デスティニー 【番外編】 「体育祭も」 | 『デスティニー』 ~運命の物語~ 

『デスティニー』 ~運命の物語~ 

『デスティニー』という小説を書いています。
どうぞ御気軽にご覧下さい♪

2014/12/01
多忙でしたがやっと余裕ができました!
まだ忙しい生活が続きますが
休み休み更新していけたらと思います!
忘れ去られているとは思いますが
またよろしくお願いします♪

ちょっと番外編が楽しくなってきてしまった・・・!!!

これはいかん( ゚∀゚;)

あ、体育祭当日っていう設定で番外編です☆


***

「輝、おはよ!」

「はよ」

体育祭だというのに、いつも綾に視線が行ってしまう。

だって、100メートルで陸上の奴に負けじと走ってる綾が面白くて。

しかもこいつ、陸上の奴に勝ってるし・・・

「お前、意外と走れんのな」

「あー、長距離よりはね?やばいなーあの陸上の子にさっきからにらまれてるよー・・・」

「ま、あいつはいつもそんな奴だから。気にすんなって」

「・・・うん」

綾はちょっと不安げなまなざしで、3年生の借り物競走を見つめた。

俺が励ましに、頭に手をポンと置くと一瞬驚いたような顔をして、照れながら微笑んだ。

あー、可愛い・・・

「輝、リレー頑張ってね!ぜったい応援するから」

こんどは、力強くにかっと笑う綾。

「・・・お前白組だろ?俺黄色だし・・・そんな大っぴらに応援して目とかつけらんないのか?」

「大丈夫!!委員会で応援賞の集計やりながらリレー見るから、近くに八木とか面倒なのいないしね!」

「・・・だけど、俺たちがつきあってるってばれるんじゃ・・」

すると、綾がはっと驚いて、

「ご、ごめんなさい!!嫌だったら控えめに・・・」

俺は綾の頭を撫でていた手をぴたりと止めた。

「・・輝?」

「ばっかじゃねーのお前!嫌なわけねーだろんなもん」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ」

「だから応援してくれって言ってんの!」

俺がにっと笑うと、綾もにっと笑った。

それから敬礼して、「任せてくださいっ!」と言って笑った。

可愛い・・・(笑)

「・・・どうしたの、輝」

綾が俺の視線に気づいて、照れながら言った。

「・・・可愛いから(笑)」

「・・・・・・・ばかっ」

「可愛いのは本当だし(笑)」

「・・・・輝だってかっこいいよ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・ずきん。

「・・・・・・・・な、なに言ってんのお前!!」

「可愛いとか言われたからお返し!!・・・本当にかっこいいから言ってるんだよっ」

「・・・・・・何コイツ可愛い・・・」

思ったことが思わずぽろりと口に出た。

「・・・・ばっ、、ばか・・・っっ!!」

綾がぽかぽかと俺を叩く。

「いてて・・・(笑)お前がばかって言っても可愛いな(笑)」

綾は、少しむくれた顔をする。

「・・・だって・・・・・・・・」

俺は綾の頭をよしよしと撫でた。

すると、綾が背伸びをして、俺の肩に手をかけた。

俺はすこし膝を曲げて、綾のほうに方を傾けた。

「なに?」

「・・・・・・・・・・・・・・頑張ってね、・・・だいすきだから」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・・じゃ、っ・・・」

綾はすとんと背伸びから降りて、肩にかけた手をするりと抜いて走り出そうとした。

「・・・・待て」

俺は綾の手をぐいっとつかんだ。

綾は恥ずかしさのあまりか、つかまれても振り向かない。

俺は手をぐいっと引き寄せて、綾の体ごと引き寄せた。

「・・・・輝・・!?」

俺は耳うちで、

「・・・体育祭終わったら、2年1組で待ってるから来い」

綾の顔が、動揺と驚きで一瞬こわばった。

俺は真っ赤になった綾をぐりんと撫でて、自分の仕事に向かった。

***


輝がリレーで走ってる。

・・・もう午前の部も終わり、今は午後の部の最終種目「色別対抗リレー」だ。

輝は2年生のアンカー。

もうすぐ輝の出番で、応援賞の集計をしている手が止まってしまう。

「綾ちゃん、輝くん見たいのは分かるけど手ぇ止めない!」

「・・・・・・あっ、はい・・・!!すみません!」


この先輩は、先輩の中で唯一私と輝の関係を打ち明けた人だ。

小学生の時から同じ委員会で、可愛がってもらっていた。

瀬上七恵先輩という。

「・・・ま、輝くんの時は多めに見てあげるからさ☆」

「・・・・あ、ありがとうございます・・!」

「ほら、もうすぐだよ!」

急いで校庭に目をやると、輝がスタートラインに立っていた。

それからかがんでスタートダッシュの位置に付いて・・・・

・・・・・こっち、見てる・・・?!

確かに目が合ってる。

それから小さい口パクで、

”見てろ”

・・・・・・・・・・・・・うん!

私は大きくうなずいた。

その一部始終を見ていたらしい瀬上先輩が、

「ひゅ~♪」

と耳打ちしてきた。

思わず振り向くと、瀬上先輩が「ほら!!」と校庭を指した。

また急いで校庭を見直すと、輝が走り始めるところだった。

・・・・・・・・・・・・はやい・・・・

「・・・・・・こ、輝・・・がんばれ――――っっっ!!!!!!!!!」

少し応援に思いとどまったが、周りの人も大きな声で他の組を応援していたりで、私の声など響きもしなかった。

・・・・あっ、1人抜いた・・・!!

輝が、大体同時に出発した赤組の女の子を抜いた。

それから、緑組の男子も抜いて・・・

バトンパス――――


・・・・・・・・・・・輝!!!!!!

輝が、白組のリレー選手だった八木に足を掛けられよろめいた。

・・・・・・・・・・・・・・八木・・・・・・・!?

後ろにいた瀬上先輩も、「何あいつ・・・!?」と、怒りを隠さずつぶやいた。

輝はそのままひざをついて倒れ、その間に抜かした2人に抜かれ、そのあとから3年生にバトンパスした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

声が出ない。

・・・信じられない。

同じ白組として、なんて言ったらいいのか。

「・・・・綾ちゃん、もう席に戻っていいよ・・・」

私にはもう係の仕事は残っていなかった。

「・・・・はい・・・」

私は3年生の応援もせずに、ただただ無言で自分の席に戻った。


その後の閉会式でも、輝の黄組が勝ったことを喜びもせず、八木のせいで白組が失格になったことを怒りもせず、


ただただ、されるがままに立ちつくし、無言でいた。




閉会式のあと、椅子を片付けに教室に戻り、また片づけの仕事に校庭に戻った。

いち早く委員会の集合場所に行ったつもりだったのに、瀬上先輩が大体の仕事をもう済ませていた。

「す、すみません・・・!」

「いいの。・・・・・・・綾ちゃん、衝撃的だったでしょう」

「・・・・・・・・・・許せないです。・・・・あいつ、星野さんもいじめてて・・・」

「・・・・綾ちゃん、涙目だよ」

「・・・え、うそ・・・!・・ありがとうございます」

私はあわててごしごしと目をこすった。

「・・・・・・・・・・・・泣いていいんだよ」

瀬上先輩が、私の肩にそっと手を置いた。

涙が、知らず知らずのうちにぽろぽろと零れる。



誰もいない校庭の真ん中で、はじめて輝以外のひとの胸で泣いた・・・。



***


まだ鼻を赤くして、2年1組の教室に向かった。

遅くなってしまったから、輝はもういないかと思いながら教室に入ると・・・。


輝の影が、窓際のカーテンの中に見えた。


「・・・輝・・・!?」

すると輝は、風になびくカーテンの隙間から顔を出して、

「こっち来いよ」

と言って手招きした。

私は窓のところの棚の上に乗って、輝の膝の間に座った。

少し開け放されたまどから、夏の夕方の風が吹く。


「・・・・・八木がさ」

「・・・・・・・・・・・・・・うん」

「・・・・お前が調子乗ってるからいけないんだ、って・・・」

「・・・・・・・・・・え?」

「来年の部長になったからって・・・・、優斗もそう言われたらしい」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・輝は、調子乗ってなんか」

「もう、ほんっと情けないよな」

「・・・え・・・?」

「・・・・八木なんかに足掛けられるほど、俺は・・・・」

輝が自分をあざけるように笑って、頭を抱えた。

「輝・・・!」

思わず、私は輝の抱えた頭を抱きしめた。

輝が、一瞬ぴくっと動いた。

「・・・・輝は、情けなくなんかない。・・・かっこよかった・・・!・・情けないのは、八木。調子乗ってるのは、八木・・・!!」

......

輝は、なにもしてないんだよ・・・・!!!


「・・・・泣いて、いいんだよ・・・」


輝が、私の肩をぎゅっと握った。

「・・・・っ・・・・」


それから、輝と私はお互いに抱きしめ合いながら、ずっと泣いた。


***


「・・・・・・・・・・・・ん・・・・っ」

・・・・・え・・・?

辺りを見回すと、もう真っ暗だった。

・・・寝ちゃってたの・・・?

私は輝の背中に頭を乗せたまま。

輝は、私の膝を枕にして寝てる・・・。

・・・可愛いなぁ・・・

・・・て、時間・・・・!

カーテンをめくって教室の時計を見ると、もう8時だった。

「・・・・・・・・・・・・・やっばぁ!!!!」

「こ、輝!!!起きて起きて!!!」

「・・・・・ん・・・・」

「・・・・・・・・・・8時だよ輝!!夜の8時っっ!!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・えっ!?」

輝はとび起きて、私のおでこに後頭部をがんと打った。

「「いぃ・・・った・・・・・・・・」」

「(笑)!!」

「・・・(笑)・・・・・・ありがとうな、綾」

「・・・・・・・・ううん。」

・・・こうやって一緒に泣きあったことが新たな恋のようで、私はきゅんとした。

輝の濡れた目を指で拭うと、輝も返して私の目を拭った。

それから、輝の目がぐっと近づいて、長いキスがあって。・・・・

「・・・・・ありがとう、綾」

と、私を抱きしめて輝が囁いた。

「・・・・輝が、私に頼ってくれたのがうれしかった。・・・ありがとう」

「・・・・うん」

輝が私をぎゅうっと抱きしめて、

「帰るか!」


と言った。



その時の輝の表情は、何もかもふっきれたような、幸せそうな笑顔だった。




俺を抱きしめた時の綾の表情は、艶やかで愛しくて、もう絶対に離したくなかった。

***

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