翌日。
これ以上のプール日和はないというくらいに、その日は晴天だった。
朝から、窓に太陽の光が反射している。
枕元の時計を見ると、まだ7時半だった。
となりの布団で寝ている二人は、まだ寝息を立てている。
「・・・・ふぁー・・・」
もう少し寝たかったがお母さんの手伝いをしようと思い、枕元に置いておいた着替えを取って着替え、下に降りた。
下に降りて歯磨きをし、キッチンに行くとお母さんがいた。
「あら綾、おはよう。早いわね」
「お母さんこそ、今日は仕事ないの?」
「今日は祝日だからね。OLは休みだよ」
お母さんがOLという言葉に値するのかが疑問だったが、この質問はやめておくことにした。
「手伝うよ」
「あら、ありがとう。あ、あそこに皆のお弁当置いてあるからね」
「え、作ってくれたの?」
「うん。6人分ね。大変だったわよ(笑)」
「ありがとう、お母さん!」
「ん。男の子のは多めにしてあるからね。昨日、ちゃんとアレルギーとか苦手なものが無いか聞いておいて良かったわ」
「あ、皆何でも好きだよ」
「まぁね。綾もこれと言って苦手なものはないものね」
「うん。まぁ嫌いなものはあるけど(笑)」
すると、階段に輝と優斗と拓くんが現れた。
「あ、おはよう!」
「おはよう」
「おはようございますー」
「おはようございます・・・」
「おっはようございます!」
この返事の仕方で、誰が誰だか見なくても予想はつく。
すると、輝が一番に私のところに来た。
「おはよ、綾」
「おはよう」
「おはよう、輝くん」
「おはようございます」
「よく寝れた?」
「あぁ。全然・・・拓のいびきがうるさくて、そっちで眠れなかったよ」
「(笑)そりゃよかった」
「水瀬と亜衣は?」
「まだ寝てる・・・かな?」
「優斗に行ったら起こしてくるかもな(笑)」
「いやー、でも着替えてたらまずくない?」
「確かに・・・」
「じゃあ、私行ってくるね」
キッチンを出て上に上がると、ちょうど寿々と亜衣が着替えて出てきたところだった。
「あ、おはよう」
「っはよー」
「おはよ~」
「男子は?」
「ついさっき、下に来たよ」
「うわぁ先越された~っ」
「なに勝手に対抗心張ってんのさ・・・ほら早く降りてー・・・」
「亜衣の寝ぼけた声って可愛いねー」
「寿々が寝ぼけてると優しくて怖いよ・・・いてっ・・・」
そんな会話が面白くて、私は後ろでくすくす笑いながらふたりに付いて行った。
***
朝ごはんも食べ終わり、身支度も終え、お弁当も持ち、いざ出発と外に出た。
「よし!じゃあ行ってきますー」
「行ってらっしゃい。8時までには帰ってきてね」
「はーい」
「よし!じゃあ行こうか」
「「「「「おーう!」」」」」
真夏の炎天下の元、私たちのいるところだけさわやかな風が吹いている気がした。
またしても昨日のグループに分かれて行動している。
荷物を取りに行ったらバス停に集合、ということになっているのだ。
「あー、プール日和だねー今日は!」
「早く入りてー・・・くそあっつい」
「まだ9月だよな?」
「9月上旬!今年は暑いからプールまだあいてるんだって」
「マジで?本当に?」
「本当だよ!さっきちゃんと調べてきたから」
「それならいいんだよ・・・」
優斗が汗びっしょりになって言った。
隣の輝を見ると、これまた汗びっしょりだった。
私はバッグから多めに持ってきたタオルを取り出して、
「はい。今日あっついから、多めに持ってきたんだ」
「うわ、ありがと!!」
「さんきゅ・・・」
そんなこんなで、本当は30分しか経っていないのに、1時間半くらい外にいたように思えた。
***
「やっと着いたぁー!!!!!!」
コミュニティバスに揺られ、30分。
この広い屋外プールが目の前に広がっている。
「やっと着いたな、本当に・・・」
輝がため息をついた。
「さ、早く入ろうよっっ!!」
「綾、珍しくハイテンションだな(笑)」
輝が笑った。
「もー疲れたからさー、早く入りたいなって・・・みんな、券買ってくるから250円集めますよー」
「おー、さんきゅ」
「ありがと」
「よろしく」
「はい」
「どもー」
最後に自分の250円をてのひらにちゃりんと落とした。
「よし、と!」
券売機に走って向かい、すぐさま6枚券を買った。
「はーい、買ってきたよっ」
「さすが綾!安定の速さ(笑)」
「安定のマイリス、みたいな?(笑)」
「何それー」
「あー多分ネット厨にしか分からない(笑)」
「ま、いいから早く入ろうぜ!」
「おーう!」
勢いよくロッカールームに飛び込み、みんな3分くらいで着替えた。
さすがに女子は時間がかかった。
髪を結んだりとか、着替えたりとか、周りに気を遣うからだ。
「ふー、着替え終わった・・・」
私は、ビキニとは少し違う、セパレートが短くなったような水着・・・?
で、寿々はサロペットの様な水着。
亜衣はこれまた自信ありげにビキニ。
「・・・・胸ないくせに・・・」
私がぼそっと言うと、
「何ようもう!」
と、ぽかぽかと叩いてきた。
「ほら醜い争いしないで早く!男子が待ってるよ」
「あ、はーい」
「もう!!綾ってば!!」
追いかけられながら外に飛び出すと、入口のすぐ横に男子が立っていてびっくりした。
「あ、ごめんねお待たせし・・・・・・て・・・・」
・・・・・
変態!!!!!!!!
「「「ちょっとどこ見てんの!?!?!」」」
私たち女子は、自分の体に投げかけられる異様な視線に違和感を感じたのか、ハモッて抗議した。
「「「いや・・・」」」
「もう!!行くよ!?」
すると、輝が私の手をグイッと引っ張った。
「なんで1人で行こうとするんだよ・・・」
「だって変な目で見るから!!」
「彼女が可愛いと思うの当たり前だろ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
私は恥ずかしさのあまり涙目になっていた。
「・・・・可愛いから見てたんだよ!悪いか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・え・・ぇぇ・・・?」
目に溜めていた涙がとうとう零れてしまった。
「・・・何だよお前、最近よく泣くな(笑)」
「だってーっ・・・・」
輝は私の涙をぐしっと拭って、
「ほら、行くぞ」
と、私の腕を強引に引いた。
「・・・・・・うん!」
前を見ると、亜衣たちはもう真夏の太陽の下にいた。
***
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