ふらりと立ち寄られた年配の女性のお客さま。
おもむろにカウンターに座られ、水出しコーヒーをご注文。

一口コーヒーを飲まれて、口を開かれた。

「これ、貴方の字?」
と言って、目の前の壁に貼られた商品ポップを指さされた。

mama「はい、そうです(^-^)」
guest「横丁の入口の立て看板も?」
mama「はい(^-^)」
guest「そう~。
    いい字ねぇ~。
    私、そこの立て看板の字を見て
    吸い込まれてここへ来たのよ。
    コーヒーは好きだけど、こんなふうに、『文字』に
    惹かれて店に入るなんて、初めてだわ。」

そう言って、微笑まれた。

お帰り際、
「コーヒーも美味しかったわ。
貴方のケーキを三つ包んでちょうだい。
持って帰って頂くわ。」

これは、つい二、三日前のエピソードです


うちの店はアナログで・・・・パソコンはこのように持っては
いるのですが、印刷された文字があまり好みではなく
店内のメニューをはじめ、立て看板やポップは全て『手書き』。
しかも筆書き(筆ペンですが)にこだわっているので
確かに時間はかかりますが、
書いてる本人(mama)は、全く苦ではありません

下書き無しに、何枚でも同じ文章を書くのもすらすら・・・・

たしかに。
実はこのお客さまの様に、『字』を褒めてくださる方が
たまに居られます。
「何かそういう字を書くお仕事とかしてたの?」
「どこかへ習いに行ってるの?」
その度にお話させて頂くのですが・・・・
これは・・・親に感謝の一言なんです。

習いに行ったといえば・・・
小学生の六年間だけ、親が近所の書道教室へ
通わせてくれてました。
私が幼少の頃は、現在とは違い、塾へ通っている
子供は少なく、通うとしたら、”お稽古事”が主流でした。
苦手な数字を扱う”そろばん”や、
音楽は好きだけど、どうしても長い楽譜を覚えるのが
苦手だった”ピアノ”は、
三日坊主で辞めてしまったのに・・・
この書道だけは、週一の教室の日が待ち遠しいくらい・・・
ほいほい喜んで通い続けたものでした。

三つ年下の弟にはエレクトーンへ通わせ・・・
二人分の学費もかかるのに、
親は六年間も通わせてくれたのです。
そのおかげで、私は、その当時子供がとれる資格としては
最高級の
九段をとることができました。
楷書はもちろん、小筆をつかう草書も習いました。
毎日毎日練習しては、教室へ持って行き、
先生にきれいなオレンジ色(・・・子供の私にはそう見えたのですが、
朱色ですね)
墨で、○や×、時には二十マルなどで直されるのがワクワクして・・・・
本当に楽しくて仕方なかったのを覚えています

学校での書道の時間ももちろん楽しみで・・・
何度か賞もとらせていただきました。

ところが。
中学へあがるや否や、実は、字を書く時に
字の下部になるところに定規をおいて
ペンを充てながら書く遊びが友達の間で
流行ったので・・・その頃に変な癖が一度ついてしまいました。
高校へ入る頃、受験をするのに、これはいけないとさすがに気づき
元へ戻すのに苦労しました。

社会人になってからは、
勤めた会社で上司の手紙の代筆を頼まれたり(今ほどパソコンが普及してなかったので)・・・・
のし書きや、表彰状、年賀状の宛名書き等など・・・
筆を持つ機会が多かったので、今の文字に至っていると思います。

自分が思うに。
決して『上手く』はないのです。
ただ、字を書くときには、
とにかく字は大きく、
読みやすいバランスのとれた文字列をイメージして、
ということだけを意識しています。

教科書の手本のような文字ではないのですが、
やはり「好き」こそモノのなんとかで、
幼い頃、私の「好き」をのばすため
書道に通わせてくれた親に感謝、感謝・・・なのです。
大人になった今、こんなに役にたっているんですもの。

文字に惹かれて来たのよ・・・

そんなお客さまもいらっしゃる。
・・・ちょっと嬉しかったエピソードでした