3か月も更新が止まっていました。私の環境が変わったり、このシリーズ?でオチにしようと思っていたことがらも嘘だよね?というどんでん返しが起きてどうまとめようか、と困っていた状態でした。気を取り直して最後まで書き進めようと思います。
その人との出会いはInterpalsでした。たぶん、part2の数週間後、2016年の7月前後だったと思います。SNSで話す前に、何を話したのかInterpalsのログを読もうとしても数週間でアカウントが消えているという状態でした。偽名でしょうけれども名前はLiamという30代の軍人と名乗る人でした。どんなメッセージで会話が始まったのか、彼のアカウントはいつの間にか消えていたので覚えていないのですが、これではないか、と思っているものがあります。
 「君の甘い微笑みに、多くの男性が花に蜜蜂が引き寄せられるように未了されていることを、知っているだろうか?」
という、これはやりすぎだろうと思うようなメッセージが届き、警戒していたにも関わらずつい突っ込みの返信をしてしまったのが会話の切っ掛けになってしまった、のだと思います。
 「このメッセージをたくさんの女性に送っているの?褒めすぎなんじゃない?信じてもらえないと思うのだけれど。」
 すると、そんなことはない、と否定するのです。どう考えても嘘だよなぁと思うのですが、そのころまでにたくさん出会ってきた詐欺師たちとは話のパターンが少しだけ違っていたのです。詐欺師のパターンは
 すぐにメールやSNSでの連絡方法を聞き出そうとする
 軍人で海外にいる
 離婚して一人で子供を育てている、または妻と死別した
 彼女、または結婚相手を探している
 理想の彼や夫、結婚の夢を語らせたがる
 年齢を意識させ、結婚願望を引き出そうとする
 医者である
この7項目の内、Liamが該当したのは1か所と半分。彼女が欲しいということは言っていたように思います(私が無視していましたが)。また、海外にいるとは言っていませんでしたので、軍人だというところで該当します。ですが、残りの部分をあまり感じなかったのと、英語が流暢で会話がスムーズに進んだので、しばらく話をしてみたいと思ったのです。そして、私が一番言われるとうれしい言葉。
 私と話していると楽しい。
ということをよく言っていました。友達を探している私には、この言葉が一番好ましく、喜ばしいものだったのです。
 先ほどのリストの項目にも関係しますが、この方は、メールアドレスなどをそれほど知りたがらず、自分の話を聞いてもらいたそうにしていました。しかも、軍人であることは自分の生い立ちを話す時に自然に混ぜ込む形で語られ、アフガニスタンにいる、ということもしばらく言いませんでした。
 Liamの生い立ちは以下のようなものでした。
 3年ほど前に恋人と別れた。自分の仕事は家を空けることが多く、その時も半年ほど家を留守にしていたのだけれども、その間に彼女は自分の親友と恋に落ちてしまった。それを知らずに家に戻ってから彼女と一緒に暮らしていたのだけれども、彼女が友達の子供を妊娠してしまった。自分は友達も彼女も失い、特に彼女には今でも怒りを感じている。自分と暮らしながら、一方でほかの男性の子供を宿していたなんて……。

 この話が事実だとしたら、それはつらいだろうな、と思いました。この話の後にメールアドレスを聞かれたかもしれません。すぐに教えたのか、しばらく様子を見たのかは覚えていません。でも最終的には、友達しか探していないのだけれど、と念を押した後で、聞かれたメールアドレスを伝えました。ただ、この人を全面的に信じたわけではありませんでした。私は大量にくる詐欺師からのメッセージについ答えてしまっていて、先ほど書いた七つのチェックリストに該当するやり取りを繰り返しており、そう簡単に人を信じられないという心境になっていたからです。
 ロマンス詐欺のやり口を私が見抜けたのは、もう一つ、ほかの人にはない理由があったかもしれません。それは、幸いか不幸か、私には目が見えないという障がいがあったことです。彼らのメッセージから、本当に私との会話を楽しんでいるのか?障がい・年齢・体系・人種・国籍を克服できるほど、私という個人を気に入って話しているのだろうか?いつも私はこのことを気にしていて、彼らはその両方に当てはまらないのです。彼らは、会話を楽しんでもいないし、私という個人を気に入ってもいない。それが、文面の端々から伝わってくるのです。もしも、私が障がいのない女性だったら、こんなに厳しく彼らの文面からさまざまな思いをくみ取ろうとしたかどうか、自信がありません。日本では、女性が正しく評価されておらず、恋人がいても良いはずの人たちが、探しているにも関わらず相手がいない、ということがたくさん起きているように感じます。そのような人たちが、自分の孤独を埋めてくれるかもしれない人に出会えたら、信じたいと思ってしまっても当然なのではないか、と感じるのです。
 このように、完全には信じていないLiamに、私はgmailのアドレスを教えたのですが、なんとこれはハングアウトというLineなどど同じようなアプリで連絡もできるアドレスだったのです。そんな使い方をするつもりはなかったのですが、ハングアウトにメッセージが届いてしまうとチャットに変身している自分がいました。時折電話もかかってきましたが、それはすべて無視しました。メールも届いたのですが、何やらロマンチックなポエムが送られてきて、どうしてこの人は恋人探しモードをやめてくれないのかな?と思い、その時からこの人との会話が苦痛になっていったように思います。いつブロックしようか?と悩む一方で、詐欺かもしれない。質問や会話から状況を探ってみよう、とも思っていました。そこで、この人との会話を読み直そうとInterpalsを探したのですが、それらしきログが見つかりません。Liamに聞いてみると
 「もう君と出会えたから、アカウントは削除したよ。」
と言います。それは、重すぎると思いました。私はあくまで英語で話ができる友達が欲しいだけなのです。その一方で、
詐欺師としてマークされ、デリートされたのではないか?とも疑いました。でも、革新がもてないでいました。
 アフガニスタンにいて空軍の事務仕事をしている。
というので住んでいるキャンプの様子を聞くと、建物の様子を具体的に教えてくれました。何年か後に沖縄の陸軍で働いている人と話したことがあるのですが、部屋の様子はよく似ていました。軍隊やキャンプの様子を聞くと答えられない詐欺師たちも多いのですが、大きな組織になると詳しい情報をもっているボスや仲間がいるのだと思います。ただ、当時の私にはLiamにその知識があるとしか感じられなかったし、組織があるということを知っていても、どんな方法で欺くのか。その具体的な現場のイメージはわかない状態でした。
 Liamの言動がはっきりと詐欺とわかりだしたのは最後の2回のやり取りでした。
 その前から、引退して日本に行きたい、会いたいと言っていて、私はいつ嫌だと言おうか悩んでいました。(無視してブロックすれば良いだけだったのですが。)その日は、アメリカに戻ったら不動産の事業を始めたい。日本でも事業を展開したいから、ぜひビジネスパートナーになってくれ。という、意味不明なことを言い始めたのです。彼の年収は、私の働き始めたころの年収と同額で、どうやって不動産の業界に入り込むのか?まったく想像がつきません。詐欺でなければ大人になっても現実を見極められない、クレイジーな人だと思いました。
 この話の流れの中で、ネットで知り合った人を信じるかどうか、という内容になった時
 「私は完全には人を信用して話していないよ。詐欺がとても多いから。」
と答えました。Liamに、人を信頼して話している、などとは答えたくなかったのです。すると、
 「ぼくのことも疑っているの?」
 「自分は詐欺師ではないよ。」
(汗)
 (汗)
と立て続けに自分を弁護するようなメッセージが届いたのです。悪い気持ちがない人ならばこのような激しい否定はしないだろうと思えるような反応でした。私は、この人とはもう話したくないなぁという気持ちがドンドン膨れ上がっていくのを感じていました。
 そして、その数日後。
 「今日はあまり元気じゃない。」
と一方的に話始めました。
 「母が入院しなければならないんだ。30蔓延(3000ドル)かかるのだけれど、自分でお金をかき集めた。ただ、250ドル足りないんだ。」
強引な話の進め方は、投げやりな印象を受けました。詐欺軍団のボスからプレッシャーを掛けられたか、もしくは私との会話に決着を付けたいか、のどちらかだろうと感じたのです。
 「やめなよ、人を欺くのは。詐欺は。」
私はそう答えて、とうとう彼をブロックしました。

 ブロックしたとたんに、私はとてもすがすがしい気分になりました。
 どうしてもっともっと早くに会話をやめなかったのでしょう。相手が詐欺師だろうが実在の人間だろうが関係なかったのです。私は、彼と話すことが苦痛でならなかったのです。
 そう。
幸運にも、詐欺師たちとの会話は私には楽しいものではなかった。ですが、会話上手、コミュニケーション上手な人たちが目の前に現れたら。
 これ以上のヒントを詐欺師たちに与えたくないので、私の細かな心情を話すのはここまでにしようと思います。孤独に生きる私たちの心に漬け込むなんて、彼らは本当に罪深いと私は思っています。