デスティニー 【第2章 15話】 | 『デスティニー』 ~運命の物語~ 

『デスティニー』 ~運命の物語~ 

『デスティニー』という小説を書いています。
どうぞ御気軽にご覧下さい♪

2014/12/01
多忙でしたがやっと余裕ができました!
まだ忙しい生活が続きますが
休み休み更新していけたらと思います!
忘れ去られているとは思いますが
またよろしくお願いします♪

☆津川輝

綾の濡れた頬に触れていて、自分の心の片隅に、ためらいの欠片が落ちている事に気付いた。

今ここで綾を抱いてしまうことが、本当に正解なのだろうか?

ここでもし抱いたとして、何になる?

綾が、俺の身体を覚えておいてくれる事?

それだけだろう


・・・・・綾の首筋まで持ってきていた手を、はたと止めた。

綾が閉じていた目をうっすらと開ける。

「・・・輝?」

「・・・・・ごめん」

「・・・・・・えっ?」

俺は綾の手を引いて、起き上がらせた。

「・・・・えっ、輝?」

浴衣がはだけた綾の肩を、優しく抱き寄せる。

「・・・ごめん。

 ・・・・・・もう、寝よう」

「・・・えっ、何で・・・?」

「・・・・・抱けばいいってもんじゃない。

 たしかに、お前には俺の事を覚えててほしいし、俺もお前を覚えておきたいけど、

 抱いたからって何になる?」

「・・・・・・」

「だからさ、本当に抱くのは」

「・・・・・・・え・・・?」

「・・・・・また会った時・・・だ」

「・・・・・・」


☆速水綾


「・・・・・また、会った時・・・?」

「いつかまた、俺たちが大人になって会った時・・・

 その時に」


「・・・・・・・・・」


「・・・・あ、嫌だったらいいんだけど・・・」


照れたように笑う輝。

・・・・ばか。

ばかばかばか。


ばか。


馬鹿・・・


ぼろぼろと涙が零れてきた。


「・・・・・え、何だよ・・・泣くなよ(笑)

 泣いたら、そんなにやりたかったのかってなるぞ(笑)」

「・・・・・ち、違っ」



輝が、ぎゅううっと私を抱きしめた。



「・・・・・・綾、


 お前は俺の、大切な大切な女の子だ。

 
 それで、


 大好きで、大好きで・・・・世界で一番大好きで、大切な―――――――」


そこからは、聴こえなかった。


私が声をあげて泣いたからだ。


輝の胸で泣きじゃくる私を、輝は笑って頭を撫でた。



輝も、同じくらい辛いはずなのに。


ねえ、言われっぱなしなんてずるいよ。


私にも言わせてよ。


「・・・・・・・こ、う・・・」


私は嗚咽を必死に飲み込んでいった。



「・・・・大好き、だ・・・いすきっ、輝の・・・ことが、


 世界で、いちば・・・ん、いっち・・・ば・・・ん、


 だいすきだ・・・か・・、ら、


 ・・・・・・・・・・ぜったい、忘れない・・・で・・・」


「・・・・・・・」


「・・・・・・忘れねえよ」


輝が、鞄をごそごそと引っかきまわしている。


私はその間に、どうにか息を整えようと必死に呼吸した。


「・・・・これ」


輝の指から、キラキラしたものが下がっている。


・・・・・え?


「こ・・・・これ・・・・」

「・・・・ペンダント」

「・・・・・な、そんなの・・・・いいよ!」

「気にすんなよ!高くなくて悪いし、1000円台だし・・・」

「・・・・だ、だってだって・・・・、だって・・・・」

「ほら。こっち向いて座れ」

「う・・・」

私はおとなしく輝に向き直った。

輝が私に覆いかぶさるようにして、ペンダントをつける。

私は暖かい輝の背中を、ぎゅうっと抱きしめた。

「・・・・・あ、りがとう・・・・。

 本当に、本当に本当に・・・ありがとう」

すると輝は私をひきはがして、ぐっと力強いキスをした。

それから私を強く強く抱きしめて、


「・・・・・絶対、俺のこと忘れんなよ」

こく、っとうなずく。

「忘れてたら、次に会った時――――――」

・・・・・・・・・・・・っ!!!


真っ赤になって輝をみあげると、

「本気だからな(笑)」

と言って、くしゃっと笑った。


***




また逢う日まで!