、PIP屈曲は浅指屈筋の収縮による。DIPとPIP伸展状態ではMP関節の屈曲は虫様筋屈曲による。

 三つの関節の屈曲具合は、大脳で自動的に制御されていて、本人的には意識されることはない。しかしばね指の際ではDIP関節とPIP関節の主動作筋を伸張させる治療が効果的になる。これに関しては過去ブログの<ばね指の針灸治療>参照のこと。

 

 

2.虫様筋と労宮
 
    虫様筋の<虫>とはラテン語でミミズの意味だという。全体的に細長い楕円形で両端は鋭がった形である。筋は骨と骨を結ぶのが普通だが、虫様筋は腱と腱を結んでいる。この構造がMP屈曲+IP伸展の同時実現を可能にする。
 MP関節屈曲が重要になる生活動作とは、ピンセットをもつ、ドライバーをもつ、筆をもつなどで精密な指先の動きを必要とするケースである。トランプカードを広げて持つ指の形も虫様筋が収縮している。
 




※労宮を第2第3中手骨間にとるとする文献もある。

     虫様筋は手掌に4本あり、示指側から順に第1~第4虫様筋と名前がついている。発達してるのは第4虫様筋と第5虫様筋である。

 なぜ第4虫様筋と第5虫様筋が発達しているのだろうか。球状の物をしっかりと握るには、母指対立機能と同時に第4第5指の屈曲が重要になるということだろう。剣道で相手に打ち込む時には全指で柄(つか)に力を入れるのは当然だが、その瞬間以外では環指と小指に力を入れて握るという。
 手掌の大部分は滑液鞘で覆われているが、第2、第3、第4中手骨あたりの腱は露出していている。これは動きの激しい手指部において比較的摩耗されにく処なの で、滑液鞘で保護する必要はないとした進化の結果なのだろう。

 

3.骨間筋と虫様筋

 第3虫様筋部には労宮(心包)があり第4虫様筋には少府(心)がある。
 一方、手背側の第4・第5中手骨間にも中渚(三焦)・液門(三焦)という正穴はあるが、これらへの刺針は虫様筋ではなく骨間筋を狙うのに適している。背側骨間筋は指の外転(じゃんけんのパーの形)、掌側骨筋は指の内転(指を揃えて伸ばす形に作用する。



4. 中渚・液門・腰腿点


 液門穴は手背側の指間基部にとる。手掌は発汗しやすく、それは液門あたりまでは発汗する部位だというのが語源になる。中渚についてだが、渚とはビーチの波打ち際のこと。海岸の波は押したり引いたりを繰り返している。すなわち水のある時とない時があるという意味で、液門よりは乾いているという部位になる。

 第4第5中手骨基部には新穴の腰大腿点(=腰痛点)が広く知られている。第2第3中手骨基部にも腰腿点がある。いずれも急性腰痛に効くとされる。どういったタイプの腰痛に効果あるのかはよく分かっていない。
 

 












   
    




















 

 令和8年7月12日と26日、数ヶ月ぶりで奮起の会(針灸実技講習会)を再開することにしたが、開催まで約1ヶ月に迫った現在でも、参加希望者があまり増えていない。このままでは奮起の会が存続できなくなる恐れもあることから、奮起の会で指導する予定の内容を少しづつ紹介し、挽回に努めることにしました。

 

三陰交は足内果上3寸、脛骨後縁にある脾経上のツボである。三陰交刺激には主に3つの狙いがあると思われるが、目的によって針の刺針方向が違っていたり、針よりも灸刺激が適していたりする。治療意図に合致した施術方法を行うべきである。

1.施灸や円皮針による皮膚刺激
  
古くから、子宮平滑筋とくに子宮頸部平滑筋を緩めて血行を良くする効能がある とされてる。ゆえに月経が始まって間もない若い女性では子宮頸部がきついこことがあり、月経血が子宮頸部を無理やり通り抜けようとする際に痛むことになる。
三陰交の治効根拠として、三陰交はS2デルマトーム上にあることが関係していることがあり、三陰交刺激は、次髎刺激と類似の作用をもたらすとする考えがある。
三陰交の末梢神経皮膚知覚支配は、伏在神経の分枝の内側下腿皮枝であり、伏在神経は腰神経叢の分枝であることから、腎兪などの腰部治療と関係するという考えもある。
デルマトーム・皮神経どちらも皮膚の反応なので、針よりも灸や皮内針などの皮膚
刺激が適するといえる。 

 

 

 
2.後脛骨筋刺針





1)後内側型シンスプリントに対する後脛骨筋刺激
ランニングやジャンプ時に足関節を強く底屈する際、三陰交あたりの長趾指屈筋腱と後脛骨筋間の滑走障害による筋膜痛を起こすことがある。これが後内側肩シンスプリントである。針灸治療は、三陰交から脛骨後縁に向けて刺入し、足関節底背屈の運動針を行う。



2)鈎足に対する後脛骨筋刺激
後脛骨筋は、脛骨後裏にあり、足関節底屈機能がある。後脛骨筋の運動麻痺では、
足関節が底屈して鈎足になる。(腓骨神経麻痺による下垂足や脳卒中後遺症による尖足は多いものの、鈎足はまれな症状)


3.脳血管障害後遺症による尖足に対する脛骨神経刺激
    

脳血管障害発症後数日が経過すると、四肢は弛緩性麻痺から痙性麻痺へと移行する。手指は屈筋優位の強く握った状態になり、足は伸筋優位の尖足になる。この尖足症状に対して、三陰交から8番針でアキレス腱方向に45度の斜刺すると脛骨神経を刺激でき、数時間は尖足が軽減する。これにより歩行困難だった患者が歩行可能になることもある。三陰交から脛骨神経を刺激する方法は、中国の石学敏が開発した脳血管障害の針灸治療法である醒脳開竅法の一つである。なお醒脳開竅法の基本3穴は、
人中(三叉神経刺激して脳の覚醒)・内関(正中神経して上肢痙性緩和)・三陰交になる。

 

 

4.三陰交と同じことが合谷にも当てはまる


三陰交と同じことが合谷にもいえる。合谷の皮膚刺激は、眼瞼・鼻・口・咽などの三叉神経支配領域に効果あることから、「面口合谷」と四総穴でもいわれている。

母趾第一基骨骨内側深部の母指内転筋に対する運動針は、母指内転筋症に効果があり、合谷から第6中手骨方向への水平刺は、脳血管後遺症後の手指の痙性(指を広げられない)に効果がある。

この3種の刺針方法と適応症については、当ブログですでに説明している。

四総穴、面疔、母指内転筋症、醒脳開竅法などのキーワード検索で各自確認してほしい。

 令和8年3月~7月の針灸奮起の会では、森秀太郎著<はり入門>を、現代針灸の立場から検討した実技講習会を開催しました。その際に使用したテキストが完成したのを機会に、旧来のCDテキスト<秘法一本針伝書>と合本し、CDテキスト第二弾として販売することに致しました。

☆CDテキスト第二弾 新発売   8,000円
 

 

<内容>
1.現代針灸からの解説<はり入門(森秀太郎著)> 本文103ページ

 

 

2.現代針灸からみた <秘法一本針伝書(柳谷素霊著)>  本文63ページ

 


3.同梱:五十音順経穴名の語源 本文18ページ

     


  ☆CDテキスト第一弾  11,000円  
十数年前から現代針灸臨床論ⅠおよびⅡのPDFテキストをCD版を販売中です。昨年からは「五十音順経穴名の語源」ファイルを追加しました。CDの内容は何回か改訂しています。ただしこの数年は前記CDテキスト第二弾の作業に重点をおいたので改訂できていません。
 

 

 


    <内容>  
①現代針灸臨床論Ⅰ、現代針灸臨床論Ⅱ
②医語呂1100
③経穴経絡学(旧版)
④中医学テキスト
⑤五十音順経穴名の語源

        
☆ご購入手続き

6月下旬から7月9日にかけてロバイターの事故合により当院へのメールが使えない状況でしたが、7月9日夕刻からメールが復旧しました。この間、岡本雅典先生にメールで中継をお願いしていましたが、不要となりました。

当院へ以下の項目を明記した上、メールでご連絡ください。

nitadakai825@jcom.zaq.ne.jpです。
a. ①御購入希望のCD、②お名前、③住所、④電話、⑤Eメールアドレスを明記し、メールでお知らせください。

b.ご購入リクエストを受領した旨のメールを差し上げますので、所定の代金を以下   までお振込み下さい。

お振り込みした後、その旨メールでご連絡下さると処理がスピードアップします。
    三井住友銀行 国立(クニタチ)支店 普通預金口座 口座番号5389422
     名義人:似田敦(ニタダ アツシ)
c.お振込み確認後、商品を郵送します。その際、領収書も添付します。
d. 銀行振込み手数料は、ご負担ください。CD郵送料は当方で負担します。
e.テキスト購入に関するお問い合わせは、以下まで御願いします。
  電話042(576)4418   
  Eメールnitadakai825@jcom.zaq.ne.jp
    住所 〒186-0004 東京都国立市中1-11-26 あんご針灸院
  氏名 似田 敦 (にただ あつし)

.現代の歯周病の診療

1)歯周炎の原因
   
①老化:30才を過ぎれば、誰でも多少は歯周炎は生じている。歯周炎の最大要因は老化。他に、強く咬む習慣など。

②糖尿病:糖尿病では口内の血流も悪くなるので唾液の分泌も減り、歯垢がつきやすくなるで、細菌易感染から歯周病を悪化させやすい。歯周病になると歯周ポケット内の歯垢部細菌を白血球が退治しようと集合する。集まってくるが、この時、白血球が歯周病菌の出す毒素に触れることでTNF―αと呼ばれる物質を放出する。TNF―αには血液中のインスリンの働きを妨げてしまう作用がある。歯周病の治療をすると血糖値も少し改善する。


2)歯周炎の症状

歯肉のむずがゆさ、歯肉縁の発赤と出血、唾液粘稠性の変化、口臭といった症状を生ずる。   
※歯垢(=プラーク)が歯の表面ではなく歯周ポケットにできると細菌にとって格好の住み家となる。
歯槽膿漏の治療として歯石除去は基本である。歯石とは歯垢が石灰化して固くなったもの。

3)歯科での歯周病の治療と予防
  
①歯磨きブラッシングにより歯肉マッサージをすること。歯ブラシすると血が出るところ、押圧して痛みがあるところを重点的にラッシングする。毎日行うことで、歯茎を引き締め、歯磨き時に出血しにくくなる。歯磨きは、歯周病の原因菌数を減らすことが目的であって、原因菌を完全に消し去ることできず、再発を繰り返しやすい。効果不十分であれば外科処置となる。
  
②歯石を取り除く。歯垢(プラーク)は放置しておくと次第に硬くなり硬い歯石になる。歯を取り除くには、デンタルブラシやデンタルフロス(フロスとは細い糸の集合体)を使い、歯磨きブラシだけではとれない歯間の歯苔を除去する。
  
③糖尿病があれば、血糖コントロールが歯周炎の治療にもなる。


2.歯周病に対する鍼灸治療

 

1)江戸時代以前の歯科治療方針

 

①耐え難い歯痛では抜歯
 当時は麻酔などなかったから、冷やしたり痛み止めの漢方薬を虫歯に塗布したりして何とか我慢した。どうしても我慢できないほどの痛みは抜歯する他なかった(無麻酔で)。ただし徹底的に我慢すると歯や神経が崩壊して痛みはなくなる。

 

 江戸時代には「歯抜き師」という職業があった。市中で希望者を椅子に座らせ、口上を述べながらヤットコのような道具を使って一気に抜いた。怖いものみたさの民衆が取り囲み、一種の見世物だった。料金は現代の価値では数千円相当だったという。一気に抜いた方が痛みが少ないということで、居合抜きを修練した者の余技ともなった。
 


②歯茎の腫れや出血では歯肉を切って血や膿を出した  
江戸時代の歯槽膿漏の治療法は、腫れた歯肉に鍼を刺し、膿を出す孔を開けることで鎮痛させたという記録がある。孔から膿を逃がすことが治療の一つとして選択された。江戸時代以前、「おでき」は熱毒が体内にとどまり、外に逃がせない状態と考えられた。外に出すには皮膚に鍼で孔を開けたり打膿灸で膿ませて膿を出すことだった。桜井戸の灸(面疔に合谷の多壮灸)というのは、顔面にできたオデキの毒を合谷から排膿させるという治療原理である。これは桜井戸の灸に限らず、打膿灸の治効原理になる。


③虫歯地蔵への参拝

江戸時代以前には、虫歯の痛みをなくしてもらおうと、虫歯地蔵も各地に建てられた。煎った大豆を供えて平癒を祈ったという。煎ると殻が割れるが、その割れ目から歯中に入った虫を外に外に逃がそうとする願いがあったと思われた。

私は令和3年の5月初旬に、奥多摩にハイキングに出かけたが、旧五日市街道沿いに虫歯地蔵尊を発見して少々驚いた。質素な石仏だった。

 

 

針灸に関係するものとしては、歯痛を止めるには、モグサの煙を鼻から吸い込み、口から出すという方法もあったという。
 

3.現代の歯科の鍼灸治療

 

1)歯肉に対する直接刺針

周炎に対する現代歯科での治療は、歯石の除去と自宅での歯ブラシでの入念な歯肉マッサージと歯間ブラシの使用であって、現代に至っても特効的な治療方法があるわけでない。歯肉に物理的刺激を与えるという意味で歯肉に対する鍼灸局所治療は、次のように行う。

①どこが腫れているのかを患者に聴取、その圧痛部を患者自身の指頭で指示してもらう。
②術者はその圧痛を確認後、1番針を使って圧痛点から数本直刺し、顔面皮下組織→口腔前庭→歯肉→歯槽骨と入る。

 しっかりと押手を強くして刺入していくと、簡単に歯肉部に響かせることができる。
③歯肉の血行促進を目的に単刺するか、雀啄により患部に軽く響かせた後、置針するなどの施術を行うのが普通

※圧痛点は口裂の上下一横指の頬部や下顎部に出現する。
下図は、木下晴都「最新鍼灸治療学」からの転用だが、上歯の反応点は外鼻孔の高さであり。下歯の反応点はもっと顎に近い部位になるだろう。私が考えた施術点の図を後に加えてみた。

 

 

2)歯周炎に対する女膝の灸

①女膝の位置と灸治法

 歯周病に対する特効穴としては、女膝(じょしつ)が知られている。歯茎との関係は不明だが、形が似ているものは何かしらの関係性があるとする東洋的整体観から思いついたのかと思われた。

 

 踵骨を後からみると、歯と似た形をしている。歯は上半分が歯肉から出て、下半分は歯肉に埋まっている。その境界の歯茎から血や膿がでるのが歯槽膿漏ならば、その境界部分こそ患部であり、位置関係を踵骨に当てはめれば、女膝に相当することになるのではないだろうか。
 

②「名家灸選」から
 
 江戸後期の浅井惟亨著『名家灸選』の中に女膝の記載がみられる。現代文に訳すと次の通り。

 骨槽風(=歯槽膿漏)を治する法:足の後かかとの赤白肉の際で、女膝とよばれているところ。左右に各50壮灸すると、一ヵ月にして効き目がある。かって歯茎に孔があき、膿血がだらだらとたれていた者を救った経験がある。
 

③山本俊男「鍼灸特効穴一発療法」源草社 1999.5)から

 
 女膝施灸時の体位は、患者を伏臥位にさせ、足関節を最大限に底屈、踵後方にできる皺あたりを指で探ると、踵骨の上際中央付近に小さな凹みがあって、症状を持った患者であれば、顕著な圧痛があるので、ここが灸点になる。毎日10壮ずつ施灸すると炎症が治まってくる。

 
この文章から女膝の位置を推定したのが下図である。伏臥位で足関節を底屈すると、踵骨後部にる凸部やアキレス腱停止部である踵骨隆起が触知しやすくなる。


④女膝の語源

 女膝とは正座の別称で、男膝とは胡坐(あぐら)のこと。男性より女性の方が日常的に正座する機会が多かったのだろう。正座すると踵骨上方に皺ができる。踵骨を後方からみると歯のような形をしていて、踵骨のアキレス腱付着部より上が歯茎のようであった。歯茎と歯の境界部分が女膝の位置になった。
 

⑤女膝が水毒を治す

女膝は水毒を治すとされる。歯茎が腫れている状態を浮腫と捉えると、女膝の適応症と考えることもできる。
肩が凝ると歯が浮く感じがする者がいるが、頸肩のコリの治療が歯肉に対する治療に関係する場合がある。この場合は肩井や天柱などに対して鍼灸を行う。しかし頭蓋骨後面と踵骨後面を相似形と考え、天柱の代わりとして崑崙に施術するという考え方もある。崑崙と女膝は非常に近い部位にある。

 

3)女膝への透熱灸の効果(細江久美子氏)

女膝への灸が効果あるとすれば、それはどのような感じなのだろうか。疑問に感じていた時、代田文彦監修、日産玉川病院生情報会著「針灸臨床生情報②」の中に、「女膝の施灸で歯肉が引き締まる例(45才、女性)の症例報告を発見した。かいつまんで紹介する。

数年間から歯槽膿漏で歯のグラツキ、歯肉がブヨブヨする感じがあった。症状は右側に強い。歯科治療は受けているが歯槽膿漏に対しては効果は乏しい。胃腸機能を高める全身的治療に加え、最後に女膝へ透熱灸を行った。左7壮、右13壮で透熱。次回来院時、歯槽膿漏の具合を聴取すると、「歯肉がギュッと締まって、歯肉が少しピンク色になった。リンゴもかじることができた」とのこと。今回も女膝に透熱灸を実施。この治療直後も歯肉はピシッと引き締まった。ただしその効果の持続性は長くない。毎日施灸を続ければ効果が長くなるかもしれない。

 

4)膀胱炎に対する女膝の灸
 

 松本丈明著「膀胱炎の針灸治療-女膝について-」日鍼灸誌、23巻3号(昭和49.7.15)には、膀胱炎に対して女膝の灸が効果あった旨が記載されている。一般的治療としては寸6#3針で曲骨(実際には曲骨と中極の間)を刺針点とし、恥骨下をくぐらすように2~3cm斜刺し、針響が尿道に感ずる程度に刺入する。これと併用して、排尿痛に対して女膝の灸(米粒大7~15壮)をする。女膝の取穴は、踵部中央で足甲部と足底部の境界線(赤白内線)の上にとる。女膝の灸は、腹臥位でつま先を立てた状態で行うという。
女膝の灸単独治療が奏功した例として、自分の親戚の女性が、血尿と排尿痛で苦しんでいた際、女膝に米粒大15壮を実施すると、ほとんど即効した例を経験したこと。また急性膀胱炎による排尿時痛、残尿感に対し、女膝9壮を行い、1回治療で排尿痛軽減した例を紹介した。


これまで、私は女膝=歯槽膿漏と記憶していたが、膀胱炎にも効果あることを知った。また女膝の取穴は、足関節を底屈するのではなく、背屈しているという違いもある。両者の共通項は、粘膜充血の改善といえるだろう。

 

<コメント>桂蓮アップルバウム(2020.11.11)初めてコメントします。

アメリカ住まいのケイレン・アップルバウムと申します。女膝について初めて知りました。それに歯茎との関連性も初めて知って,そう言えば、歯茎に炎症が会った時、足のアキレス腱辺りが冷たくなり、いくら温めても冷気がしたことがありました。それで、足の裏のマッサージをしたら気がつかないうちに口内炎も起こらなくなりました。私はその関連性については全く分からずにすぎてしまいましたが、今この記事を読んで納得しました。記事を全部読むことを目指して今日から頑張ります。


 

和8年7月12日と7月26日、針灸実技講習会<針灸奮起の会>において森秀太郎著「はり入門」の上肢と下肢の針灸実技指導をします。只今、参加者募集中。詳細は以下をご覧ください。

 

 

 

1.外反母趾の定義

足母趾の中足指節関節(MP関節)の外反(小指側に傾く)状態。中足基節関節角が「15度以上」を外反母指とする。外反母趾の高度なものは、第2趾と重なる。男女比は、1:10 と圧倒的に女性に多い。     



2.外反母趾の進行 
距骨下関節の過回内→浮き趾指→母趾の外反・内旋の強制→外反拇趾の完成

1)距骨下関節の回内過多       

歩行時の接地は、踵後方→足底外側→母趾側へと体重移動する。この時、距骨下関節(距骨と踵骨の間にある関節)は回内運動が起こる。なお足関節回内とは、足関節の外転+外がえしの複合動作のこと。
回内運動自体は誰でも生理的に起こるが、回内過多では重心が土踏まず方向に片寄って、足の横アーチが崩壊して開張足になる。 
さらに地面を蹴るのは拇趾腹ではなく、第2趾MP関節底部に代償される。第2趾MP関節底部はウオノメやタコができやすくなる。  



2)浮き趾       

靴を履いた日常生活では、母趾で地面を蹴って前に進む力が低下しがちである。拇趾で地面を蹴る力は長・短母趾屈によるもので、この二筋が筋力低下すると母趾が床から浮いて歩行するように歩行スタイルが変化して、接地は踵→足底外側→第2趾MP関節底になる。これを「浮き趾」とよぶ。 

普段から鼻緒のあるサンダルを履くようにアドバイスするのもよい。




3.治療院の外反母趾の保存療法
 
距骨下関節の過回内に対しては治療方法がないので、治療目標は浮き趾の改善になる。このためには短母趾屈筋力と長母趾屈筋筋力を復活させることにおかれる。活動休止状態にあるこれら2筋の筋収縮力を目覚めさせるという意味でストレッチをする。筋長を伸ばすのが目的ではない。

1)短母趾屈筋の押圧運動
 



短母趾屈筋は足母趾底屈作用がある。足裏の第一第二中足骨間で裏太衝穴に相当する部を押圧または刺針しつつ、母趾の底背屈運動する。なお刺針は太衝穴側から行った方がよいだろう。刺痛が少なくなるので。

2)長母趾屈筋に対する腱ストレッチおよび筋腹への治療    

①下腿の筋の構成と役割分担
下腿の筋は、足関節を動かす筋と足趾を動かす筋に大別できる。下腿後側では、浅層筋が足関節底屈筋であるのに対し、深層筋は足母趾底屈筋・足趾底屈筋・後脛骨筋(足裏横アーチを形成)の3種で、そのどれもが足趾に停止をもっている。


  
②長拇趾屈筋への運動針

長母趾屈筋は外来筋(下腿に筋が存在する筋)で、起始は腓骨後面の下方2/3・下腿骨間膜の下部、停止は母趾の末節骨底である。長母趾屈筋は母趾を屈曲する作用があるが、本筋は下腿後内側ではなく、意外なことに下腿後外側にある。したがって長母趾屈筋に刺入するには、飛陽あたりになる。外承山から長母趾屈筋へ刺入し、母趾の屈伸を行う。

 

 


 

③長母趾屈筋腱ストレッチによる治療



上図は「「かわせカイロプラクティック」HPから引用した。患者の母趾を屈曲するよう指示し、術者はこれに抵抗を加える。これはPNFストレッチの技法の一つである。

④タオルギャザー筋力訓練

足底筋の筋力強化にはタオルギャザー訓練(長・短母趾屈筋の訓練) が行われる。これは座位で床にタオルを敷き、その端を足指でつかみ、前にたぐり寄せる動作をさせる。



⑤踏み台に踵を載せ、膝を屈曲させつつ屈伸運動



本法は、GIZMODEブログに載っていたもの。足関節運動と足趾関節運動を同時に行う。原理的にはタオルギャザーの強化版になる。外反拇趾のほか、後内側型シムスプリント(後脛骨筋と長趾屈筋間の筋膜癒着による)の運動療法にも適用がある。
 踏み台の上に立たせる。その際、踵を踏み台に置き、足の前半分は踏み板の外に置いた姿勢にする。膝を伸ばした状態で、足関節の底屈・背屈運動を大きな動きで30秒間にできるだけ速い動作で行わせる。
30秒間休んだ後、両膝45度屈曲位で上記同様30秒間実施。この組合わせを1セットとして3セット実施する。セット間の休みは1~2分間とする。
 この運動は、素早く足関節底屈運動を繰り返すことで、筋膜癒着を開放するねらいがある。膝関節を屈曲すると腓腹筋よりもヒラメ筋に負荷が加わる。

4.母趾の外反・内旋の強制のキネシオテープによる矯正  

テーピングによる外反拇趾矯正は、数時間は対症療法として矯正効果はあるが、外反拇趾そのものが治るわけではない。テーピングを行うことは接着剤が皮膚の角質層を剥がすので、連続使用にも向かない。

要するに応急処置としての用途であって、外反拇趾は本来慢性症なので普段はサポーターを使うということになるだろう。外反拇趾のテーピングはいろいろ考案されているが、最も簡単なのは下記の方法だろう。これは普段の筆者のやり方でもある。






  









 

 以前から私は、柳谷素霊の「秘法一本針伝書」の、それぞれの刺針技法を自分なりに分析しているのだが、最後まで残ったが<上実下虚の針としての崑崙>だった。上実下虚は、東洋医学ではよく使われる所見の一つだが、針灸でその治療は可能か否かは別問題だ。素霊はどのような所見をもって上実下虚と判断したのだろうか。
ヒトは足が温かく頭が涼しい状態だと快適である。これが上虚下実で、類義語に頭寒足熱がある。これとは逆に頭がのぼせ、足冷のある状態を上実下虚とよぶ。
上実下虚をわかりやすく例えるなら、ヤカンの空焚き状態である。正常であれば丹田の熱で腎水が熱せられ、体温をつくり体幹内臓が正常に機能する条件をつくっている。しかし腎水が無くなれば、乾いた熱(火)が舞い上がり、赤目、赤ら顔、めまい、のぼせなどを生ずる。このような状況の治療には、対症治療としては頭を冷やすことだろうが、本治法としては腎水を注入(=脱水時の補液)が必要となるだろう。
 

1.「一本針伝書」崑崙の刺針法

一本針伝書の崑崙の取穴と刺針:
①<立位で全身に力を入れつつ崑崙あたりでアキレス腱の前縁に張ったスジ様のものを爪先で前後に探れば、ビンビンとする細い索状のものが触れる。このものの前際が崑崙である。穴位より内方に向けて、索状の際を、針尖を通過させるようにし、足踵中に入れるように刺入する。>
→→「ピンピンとする細き索状のものの前際」 とは長拇趾屈筋腱の前縁.。「足跟中に入らせるように」  で、跟腱とはアキレス腱のことで、アキレス腱方向に刺入する。ここでは踵骨部の長拇趾屈筋腱の傍を通過させ、踵骨に命中するようにする。「立位にて両手や腹に力を入れて」とは筋緊張により促通しやすい条件にせしめ、長拇趾屈筋腱を刺激することでⅠb抑制を誘発させる。脛骨神経に当てるのであれば、膀胱経ではなく腎経側から刺入した方がよく、太谿あたりを刺入点とすべきだろう。

 

②<立位にて両手や腹に力を入れて....>
→筋緊張により促通条件を増し、崑崙あたりに刺針して、長拇趾屈筋腱を刺激することでⅠb抑制を発動させ、同筋緊張を緩める。なお長拇趾屈筋は、下 腿後側深部筋で、腓腹筋やヒラメ筋の深層にある。フクラハギがつる原因筋の一つ。

③<一退三進、四方をせん別するように針灸。なお響きあれば弾振する。響きが上に応じて頭に至れば大いに効果あり。また弾振連続すれば、次第に上部の鬱滞する気血下降し、頭が冷えるように感ずるようになれば、効のある証拠である。術者は患者の顔や脈に十分注意し、患者の顔が蒼白となったり、脈が細沈(≒触れにくくなる)ならば直ちに針を抜去して患者を正座または仰臥せしむる。
→「せん(金+賛)」とは突き通すこと。針を乱針術のように刺入し、響きを得るようにするというが、頭にまで響きを得ることは実際は困難である。素霊の文章表現でも<頭が冷えるように感ずるようになれば、効のある証拠である>としていて、頭が冷えるように手技針せよとは書いていない。めったに起こらない現象だからに違いない。その一方で、立位で崑崙に強刺激の針をする際、顔面蒼白とが脈が弱くなるなどへの避ける対処法を記している。これは迷走神経反射である。すなわち脳貧血を起こす一歩手前まで誘導すると考えるに至った。すなわち結構リスクのある治療法といえるのではないだろうか。この脳貧血は明らかに頭に至る響きとは異なる現象だろう。
 

 

 

2014年1月5日の以下のブログで、柳谷素霊は、梁丘刺針で下腹に響かせる方法を説明している。崑崙刺針で上方に響かせるテクニックと似た点がある。結局、響かせる部分の筋を精一杯伸長する肢位をさせておくのが秘訣らしい。

 

 

 

 

2.森秀太郎著「はり入門」の崑崙刺針

 

 腹臥位、足関節背屈、足母趾背屈肢位でアキレス腱を強く伸張させ、アキレス腱と外果のつくる陥凹から長母趾屈筋腱腱への直刺10mmとしている。この針響は踵~足先という一般的な記載だが、適応症は頭痛・項コリと記し、この点は柳谷素霊と似ている。足先に力を入れるとよく効くとも書いている。


 

 

 

2.岡部素道の見解

 

 岡部素道は少年期に肺結核となり、医師からも見放された状態にあったが、柳谷素霊の治療を受けて肺結核が軽快した後、柳谷素霊に感化され針灸学校教員(意外なことに解剖を教えた)を勤めることになった。岡部素道は、良い意味で隙だらけの人で、議論に負けてもアハハハと笑い飛ばしたという。誰からも好かれた。人をまとめるのが上手なので、針灸業界内では

<人事の岡部>ともいわれた。

 昭和20年代の経絡論争の際、岡部は次のような意見を述べた。

施針により、神経に沿って響きを伝えるのは当然だが、神経走行以外にも針の響きを伝導することがある。とたえば崑崙(膀)に施針して腰部・肩背部・後頸部・前額部に響きが伝導することがあると記した。しかし刺針技術については語っていない。

 この意見は引き続き、下肢胆経への施術で側胸部。腋下・側頭部に響き、三陰交で下腹部に、梁丘に胃部に、太衝で眼窩に、合谷では歯根の浮いたりする感じなどと続くのだが、これらの針響は私(似田)の臨床経験とは非常に違っている。私の40年間の臨床では、部分的に神経走行で説明できる針響は無数にあったが、足に刺針して頭にまで響くことは1度も経験しないことだったからである。

「崑崙刺針が上実下虚に効く」との理解は、刺針技術の問題ではなく、めったにいない経絡人間のような針響過敏者にのみ当てはまるといえるのではないか?

 

 

追伸

令和6年11月16日、針灸学校教員メンバーを中心としてベテラン勢4名で国立市「しんさく」で飲み会を実施しました。お題は「一本針伝書」の上実下虚の針についてでした。
写真左から順に、寺師健、似田敦、岡本雅典、筒井宏史(敬称略)。

 

鍼灸師の間では、麦粒腫に対して患側(健側でもよい)の二間穴に灸をすると、腫脹吸収あるいは排膿促進につながるというのが常識である。しかしながら患者も鍼灸治療で麦粒腫を治す目的は来院せず、麦粒腫瘍そのものも自然治癒しやすいので、鍼灸院でも患者に治療する機会は多くない。自分自身や自分の身内に試みるくらいなので、症例集積まで至らないのである。わかっていることは以下のごとくであろう。

①麦粒腫というのは、おそらく外麦粒腫のことである。
②二間穴は学校協会教科書の二間(「十四経発揮」の二間)と澤田流二間があるが、ともに同程度の効果がある。麦粒腫の治効として有名なのは澤田流二間の方である。学校協会の二間は、
第2中手指節関節の下、橈側陥凹部になるのに対し、澤田流二間は示指PIP関節裂隙の橈側に取穴する。

 

 

③二間は、健側治療、患側治療とも同程度の効果がある。
④二間の針は、効果が乏しい。
⑤せんねん灸でも、有痕灸でも効果がある。有痕灸では艾炷の大きさや壮数ともさまざまであるが、効果優劣は不明である。
⑥腫脹しているタイプは腫れが引き、膿が出ているタイプは排膿を促進させる。

筆者も内・外麦粒腫に対しては二間へのゴマ大灸施灸5壮程度を行うことが多い。これで眼のうっとうしさは少し軽減するが、症状消失までには至らない。しかし施灸した翌朝には眼が気にならない程度になるのが普通である。多壮灸の方が効果あるともいうがその経験はない。
 

1.麦粒腫になぜ二間を使うのか?

麦粒腫は、眼自体の疾患というより、眼瞼という皮膚疾患であることから、経絡的には大腸経病変とみなすのは古典的解釈になる。ただし大腸経上の経穴が多数ある中で、なぜ二間なのだろうか? 昔から不潔な指で目をこすったりすると麦粒腫になることが経験的に知られていて、目をこする指の部分が二間あたりになるからだと私は思った。「手当て」という素朴な認識から、麦粒腫の治療穴として二間を思いついたのかもしれない。

ちなみに、代田文彦先生は、「眼球前の皮膚には二間を、角膜・結膜あたりの病変には曲池を、網膜あたりの病変には風池・天柱を使う」と話していた。さらに「膜」には血流があるので鍼灸が奏功する理由があるとも語った。その意味で、白内障の鍼灸の効果に対しては否定的だった。

 

二間のツボのイメージ

 


2.眼瞼の血流増多が治効を生むのか?

針灸治療で二間の灸は有名だが、二間の針では効果がないという。麦粒腫に対する現代医学的治療は眼瞼部の温罨法、ときに抗生物質内服である。唐麗亭は、閉眼させ1.5吋30号針で、眼瞼全体を上下に6回、左右に6回程度まんべんなく接触刺して皮膚が発赤し、患者の患部周囲が気持ちよく感じるまで行うと記している(三種刺法在眼病的応用、「北京中医学院三十年論文選」、北京中医学院編 1956~1986、中医古籍出版社)。この治療法は原理的に、温罨法と同じものだろう。                  

瞼への温罨法や接触針で、麦粒腫が改善するということは、血流を豊富にすると良いらしい。ということは、二間の灸の治効も、眼瞼の血流改善に効果があるらしいと推定できる。顔面の血流増加を意図するという点では、面疔に対する合谷多壮灸も同じである。

 

3.面疔には合谷多壮灸

1)面疔とは

 

面疔とは顔面にできたセツ(癤)のこと。セツが密集したものをヨウ()とよぶ。黄色ブドウ球菌の感染症で毛嚢炎が悪化した状態である。セツそのものは重篤な疾患ではない。

病巣部である眼窩や鼻腔、副鼻腔などは薄い骨を隔てて脳と接しているため、抗菌剤が普及していない時代には、敗血症や脳膜炎の原因となり死亡することもあった。沢田流鍼灸創始者の沢田健も面庁で死亡した。


2)合谷多壮灸

面疔の治療といえば、合谷が有名である。昭和中期まで、「桜井戸の灸」とよばれる静岡県の清水で面疔の治療で名をはせた名家があった。1日500人の患者が来院し、近所には患者宿泊用の旅館もでき、駅(静岡鉄道の草薙駅)もできた。

平成6年頃まで、熱心に当院に通っていた当時95歳の男性がいた。この患者は、なんと桜井戸の灸のことを実体験として知っていた。下足番もいたという。
治療は合谷への数十から二百壮の多壮灸で、面疔の痛みが取れるまで壮数を重ねた。患者は自宅への復路、東海道線に乗ったが、途中で再び痛くなると、列車内で灸する者もいたという。


3)なぜ合谷なのか

古人は発赤や腫脹などの炎症所見に対して、軽症ではやがて自然治癒するが、重症では化膿して、それが排膿した後に治癒すると考えていたらしい。排膿しなければ治らないのだから、毒素を体外に排出するため、皮膚に出口をつくる必要があった。多壮灸や打膿灸でわざと化膿させるのは、毒素の出口をつくるのが目的だったらしい。大腸経は、下顔面と関係が深いことが知られていたので、合谷を取穴したのだろう。面疔の治療穴として頤(かい)の灸がしられている。頤はオトガイで下顎のでっぱり部分をさす。頤の灸も面疔の排膿の意味があるらしい。

 

 

4.足の三陽経流注と脳幹の脊髄路について

二間の灸が麦粒腫に効き、合谷の多壮灸が面疔に効くといった発見は、手の三陽経の走行が上肢の陽経側から頭顔面へ流注するという流れを想定すると理解できるが、すると今度は手の三陽経走行が、なぜそのような流れになっているかという新たな問題にぶつかる。そこで三叉神経脊髄路を考えることで、納得のいく回答を導きたいと思うが、少々難しい話になる。理解できる方だけでもお付き合いください。


1)面疔に対する合谷多壮灸の治効理論

よく知られているのは、天柱に刺針すると、眼精疲労が改善する理由で、これは大後頭神経刺激→C2神経根→頸髄→三叉神経と刺激が伝わることによる。
これを大後頭三叉神経症候群とよぶ。この頸髄から三叉神経への神経路を三叉神経脊髄路とよぶ。

天柱刺激と同じように合谷を刺激すると、その信号は頸部神経根から脊髄に入り、脊髄視床路(脊髄を上行して視床に至る神経路)に入り、視床を中継して大脳で痛み感じる。この脊髄視床路は、三叉神経脊髄路(三叉神経を上行してC2~C5頸髄に至る神経路)核と連絡があるため、下位頸神経刺激(たとえば合谷)が三叉神経に影響するという考えである。
 

 

 

 

脊髄から分岐する神経の根元を神経根とよぶのに対し、脳幹から分岐する脳神経の根元を神経核とよぶ。12対の脳神経は、脳幹の定まった部位から分岐するのが普通だが三叉神経は例外で、中脳・橋・延髄・頸髄(C2~C5,あるいはC1~C3で文献により異なる)という広範囲に神経核が存在している。このうち臨床でしばしば問題となるのは三叉神経核が頸髄から出る部分で、これを三叉神経脊髄路核とよぶ。

顔面の知覚を支配する三叉神経は1枝・2枝・3枝と分かれて顔面を支配するが、これは三叉神経節より末梢の場合であって、三叉神経核との支配は異なり、延髄から橋にある三叉神経脊髄路核は、オニオンスキンパターン(鼻・口を中心としたタマネギ様同心円状の皮膚感覚解離)が生ずる。三叉神経脊髄路核が障害を受けると、病巣側にたとえば頸髄損傷(C2~C5)では、顔面をぐるりと取り巻く部位に温・痛覚障害を生ずる。上図の三叉神経脊髄路核①は、鼻から口領域となり面疔の好発部位に一致する。
 


1.指端刺絡の概略
 

1)方法
 
指端刺絡とは、手足の各指の左右爪甲根部から、三稜針等で刺絡し、ごく少量出血させる方法で、針灸治療の伝統的手法の一つである。この部は古典的に井穴とされ、各経絡の末端になる。これらの部位は、手足指先の爪甲根部にある。例外的に腎経の井穴である湧泉穴は足裏にあるが、足の第5趾爪甲根部内側を湧泉とすることがある。

2)従来的適応症
 
古典五兪穴の作用分類では、心下満(心窩部のつかえ感)の際に使うとされる。実際的には、急性心疾患や脳卒中発作時の緊急処置としても適応がある。対症治療として神経根症時や糖尿病等での知覚鈍麻に使うと速効することも多いが、持続効果は丸1日程度である。

2.指先刺絡の作用機序
 

1)グロムス機構とは
手足の指の末端の血流は、動脈から静脈に流れる経路で、一般的な毛細血管を経由するものとは別に、小動脈から小静脈へと短絡する経路がある。これをグロムス機構(動静脈吻合)といい、指先にあるものをとくに指端グロムス機構とよぶ。

2)グロムス機構の臨床応用
寒冷時にはグロムスを閉じて末梢血流量を減らすことで核心温度の低下を防止し、熱暑時にはグロムス機構を開いて放熱を盛んにするというのが本来の生理的意義がある。指端の1カ所の指先グロムスを刺激すると、その指の血行が促進されるので、知覚麻痺に効果がある。それにとどまらず、理論上は手足全部のグロムスに影響を与え、全部の指の血行を改善するとされる(石川太刀雄)。

指先グロムス刺激では、脳や心臓などにはグロムスはないので内臓血流に変化を与えることはできない。しかしながら古典では脳卒中や虚血性心疾患時の承知として効果があるとされるので、指の末端といった知覚過敏部刺激による血管収縮に関係するとも解釈できる。

3.指端刺絡と自律神経の関係

古典針灸書をみてみると、治療法として、「まず刺し....」という記述に出くわすことが多い。この「刺し....」とは、「まず刺絡する」との意味だと教わった。針灸治療の最初に刺絡処置を行った後、補瀉治療が行われる。したがって刺絡は補法でも瀉法でもないという解釈になる。部屋の整理整頓をする時、まずは不用品を捨て、次にモノの配置を変えるという順番になるのと同じことだろう。

 

刺針時の切皮痛は補でも瀉でもなく単なる有害刺激とするのが普通だが、指先刺絡に限定するなら、部位的特性として知覚に敏感なので、刺痛を伴うので瀉法になると私は考えていた。しかし刺絡後に指先の血行が良くなることから補法になるという見方もできる。

近来話題になった本に、安保徹著「医療が病いをつくる 免疫からの警鐘」岩波書店刊がある。福田稔医師は安保理論をベースとし、浅見鉄男医師の論文を追認し、指端刺絡が副交感神経興奮作用のあることを提示した(「難病を治す驚異の刺絡療法」マキノ出版による)

   
1)副交感神経緊張症状に対する井穴刺絡部位


浅見先生の見解は、肩こり患者の環指の井穴(H5の三焦経の関衝)から刺絡を試みたところ、肩こりだけでなく、その患者が朝から患っていた蕁麻疹がすっと治ったことが契機となった。蕁麻疹が副交感神経の異常亢進で引き起こされることから、浅見は井穴刺絡が副交感神経異常亢進を抑制する作用があると考えるようになった。以来、関衝からの刺絡は、副交感神経緊張で悪化する疾患(喘息・アトピー性皮膚炎・蕁麻疹など)などに適応があると述べている。後に足第4指外側の井穴(胆経の足竅陰)も副交感神経異常亢進を抑制する作用のあることを発見した。
 

2)交感神経緊張症に対する井穴刺絡部位
 

一方、広義の交感神経緊張症(頭痛、高血圧、肩こり、腰痛など病の大部分)に対する井穴刺激は、手の示指の井穴(H6の大腸経の商陽)や足第5指の井穴(F4の膀胱経の至陰)に効果があるとしている。

 

 

浅見先生の自律神経異常に対する井穴刺絡治療については、副交感神経優位に対するH5F5の選穴根拠、交感神経優位に対するH6F4の選穴根拠が記されていないという不満がある。それ以上に、井穴刺絡が副交感神経緊張症状に効果があるのは理解できるが、交感神経緊張症状に効果あることも示していない。

※  浅見鉄男著「21世紀の医学: 井穴刺絡学・頭部刺絡学論文集」307ページ。近代文藝 

 社、1998/2/1刊行となる書籍が販売されている。現在も入手可能である。これを読

 めば詳細が判明するかもしれない。
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3)井穴刺絡を効かせるコツ?
 

浅見先生の井穴刺絡では一カ所につき30~50滴ほど出血させるという。私は2~3滴程度だったので意外な盲点だったかもしれない。刺絡すると最初はあまり出血しないこともあるが、20滴を超えるあたりから出血の勢いが増し、血色も鮮やかになると記されている。