こんにちは。
大野です。
アカメ合宿初日。
遠足前症候群で寝不足の男たちは、ギラついた目で、土砂降りの高知に降り立った。
さっそく高橋が竿の上下を間違うという手痛いミス。
さらには、山本がリールを固定するパーツを紛失するなど、今日の空模様同様に雲行きが怪しい。
あまりにも雨がひどいので、初日は事前に目をつけていたポイントを見て回る。
どこも悪くない気がするがアカメという魚自体が初めてで何が良くて何が悪いのかがわからない。
結局夜中まで雨が止まず、雨でもできることやっとくかと思いひろめ市場でウツボのタタキや分厚いカツオをいただく。
うまい。
ひたすらにうまい。
満足感があるが、心の何処かで明日以降の釣りの心配をしている自分がいる。
そのままホテルに向かう。
寝るだけのビジネスホテルだがフロントの対応が丁寧でありがたい。
部屋はもちろん煙草臭い。
ここに4泊かぁ……
翌日は早朝から動き始める。
昨夜偵察した突堤へ。
すでにそこそこの釣人が入っている。
このときはまだ、まさか彼らのことを師匠方と呼ぶことになるとは思っていなかった。
影で呼んでただけだけど。
アカメ釣りの師匠方は様々なことを丁寧に教えてくれた。
釣れたてのカツオも振る舞ってくれ、仕掛け、餌の確保の仕方をアドバイスもいただいた。
時には厳しいことも。
「ルアーかぁ、厳しいよ」
「ほとんどが釣れずに帰るよ」
「8年間釣れてない人もいるよ」
我々のプランが音を立てて崩れていった。
ルアーじゃ無理かも。
神奈川で釣具屋を駆け回って集めた対アカメルアーたちは、このときからルアーケースで眠ることになりその後登場しない。
悔しかったが、せっかく高知まで来たのだからとできることを精一杯やった。
まずは、餌の確保をと炎天下の中ボラを引っ掛け、やりなれないサビキでコノシロを確保した。
着実にアカメに近づいてると感じた。
そうして迎えた3日目の夜中。
なんと近くのアングラーさんが泳がせでアカメを釣り上げた!
我々も竿を出しているので、交互に見に行く。
山本と高橋がアカメを見に行ったタイミングで事件は起きた。
ドッパーン!!!
えっ?何?
誰かどデカい石でも投げ込んだような音だった。
足元で水柱が上がり竿が一瞬浮く。
瞬時に気づく。
泳がせていたボラにアカメが食いついたのだ。
大声で高橋、山本を呼ぶ。
すぐに竿を持つがボラだけがいなくなっていた。
駆けつけた2人が見たものは、甲子園で砂を集める球児のようにその場でうずくまっている私だった。
悔しかった。
その後は気配がなくなり最終日に備える。
翌日は昼頃から出撃。
毎日のように通った、「たも屋」というさぬきうどんの店で何回目かわからないうどんをすすり、ポイントへと向かう。
この間の経験をすべて活かし万全の体制でアカメに挑む。
師匠方とひと通り挨拶を交わし、餌を確保する。
言うことがないほどにアカメを釣る準備が整い迎えた夜、不運にも餌のボラとコノシロを失う。
この釣りにおいて餌が確保できないのは致命的である。
そんなときルアーへのこだわりを捨てきれずに悩んでいた高橋が立ち上がった。
「先端にいってボラ引っ掛けてきますわ」
数分後……
「大野さんっ、釣れましたっ」
正直キュンとした。
ボラを引っ掛けるのだって正直簡単じゃない。
それをこのピンチに難なくやってのけた。
正直キュンとした。
そうして迎えた深夜、そのときはきた。
ウキで泳がせていたボラが大暴れする。
気配を感じその竿の前に集まったとき、ブッコミで泳がせているもう片方の竿から糸が出ていく。
ドラグを締め込み、山本が思いっきりアワセを入れる。
その瞬間沖で巨大な魚がエラ洗いするのが見えた。
アカメだっ!
慌ててランディングの準備をするが、その時にはすでにボラがすっぽ抜けたあとだった。
その後はウキ釣りにもアタリが出たが同じくアワセが決まらず、アカメをキャッチすることができなかった。
気づくと朝の6時。
アカメは釣れず真っ赤な目の男たちが堤防で立ち尽くしていた。
朝日の中、新たな師匠が現れ我々の道具を触って言った。
「弱いっ!!!」
その言葉がすべてであり準備した道具のすべてが弱かった。
到着した時点ですべてが決まっていた気がする。
悔しさや合宿をやり直したい気持ちが溢れてくるが、同時に成長も感じた。
初めて挑む魚、初めての場所でこれだけアタリを出せたのも収穫だったと感じるし、この地域のアカメ釣りへの向き合い方など学ぶべき部分も多かった。
帰りの飛行機では上空から浦戸湾を見渡しながら、高橋と次回の遠征の計画を練った。
その奥で山本は疲れから高知から羽田まで意識を失っていた。
帰ってきてからも頭の中でアカメを追った日々の事が頭の中を循環してボーっとする。
それだけ刺激的な釣行だった。
いつもの釣りをして自分を取り戻すことに専念し、また1つできた夢を追いかけたいと思う。
では🐳
Written by 大野