「・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・」
・・・・・・朝?
顔を上げると、いつも横にある窓が前にあった。
・・というか、布団すらかけずに寝てしまったらしい。寒さに体が反応した。
・・・あれ?・・・・・ごはん食べたっけ・・・・?
すると、おなかがぐぅぅぅ~、と鳴った。
「・・・あ、そうだっ・・・!帰ってきてすぐ寝ちゃって・・・!」
とにかく、おなかがすいてめまいと吐き気がする。朝ごはんに一刻も早くありつけたい。
ふらふらと立ちあがってよろよろと階段を降りた。
「おかあさ~ん!!朝ごはんできてるー?」
・・・・・・・・・・・・・・?
物音がしない・・・
仕事はいつものことだけど、日曜日は必ずお母さんがいる。
「・・・・・おかあさーん!?」
いない?
・・・・何かあったっけか・・・?今日・・・
「・・・あっ!!!!今日ってか昨日はお母さんたち帰ってこないって言ってた・・・!!!」
忘れてた・・・。だから、起きた時に布団も何もかかってなかったんだ。
「やっばぁぁ~!!!ちょ、コンビニ行くにもこのかっこは・・・」
服は別によかったのだが、お風呂には入っていないし歯磨きもしていないしで、とてつもなく顔色が悪かった。
「・・・・とりあえず軽く食べて、お風呂入って、おひるごはん買いに行こう・・・」
時計を見てみたら、10時半。お昼ごはんに近いので、朝ごはんをたくさん食べるのはやめにすることにした。
「はぁ~・・・・」
またぐぅぅ、と鳴ったお腹をさすりながら、重い腰を持ち上げて階段を上った。
「・・・・・あー・・・携帯見てなかったなぁ・・・」
無造作にバッグを探って携帯を取り出すと、メールが一件来ていた。
「んー・・・誰だ・・・?」
まさかの正夢?まさか亜衣!?冗談じゃなぁぁい!
・・・でも、今朝だし・・・・・!!!
恐る恐るメールボックスを開いて送信元を見てみると、目が飛び出そうになった。
送信元は『輝』。受信時刻は、昨日の8時・・・・・・。
「やっばぁっ!!!」
どうしようどうしよう、と思ってメールを見た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私、世界一馬鹿だ。
『今日は楽しかったな!!
なんか亜衣が、
明日お前んちに行くことになってるから、
綾にOKもらったら一緒に行く?
って言ってきたんだが・・・
お前はいいの?
返信来なかったら無理やり行くのでよろしく!
じゃあおやすみ』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっばあああああっ!!
そ、そそそうじ・・・はお母さんがしてくれたからいい!私の部屋も片付けてくれてた!
・・・・・・・・・・・・・・・・・お、お風呂おおおおおっ!!!
何時に来るのか書きなさいよおおおっ!!
・・・・・・・
***
「・・・・・ふぁー・・・」
・・・よくやったぞ私。
あわててから3分でここまでやるとは・・・
ま、12時までに全部済ませれば、余裕で迎えられるだろ―――――
ピンポーン。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
ピンポーン。ピンポンピンポン。
・・・・・・・・・・・・・・・ひゃあああああああああああっ!?!?!?!
あわてて携帯をとって、亜衣に電話をかけた。
「・・・・・・・も、もしもし亜衣!?ちょ、何!?早くない!?今何人で来てるのよ!?!」
「えー?昨日のメンバーだよ☆綾のぞいてね!」
・・・・・・あいた口がふさがらない。
「・・・・・・」
「なんか綾の声みょーに反響してない?」
「・・・・・・ごめん・・・・今風呂入ってるんだ・・・だから勘弁して・・・」
「・・・・・・・・・・まじで!?」
・・・・あ。私馬鹿だ。大馬鹿だ。
「・・・・・・ブチッ」
切ってしまった・・・
どうしよう!!
と、とりあえずもう頭は洗ったし・・・!!
急いでいたので髪の水滴を搾り取って、体にタオルを巻きつけて洗面所を出て、2階へ上がった。
「と、とりあえずの服でいいや・・・!」
下着を着て、簡単にマキシスカートを被り、上にパーカーをはおって、髪をとかして・・・
「は、歯磨きっ!!」
さすがに口が臭いまま好きな人や友達に会うなんて嫌だ。絶対に嫌だ。
高速で、かつ正確に歯磨きをし、マウスウォッシュで流して鏡を見直した。
「・・・・よし・・!」
肩にバスタオルが掛かっているのは勘弁してもらおう。
急いで玄関にダッシュして、鍵をガチャリと開けた。
「おまたせー・・・・・・・・・・ってきゃああああっ!?!?!?!」
いきなり真正面から水をかけられた。
「ちょ、何するの!?だ、誰!?」
「はーい、夏限定!水も滴るいい女な綾ー☆」
「・・・・・・・・・はっ!?」
どうやったら人の家のホースを勝手に使うなんて厚かましい事が出来るのだろう。
「はよ、綾ちゃん!」
拓くんが、相変わらず軽そうな笑顔で私に向かってにかりと笑った。
「・・・・お、おはよう・・・?」
「お前濡れてんの気にしないの?」
「・・・え?あ、優斗・・・おはよう・・・」
「・・・彼氏にはおはよう言わないんだ?おやすみも返さなかったのに」
少々ふてくされ気味の低い声が聞こえた。
「・・・ひゃっ!!ご、ごめんなさい!!」
「いや別にいいんだけどさ・・・てかお前んち本当によかったの?」
「あ、いいのいいの・・・!今日両親いないし!・・・って寿々は?」
「ああ、さすがに押し掛けるのは悪いって言って、コンビニ行ってるよー☆」
「・・・・・・・・拓くん・・、寿々は可愛いですか?」
「・・・・・可愛いよ?」
「うわあああっ拓くんがそんなこと言うなんて意外っっ!!!」
「今の寿々に聞かせたかったぁぁぁっ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・亜衣」
「なーにー?」
「・・・・お前のことを私が家に入れると思うか?」
「思う!」
「・・・輝!入れなくていいよね!」
「いんじゃね?」
「ちょっと輝!!彼女ちゃんをエロ可愛くしてあげたのに感謝の言葉はないんですか!?」
「・・・はっ!?濡らしただけでしょ――――」
「そういやお前寒くないのか?」
「・・・え?あ、大丈夫・・!てかはやく乾かさなきゃ・・!あ、皆上がって!」
「はーい☆おっじゃましまーす!」
そそくさと入ろうとする亜衣の襟ぐりをぐいっと掴んで、ドアの外にぽいっと投げ出した。
「・・・・綾さん?何の真似かな!」
私はにっこりと笑って、
「自分で考えろ」
と言ってばたん、とドアを閉めて鍵をかけた。
***
「あ、えーっと・・・リビングでいいのかな?」
「あー平気平気!超居心地いいねコレ!」
拓くんは、私の家のソファでごろりと寝転がり、涼しさを満喫していた。
「それはそーと、俺ら・・・ってここにあがらせてもらってる人全員ね、勉強道具持ってきてんのよ」
「・・え?なんで?みんな私より頭いいじゃん?」
「「何を言いますか!!!」」
何やら、話を聞いていたらしき優斗まで乗り込んできた。
そして、正座をして床に座っていた私に顔を近づけて、
「お前、中1のとき1年ずっと3位内だったじゃん!!!」
「・・・・・・・えっ?3位内・・・?何の話?」
「「テストだよ!!!」」
「・・・・・・・・・・・・あー・・・・・・期末と中間ね・・・」
おもわずため息が出た。
テストで3位内なんて、好きでとってるわけじゃないし・・・・・。
「「「ってわけで、勉強教えてください!!!」」」
・・・・・・・・輝まで!!
・・・・いや待てよ?この人たち、20位内入ってたっけ・・・?
「・・・・ちょっと訊くけど・・・・キミ達、中1の3学期の期末・・・・何位だったんだい?」
「・・・・170人中・・・・80位!」
・・・・・・優斗って・・・・小学校の時こんなに馬鹿だったっけ?
「えーっと・・・拓くんは・・?」
「30位!」
いや別にそれ普通じゃない?
・・・でも良いとは言えないか・・・?
「ええっと・・・輝って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってえ?」
輝って・・・・今更だけど、私の上か下に必ずいた気がする・・・
「1位」
・・・・・・・・・・・・私必要ないじゃん!!!
「私必要ないじゃん!!!」
「い~やぁ?だって輝が――――――」
すかさず輝が拓くんの口をもがりと塞いだ。
「輝が綾と勉強したいって言ったから、な!」
・・・・・・優斗・・・・・・・・
拓くんや輝に負けず劣らずSだな・・・?
「・・・・どうしたの綾ちゃん?恥ずかしい?それとも輝が可愛くて声が出ない?」
「・・・え?いや別に私だって輝と勉強してみたいなって思ってたし―――」
「「その言葉!!!!!!」」
・・・・・・・・・・・・何?
誰・・・?
・・・・・亜衣と寿々?
「・・・・・・寿々、亜衣は私の家に入れないって法律で決まったんですよ」
「あっそうなんだ!というより!さっきの言葉本当だね?」
「・・・さっきの言葉?」
「綾はさっきの言葉ももう忘れたのか!?」
「うん忘れたけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・『私だって輝と勉強してみたいなって思ってた』だよ!☆」
「・・・・・・・・・・・・・・まぁ言いましたけど」
「うん、じゃあこれから」
その時、亜衣がどこから持ってきたのかホワイトボードをガラガラと運んできた。
「「綾先生のテスト対策教室開こ――――――――――ぅ!」」
「・・・・・・・は・・・・・?」
「おおいいねいいね!やろうやろう!ってわけで綾ちゃんも勉強道具勉強道具!」
「いいな!よしやろう」
「人んちだとやる気になるな・・・」
「学年一位が何言ってんのよ!」
「ではあたしは優斗の隣で」
・・・・・・・・やる気だ。
ま・・・いいか。
・・・そんなこんなで、めちゃくちゃになりかねない一日が始まって――――しまった。
***
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