相変わらず不貞腐れて食事をとらない母の為に、病院から、もうお菓子でも何でも良いので食べそうなものを持ってきて下さいと言われました。

 和菓子店で紫陽花の練りきりを買い、それと孫の幼い頃の写真を添えて、面会は出来ずに渡して帰ったのですが、きっとこれも投げちゃうんだろうな。 


 その後、母はやはり転院する事になりました。 

 リハビリよりも精神面の治療が必要だと。 

 要するに『暴れるから、うちでは面倒は見られない』そうです。他の患者さんの迷惑になるのですから、仕方がないのです。 

 相談員さんが転院先を探してくれました。 

 精神病院って、また拘束されるの?変な薬飲まされるの?廃人になるって本当??色んなネットの情報を読み漁り不安になりました。 

 取り敢えず私一人で、二件の病院に面談に行ったのですが、一件目では、個室の写真を見せられました。映画で観る刑務所みたいな、殺風景で剥き出しのトイレとベッドだけの部屋。格子のついた窓。重厚なドアの小さな覗き窓も。 

 こんな怖い部屋に一人で過ごさせるの?


 もう一件は、先生からの説明を先に聞きました。  

「うちはもう回復する見込みのない患者さんが、お看取りまで過ごす療養型ですよ?倒れて二ヶ月ではまだ早いんじゃないですか?」

 急性期とか療養型とか、そんな事も全然知らなかった。お看取りの話とか、そんなの論外だし。 


 結局悩みに悩んで、一件目に決めました。

 病院からの説明を受け、万が一の際には心臓マッサージ等の救命行為はしないとの項目に、同意のサインをしなければなりません。高齢者への心臓マッサージは胸の骨が折れてしまうそうです。

 生命維持等の装置も.一度スイッチを入れたら、費用が払えなくなっても、どんな事情であれそれを止めると殺人行為になる。

 サインをしたら、なんだか私が母の息の根を止めてしまうみたいで暫くは躊躇ってしまいました。 

 こんなとき、兄弟がいたらなぁと思います。