「・・・・・つ・・・かれた・・・」
今は3時半。
5時間ぶっとおしの勉強には、先生側のこちらもかなり疲れる。
「・・・・・お昼ごはん・・・って食べたっけ?」
「食べてない」
「・・・・作る?買う?食べに行く?」
「・・・・ファミレスなんかねーよ・・・」
「ハンバーガーでいいって・・・」
「そうだね・・・よし行こうか」
「歩くの・・・?」
「拓くん運動神経いいじゃん!!ってか輝だっていいし・・・」
「・・・ここにいる男子は全員運動神経抜群だって・・・」
「なら尚更行きましょうよ・・・おなかすいてないの?」
「「「「「すいてる!!!」」」」」
・・・・・空いてるんじゃん。
***
「・・・・・・うっまー・・・・」
私たちは6人なんていう大人数でシート席を占領しながら、3時半というおやつ時間にやっと昼ごはんを食べていた。
「はぁー・・・・このまま駅とか行って遊ばない~・・?」
「昨日の今日でまた行くの?金無いわ」
「そうそう!お金のある拓くんのお家や女の子たちと違って俺らには金無いの」
「俺だって残金500円だよ」
拓くんがけろりとして言った。
「・・・・ま、今日遊びに行くっていうのは無しだね・・・てか明日学校なんだし」
「そうだね!んじゃあ綾んちで思いっきり遊ぶか!」
「まぁ・・・それで済むならうちはいくらでも貸しますけど」
「貸すの!?」
「いや、遊び場としてならどうぞって意味だよ?」
「「その言葉!!」」
・・・・だから何なの?それ。
「・・・・・しかと受け取った、・・・でしょ」
「その通り」
「え、それなの!?」
「ま、早く食べて早く帰って綾んちでのんびりしよーぜ」
「「「「だな!!」」」」
・・・・まったく・・・
単純な奴らだ
***
「疲れたああぁ~・・・・」
「もう教科書なんて見たくない!!!」
「・・・・綾ちゃん・・・寝ていい・・・?」
「ベッドは貸せんぞ」
「誰がベッド貸せなんて言った!!」
「だめだよ拓!綾ちゃんの初夜奪っちゃ・・・・きゃっ☆」
・・・・はじめて優斗を殺したくなった。
「・・・彼氏である俺が許さん」
「うわぁぁぁ輝こええええええええっっっ!!!!」
・・・・いい気味だな!うん!
後ろからあの二人の悲鳴が聞こえたが無視し、上にいる寿々と亜衣のところに行った。
がちゃ、とドアを開けると何故か勝手に冷房がついていた。
「ふ――――――涼しい涼しい・・・」
「カイテキカイテキ・・・・あっ綾ぁいらっさーい・・・」
「何勝手につけてんのよ・・・・・外で水でもかぶってくればいいじゃない」
「うーん?・・・・綾じゃあるまいしお断りするよ・・・」
「水かけたのお前でしょっ!?」
「さー・・・?わっかんないなぁー・・・」
・・・・無駄だ。何話してもきっとたぶん無駄だ。
「・・・・・下のクーラーもつけてくる」
今回一言もしゃべらなかった寿々を見ると、クーラーの下で漫画を読んでいた。
下に行くと、あの3人の論争は治まっていた。
「綾、あいつら何してんの?」
「私の部屋でクーラー勝手につけてくつろいでた」
「え、お前の部屋あるの!?」
「・・・ないわけないでしょ・・・」
「え!?行きたい行きたい!」
「だめだぞ拓!彼女の部屋は彼氏限定なんだ――――いってっ!!!!!」
「彼氏限定なんて言ってねーじゃねーか!いつの話だそんなもん」
・・・・いつかはいるのか?
「・・・いや別に入ってもいいけど・・・狭いよ?下にいた方がいいと思うけど・・・」
「あー別に狭いとかいい、いい!てか2人入ってる時点で結構広いんじゃん」
「・・・拓くんって私の部屋なんか入ったことないよね・・・?」
「ないに決まってるでしょ~殺されるから変なこと言わないで綾ちゃん」
「あ、ごめんごめん!じゃあ・・・行きますか?」
「「「おう!」」」
・・・・・・・・・・暑苦しい!
「寿々、亜衣――?入るよー?」
すると、中でがたたっ、とあわてたような変な音がした。
「・・・・・・・・今なんかやってんじゃないの?着替えてるとか」
「輝って人んちで着替える?お泊まり以外の時に」
「・・・着替えない」
「だよね」
「・・・見てくれば?」
優斗がドアを指差して言った。
「・・・うん、ごめんちょっと待っててね」
ドアを少し開けて輝たちに見えないようにするりと入ると、ドアを閉める前に驚きすぎて閉めるのを忘れてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なに・・・・・・・やってるの・・・・・?」
そう言ったところでドアの外がざわめいたので、ばたんと閉めた。
「やっ、そのこれはその、出来心でそのっ、はははははは――――――――」
・・・・状況を説明しよう。
クーラーがついている。
箪笥の引き出しがすべてあいている。
服なども無残に放り出されている。
何故か机の上の参考書が開かれている――――――
「・・・・・・・・・・・・・・・・直せ。全て直せ。1分以内に元通りにしろ」
「ひゃいいいいっ!!!!!!!!!!!!!!」
亜衣は私の気迫が今までにない事に気付いたのか、いきなり直立して部屋の中を駆け廻り始めた。
寿々はというと、ベッドに寝転んで漫画を読んでいた。
・・・・いいなぁ・・・・気楽だなぁ・・・(失礼)
「片付け終わりましたっっ!!!!」
「・・・・本当に?」
箪笥引き出しを1段1段開けて確認すると、いつの間にか洋服はきちんとたたまれており、
机の上の参考書は本棚にぴったり収まっていた。
「じゃあ輝たち入れるよ?」
「え、来るの?ここに?」
すると寿々はどかん、と音を立ててベッドからわざと転がり落ち、本棚まで行って漫画を戻してきた。
「・・・そんないいかっこしなくてもいいと思う――――」
「うるさいっ!!!」
・・・はいはい。
私がドアのほうに歩いて行ってドアを開けて、
「お待たせしましたー・・・!」
というと、
「「「おー」」」
という返答が返ってきた。
「おおーう、なるほどね、これが綾ちゃんの部屋ねー」
「なんでこんなかたづいてんの?」
・・・・それは亜衣が今まで以上に片づけたからなんだけど・・・
「彼女の部屋なんて入ったことない」
「え?輝って綾が初カノじゃないの?!」
亜衣がすかさず聞いた。
「・・・・・・う・・ん」
・・・・なんだ、今の間は
「・・・・・まさか・・・他にも付き合ってる子いたの?」
私が輝の顔を覗き込んで聞くと、珍しく弱ったな、というような表情【かお】をした。
「・・・・・隠してるのもいい気しねぇから言うけど・・・・一方的に付き合わされてたことはある」
「・・・・一方的に付き合わされてた??」
「俺は付き合ってるって思ってなかったんだけど、あっちは付き合ってるって思ってたらしくて・・・・って感じ」
「・・・それいつの話?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・最近なの?」
「・・・・・・・・・・・・あぁ」
・・・・・・・!?
「ちょっと!いつ!?」
「・・・・・・・・・・・1か月前」
・・・・・・・・・・・・・えええええええええええええええええええええええええ!?
「・・・告白されたんだよ。あっちが告白してきたの。そしたら、あんま話したことない奴だったから、分かんないって言って断ったつもりだったんだけど、あっちにはOKって聞こえたらしくて」
「・・・・・だれ?!」
「・・・・・言っていいのかなこれ・・・」
「もう!!輝ってどんな女の子にも優しいからそうなるんだよっ!!!!!」
「・・・・星野。星野、梨奈」
・・・・・・星野さんが!?
「・・・え?星野さんと輝って接点あったの?」
「いや・・、なんかね、幼稚園だかが一緒だったらしくて、幼稚園の時は言えなかったからとか何とかでさ」
「・・・・・・星野さんが・・・」
「ごめんな、話してなくて」
・・・・・・・・・・・・そんなカオされたら、許さないなんて言えないじゃん!!
「・・・・・うん」
輝が笑って、私の頭をなでた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅー―――――――――っ!!!!ばっかじゃねーのお前ら!勝手に修羅場たててんじゃねーよもう・・・」
「・・・・えっ!?あ、悪い優斗」
輝が笑いながら言った。
「でも星野さんが、輝のこと好きだったなんて意外だねぇ」
「・・・・・・・・・輝・・・」
「ん?」
「・・・・あ、いや何でもない・・・!」
輝は私を見て不思議そうな顔をしたが、すぐに思い直したように優斗に向き直った。
「・・・寿々、亜衣」
「ん?」
「・・・星野さん、可哀想だと思わない・・・?」
・・・その場の空気が凍りついたように思えた。
クーラーの空気が異様に寒く感じる。
「・・・・何、言ってんの?綾ちゃん」
「だって、星野さんは何もしてないのに・・・・一方的に晋太郎にいじめられてるんだよ!?それを誰も助けようとしないって・・・私もだけど・・」
「・・・・・・・綾ちゃん、梨奈が晋太郎にいじめられてるわけ――――・・・・・・・・・・・・・・・・・と、これは言えないか・・・」
「・・・・?・・・!そういえば拓くん、星野さんと接点あったの・・・?・・・・あ、無理にとは言わないから大丈夫、ごめんなさい」
「・・・いいよ。この際だから話す。・・・誰にも言わないって、約束してくれる?・・・みんな」
「・・・約束する」
寿々が一番にこたえて、それに皆続いた。
「するよ、・・・俺たち友達だろ?」
「そうだよ」
「・・・する」
「うん、絶対言わないよ・・」
拓くんは皆の答えを確認したところで、息を吸って口を開いた。
「・・・・・・・・あのね、梨奈と俺は幼馴染なの」
・・・・・・えっ、というような小さなざわめきが起こった。
「・・・・たまに会ったりしてたんだけど、その時にあいつの相談なんかのったりしててさ」
「そんときに、たまにいじめられてるって相談が紛れ込んできてさ」
「で、相談に乗るわけなんだけど・・・それが、八木にばっかり原因があるってわけじゃないんだよ」
「・・・え?どういうこと?」
寿々が、拓くんを覗き込んで聞いた。
「・・・・なんか、こう・・・終わりがないっていうか、エンドレスっていうかさ・・・
八木がいじめるじゃん、梨奈を。そしたら、梨奈は隠れてやり返すわけ。逆いじめってやつ?
たとえば、八木の上履きに水入れたりとか、八木の持ち物隠したりとか」
「・・・・・・え、じゃあ・・・」
「そう。八木ばっかり悪いってわけじゃないんだよ。そしたら八木だって刺激されるにきまってるじゃん?
だから、それはやめた方がいいって言ったんだけど・・・今も時々やってるみたいなんだよね。
て言うか、やり返されて相手にする八木も八木で子供だけど、これって・・・どっちもどっちって言うんじゃない?・・どっちかって言うとさ」
・・・・・・・そうなんだ。そうだったんだ・・・・。
「・・・・じゃあ、星野さんをかばったって・・・八木にも言い分があるから割って入るのはやめたほうがいい、って・・・なる、よね?」
亜衣がぽそりといった。
「そうだね。下手に刺激すると、今度は綾ちゃんがあぶない」
「・・・でも、そしたら星野さんは・・・!」
「綾ちゃん」
「・・・・・・ごめん、なさい・・・」
「・・・いいんだよ、いいんだけど・・・これは梨奈に分からせないと駄目な問題なんだ」
「・・・・・・え?」
「あいつは、自分で分からないと絶対に分からないんだ。昔からそうだった。俺が何度やめろっていっても、耳に入れない奴なんだ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・だから、かばわないほうがいい。逆に、放って置くべきことなんだよ」
「・・・・・・・・・・拓は知らないかも知んないけど、綾は人の倍正義感強いんだよ」
「・・・・え?・・・輝?」
「お前ってさ、嫌われてる奴とも平気で仲良くしてただろ?小学校の時。・・・なんで?」
「・・なんでって言われると難しいけど・・・・・・なんか、見てて気になるから・・・かな?」
「な?正義感って言ったら違うかもしんないけど、こいつ結構気にする奴なんだよ」
「・・・・・・・綾ちゃん、でもこのことだけは目をつぶってほしい。首を突っ込まないでほしいんだ」
「・・・・・・・拓くん」
「これは、梨奈の問題だから。・・・俺も今、必死で突き放してんだ。・・・突き放したくはないけど」
・・・・・そうなんだ。
・・・これは、二人の問題なんだ。
・・・口に出しちゃいけないことだけど・・・。
「・・・・分かった。口出してごめんなさい。・・・・」
「あ、ううん、綾ちゃんは悪くないよ、むしろ気にしてくれてありがとう」
「・・・・いや、私は何もしてないから・・・」
がたっ。
・・・・何の音?
「・・・・お母さん帰ってきたんじゃない?綾」
「・・・あ!そうかも!・・・・・皆いて平気かな・・・」
「平気だと思うけど、綾のお父さんとお母さんに彼氏がばれかねない!!!」
「あ、大丈夫訊きだされて言っちゃったから…」
「え?」
輝が驚いて訊き返してきた。
「ごめんね、輝!!お父さんがしつこく聞いてきたから言っちゃって・・・・・・でも怒ってなかったから大丈夫・・・・だ、とおも・・う!」
「・・・・本当に・・・?」
「うん!・・・多分平気!!!ちょっと皆、一緒に降りてきてくれる・・?」
「うん」
寿々は真っ先にすっくと立って、それに亜衣が続いた。
後ろの方で拓と優斗が輝を前に押しやっていて、
「なんでだよ!?」
と輝が言って、
「娘さんの彼氏が先頭だろ・・・!!」
「何これカップル順?」
「どうでもいいよ・・・」
「しっ!」
私は神経質に人差し指を唇にあてた。
するとお母さんに気付かれてしまい、
「あら?綾いたの」
「あ、お帰りお母さん・・・お父さんは?」
「お風呂。・・・・後ろの子たちは?」
「えーっと・・・今日なんか家に来た・・・亜衣と寿々と輝と優斗と拓くん」
「あら、大勢来たのね・・・・・・・って輝くんって・・・・」
「あ、えーっと・・・はい、俺です」
「あー!あなたが綾の彼氏さん!?」
「・・・・・・・・・・はい、そう、です・・・」
輝が顔を赤らめた。
「綾、いい男じゃない!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やめてほしい・・・・
「・・・・そうでしょ!!」
開き直ってやったが・・・・どう来るだろうか?
うちのお母さんの性格は、本当に謎だ。
「お父さんにばれたらやばくない?」
「・・・・え?お母さん、私お父さんに言ったよ?」
「・・・お父さんね、本気にしてなかったのよ・・・私も本当だって言ったんだけど、あれ完全に現実逃避・・・・信じてないみたい」
「・・・・・・・・・こ、輝・・・・どうする・・・?」
「帰ろうか」
「えっ!?」
「いやだって・・・お父さんに怒られんの綾か俺かだろ?俺ならいいけど、綾だったら嫌だし」
「・・・・そんなこといいよ・・・!お父さんに怒られるなんて日常茶飯事に近いから!!」
「え!?良くないだろ!!とりあえず・・・」
「泊まっていったら??」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?・・・お母さん?」
「このお家に綾が男の子連れてくるなんて、初めてなの!!・・・あ、いたっけ・・・・まぁいいわ!あなたたちさえよければ泊まっていって!」
振りかえると、皆が全員私を見ていた。
「・・・・えーっと・・・ほんと、良かったらだし・・・今日日曜だから、・・・ね?」
「あら、綾・・・明日お休みよ?」
「・・・・・え?」
「綾しらなかったの?明日祝日だよ」
「・・・え?マジで?」
「だから来たんじゃん!」
「・・・・・・・そうだったんだ!!!」
「・・・で、どうする?・・・・・・私は泊まりたいな!!!」
亜衣、相変わらず遠慮がない。・・・・まぁそれがいいとこって言ったっていいんだけど。
「私はいいよ?多少雑魚寝でいいなら・・・」
「えーっと・・・女子の家に泊まるって言って親が勘弁すると思う?」
「俺は大丈夫」
「あ、俺も平気」
優斗と輝は一体何なんだろう?
「・・・・・優斗と輝が一緒って言えば平気かな」
「・・・て言うか、荷物どうする?・・・とりにいく?」
「あ、荷物ならおつかいついでにとってきてくれない?ほら、まだ4時半だし!」
「・・・・・あ、そうなの?・・・・・・てか、泊まる?」
「ああ、泊まるよ」
全員が泊まるのか・・・
「うん、・・・楽しそうだね!んじゃあ取りに行こうか?」
「「うん!!」」
「「「おうっ」」」
・・・・・こんなに楽しい3日があっていいのだろうか。
ほんと、めちゃくちゃで楽しい日だ、・・・・今日は。
***
次回お泊まり会編!!!
ここまでどうしても来たくて長くなっちゃいました(-∀-`;)
すいません!
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※決してアダルトではありません※