皆さまこんにちは。メディカル・エンジェルです。

本日は、の話題は『インスリンシグナル伝達系の変異が寿命を延ばす』についてで御座います。 

インスリンシグナル伝達系の変異が寿命を延ばす

 

線虫やショウジョウバエを使って寿命に関わる遺伝子の研究が行われています。線虫やショウジョウバエの突然変異系統の中から寿命が延びた変異体を見つけ、どの遺伝子に突然変異が起きているかを解析すれば、寿命に関連する遺伝子を見つけることができます。このような研究によって寿命に関わる遺伝子が多数見つかっていますが、その中にインスリンのシグナル伝達系に関与する遺伝子があります。

 

線虫の遺伝子でins-7とdaf-2と名付けられた遺伝子に突然変異がある変異系統の線虫は寿命が延びていました。これらの遺伝子は哺乳類では、それぞれインスリンとインスリン受容体に相当するものでした。そして、インスリン受容体の下流に存在するシグナル伝達系に関与する遺伝子の突然変異も寿命を延長することが明らかになっています。インスリンが結合して活性化されたインスリン受容体はホソホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)というリン酸化酵素を活性化し、これがさらにAktというセリン・スレオニンリン酸化酵素をリン酸化して活性化します。活性化したAktは、細胞内のシグナル伝達に関与する様々な蛋白質の活性を調節することによって細胞の増殖や生存(死)の調節を行います。Aktのターゲットの一つに哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1(mTORC1)というタンパク質複合体があります。 

 

mTORC1はインスリンの他に、成長ホルモンやインスリン様成長因子-1(IGF-1)などの様々な成長因子や過剰な栄養によって活性化され、タンパク質や脂肪の合成を促進し、細胞の増殖や体の成長を促進する作用があります。マウスを使った実験では、mTORC1の活性を遺伝子改変や阻害剤(ラパマイシンなど)で抑制すると、老化関連疾患の発生が遅くなり、寿命が延びることが報告されています。糖質の多い食事はインスリンの分泌を促進し、mTORC1の活性を高めて、がんの発生を促進したり老化を促進する機序が指摘されています。このように、糖質の多い食事は糖質そのものによる老化促進作用とインスリンの作用による老化促進作用が相乗的に作用して老化を促進し、老化関連疾患の発生と進行を促進し、寿命を短くすることになります。