母には仲の良い男性の親戚Bさんがいます。 

 Bさんは高齢者ですが、いわゆるシュッとしたイケメン。 

 さぞかし若い頃はモテただろうし、え?50代には見えない!って程、今も若いです。 


 母の見舞いにもちょいちょい来てくれて、母もとても喜びます。

  遠くからわざわざ来てくれるので、私も毎回案内し、帰りはお茶飲んだり、一杯付き合ったりしてました。


 ある時、「粥子ちゃんは偉いな!」と、頭をポンポンされたんです。 

 誰にやられたって嫌だけど、血の繋がった親戚なのに、なぜかゾッとするほど悪寒がして。


 その後、会う度に

「粥ママって年金どれくらい貰ってるの?」 

「俺、金無いんだ」 

「生活大変なんだ」 

「今度一緒に○○に行こうよ!」 

「今度一緒に○○食べようよ!」と、お金の話や、母の面会よりも私と会うことの方が目的になっていました。


  粥子は二度の顔面神経麻痺で、高齢者であろうと、男性の気を引くような容姿ではありません。 

 私に興味があるとかは、全くあり得ないのです。

 ましてや、娘のような歳の私に生活が苦しいなどと打ち明けてきたりして。 

 これって、母が死んだら「金貸して」とか、言い出すのかな?
 その前に私を手懐けておこうとか。

 あー、やだやだ。また懐疑的になってる。 


 私は母の携帯から、Bさんとのやり取りを拾いました。

 あれ?一時期まで頻繁に連絡取っていたのが、倒れる一年前からぱたりと途絶えてる。 

 何があったんだろう。
 うーん、考えすぎかな? 


 でも、その1ヶ月後。 

 Bさんはまた面会に来てくれました。帰り道飯でも食おうかと言い出して。

 雨が降ってました。 

 Bさんはなぜか自分の傘をたたみ、私の傘の中に入ってきて、柄を持つ私の手を、上から握ってきたのです。

 私は衝動的に傘から出て逃げました。


 気持ち悪い。
 血縁だけに、尚更気持ち悪い。

 何がしたいの? 


 それ以来会うのをやめました。

 Bさんは一人で面会に行くようになりましたが、ある時母に聞かれたのです。 

「どうしてBさんと会ってあげないの?」

「Bさんが何か言ったの?」 

「寂しそうだったよ」 

 母に何を話したんだろう? 

 病人に「粥子ちゃんが会ってくれないんだ」なんて、心配かけるような話、普通しないでしょ? 

 無神経にも程がある! 


 私の知らないところで、呆けた母に何を吹き込んでいるのかと不安になりました。

 ドラマとかで良くあるけど、こうやって遺言とか書かせちゃうのかな?