ちょっと番外編が楽しくなってきてしまった・・・!!!
これはいかん( ゚∀゚;)
あ、体育祭当日っていう設定で番外編です☆
***
「輝、おはよ!」
「はよ」
体育祭だというのに、いつも綾に視線が行ってしまう。
だって、100メートルで陸上の奴に負けじと走ってる綾が面白くて。
しかもこいつ、陸上の奴に勝ってるし・・・
「お前、意外と走れんのな」
「あー、長距離よりはね?やばいなーあの陸上の子にさっきからにらまれてるよー・・・」
「ま、あいつはいつもそんな奴だから。気にすんなって」
「・・・うん」
綾はちょっと不安げなまなざしで、3年生の借り物競走を見つめた。
俺が励ましに、頭に手をポンと置くと一瞬驚いたような顔をして、照れながら微笑んだ。
あー、可愛い・・・
「輝、リレー頑張ってね!ぜったい応援するから」
こんどは、力強くにかっと笑う綾。
「・・・お前白組だろ?俺黄色だし・・・そんな大っぴらに応援して目とかつけらんないのか?」
「大丈夫!!委員会で応援賞の集計やりながらリレー見るから、近くに八木とか面倒なのいないしね!」
「・・・だけど、俺たちがつきあってるってばれるんじゃ・・」
すると、綾がはっと驚いて、
「ご、ごめんなさい!!嫌だったら控えめに・・・」
俺は綾の頭を撫でていた手をぴたりと止めた。
「・・輝?」
「ばっかじゃねーのお前!嫌なわけねーだろんなもん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ」
「だから応援してくれって言ってんの!」
俺がにっと笑うと、綾もにっと笑った。
それから敬礼して、「任せてくださいっ!」と言って笑った。
可愛い・・・(笑)
「・・・どうしたの、輝」
綾が俺の視線に気づいて、照れながら言った。
「・・・可愛いから(笑)」
「・・・・・・・ばかっ」
「可愛いのは本当だし(笑)」
「・・・・輝だってかっこいいよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・ずきん。
「・・・・・・・・な、なに言ってんのお前!!」
「可愛いとか言われたからお返し!!・・・本当にかっこいいから言ってるんだよっ」
「・・・・・・何コイツ可愛い・・・」
思ったことが思わずぽろりと口に出た。
「・・・・ばっ、、ばか・・・っっ!!」
綾がぽかぽかと俺を叩く。
「いてて・・・(笑)お前がばかって言っても可愛いな(笑)」
綾は、少しむくれた顔をする。
「・・・だって・・・・・・・・」
俺は綾の頭をよしよしと撫でた。
すると、綾が背伸びをして、俺の肩に手をかけた。
俺はすこし膝を曲げて、綾のほうに方を傾けた。
「なに?」
「・・・・・・・・・・・・・・頑張ってね、・・・だいすきだから」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・じゃ、っ・・・」
綾はすとんと背伸びから降りて、肩にかけた手をするりと抜いて走り出そうとした。
「・・・・待て」
俺は綾の手をぐいっとつかんだ。
綾は恥ずかしさのあまりか、つかまれても振り向かない。
俺は手をぐいっと引き寄せて、綾の体ごと引き寄せた。
「・・・・輝・・!?」
俺は耳うちで、
「・・・体育祭終わったら、2年1組で待ってるから来い」
綾の顔が、動揺と驚きで一瞬こわばった。
俺は真っ赤になった綾をぐりんと撫でて、自分の仕事に向かった。
***
輝がリレーで走ってる。
・・・もう午前の部も終わり、今は午後の部の最終種目「色別対抗リレー」だ。
輝は2年生のアンカー。
もうすぐ輝の出番で、応援賞の集計をしている手が止まってしまう。
「綾ちゃん、輝くん見たいのは分かるけど手ぇ止めない!」
「・・・・・・あっ、はい・・・!!すみません!」
この先輩は、先輩の中で唯一私と輝の関係を打ち明けた人だ。
小学生の時から同じ委員会で、可愛がってもらっていた。
瀬上七恵先輩という。
「・・・ま、輝くんの時は多めに見てあげるからさ☆」
「・・・・あ、ありがとうございます・・!」
「ほら、もうすぐだよ!」
急いで校庭に目をやると、輝がスタートラインに立っていた。
それからかがんでスタートダッシュの位置に付いて・・・・
・・・・・こっち、見てる・・・?!
確かに目が合ってる。
それから小さい口パクで、
”見てろ”
・・・・・・・・・・・・・うん!
私は大きくうなずいた。
その一部始終を見ていたらしい瀬上先輩が、
「ひゅ~♪」
と耳打ちしてきた。
思わず振り向くと、瀬上先輩が「ほら!!」と校庭を指した。
また急いで校庭を見直すと、輝が走り始めるところだった。
・・・・・・・・・・・・はやい・・・・
「・・・・・・こ、輝・・・がんばれ――――っっっ!!!!!!!!!」
少し応援に思いとどまったが、周りの人も大きな声で他の組を応援していたりで、私の声など響きもしなかった。
・・・・あっ、1人抜いた・・・!!
輝が、大体同時に出発した赤組の女の子を抜いた。
それから、緑組の男子も抜いて・・・
バトンパス――――
・・・・・・・・・・・輝!!!!!!
輝が、白組のリレー選手だった八木に足を掛けられよろめいた。
・・・・・・・・・・・・・・八木・・・・・・・!?
後ろにいた瀬上先輩も、「何あいつ・・・!?」と、怒りを隠さずつぶやいた。
輝はそのままひざをついて倒れ、その間に抜かした2人に抜かれ、そのあとから3年生にバトンパスした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
声が出ない。
・・・信じられない。
同じ白組として、なんて言ったらいいのか。
「・・・・綾ちゃん、もう席に戻っていいよ・・・」
私にはもう係の仕事は残っていなかった。
「・・・・はい・・・」
私は3年生の応援もせずに、ただただ無言で自分の席に戻った。
その後の閉会式でも、輝の黄組が勝ったことを喜びもせず、八木のせいで白組が失格になったことを怒りもせず、
ただただ、されるがままに立ちつくし、無言でいた。
閉会式のあと、椅子を片付けに教室に戻り、また片づけの仕事に校庭に戻った。
いち早く委員会の集合場所に行ったつもりだったのに、瀬上先輩が大体の仕事をもう済ませていた。
「す、すみません・・・!」
「いいの。・・・・・・・綾ちゃん、衝撃的だったでしょう」
「・・・・・・・・・・許せないです。・・・・あいつ、星野さんもいじめてて・・・」
「・・・・綾ちゃん、涙目だよ」
「・・・え、うそ・・・!・・ありがとうございます」
私はあわててごしごしと目をこすった。
「・・・・・・・・・・・・泣いていいんだよ」
瀬上先輩が、私の肩にそっと手を置いた。
涙が、知らず知らずのうちにぽろぽろと零れる。
誰もいない校庭の真ん中で、はじめて輝以外のひとの胸で泣いた・・・。
***
まだ鼻を赤くして、2年1組の教室に向かった。
遅くなってしまったから、輝はもういないかと思いながら教室に入ると・・・。
輝の影が、窓際のカーテンの中に見えた。
「・・・輝・・・!?」
すると輝は、風になびくカーテンの隙間から顔を出して、
「こっち来いよ」
と言って手招きした。
私は窓のところの棚の上に乗って、輝の膝の間に座った。
少し開け放されたまどから、夏の夕方の風が吹く。
「・・・・・八木がさ」
「・・・・・・・・・・・・・・うん」
「・・・・お前が調子乗ってるからいけないんだ、って・・・」
「・・・・・・・・・・え?」
「来年の部長になったからって・・・・、優斗もそう言われたらしい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・輝は、調子乗ってなんか」
「もう、ほんっと情けないよな」
「・・・え・・・?」
「・・・・八木なんかに足掛けられるほど、俺は・・・・」
輝が自分をあざけるように笑って、頭を抱えた。
「輝・・・!」
思わず、私は輝の抱えた頭を抱きしめた。
輝が、一瞬ぴくっと動いた。
「・・・・輝は、情けなくなんかない。・・・かっこよかった・・・!・・情けないのは、八木。調子乗ってるのは、八木・・・!!」
......
輝は、なにもしてないんだよ・・・・!!!
「・・・・泣いて、いいんだよ・・・」
輝が、私の肩をぎゅっと握った。
「・・・・っ・・・・」
それから、輝と私はお互いに抱きしめ合いながら、ずっと泣いた。
***
「・・・・・・・・・・・・ん・・・・っ」
・・・・・え・・・?
辺りを見回すと、もう真っ暗だった。
・・・寝ちゃってたの・・・?
私は輝の背中に頭を乗せたまま。
輝は、私の膝を枕にして寝てる・・・。
・・・可愛いなぁ・・・
・・・て、時間・・・・!
カーテンをめくって教室の時計を見ると、もう8時だった。
「・・・・・・・・・・・・・やっばぁ!!!!」
「こ、輝!!!起きて起きて!!!」
「・・・・・ん・・・・」
「・・・・・・・・・・8時だよ輝!!夜の8時っっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・えっ!?」
輝はとび起きて、私のおでこに後頭部をがんと打った。
「「いぃ・・・った・・・・・・・・」」
「(笑)!!」
「・・・(笑)・・・・・・ありがとうな、綾」
「・・・・・・・・ううん。」
・・・こうやって一緒に泣きあったことが新たな恋のようで、私はきゅんとした。
輝の濡れた目を指で拭うと、輝も返して私の目を拭った。
それから、輝の目がぐっと近づいて、長いキスがあって。・・・・
「・・・・・ありがとう、綾」
と、私を抱きしめて輝が囁いた。
「・・・・輝が、私に頼ってくれたのがうれしかった。・・・ありがとう」
「・・・・うん」
輝が私をぎゅうっと抱きしめて、
「帰るか!」
と言った。
その時の輝の表情は、何もかもふっきれたような、幸せそうな笑顔だった。
俺を抱きしめた時の綾の表情は、艶やかで愛しくて、もう絶対に離したくなかった。
***
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