ドレッドの男 | ピクニック

ドレッドの男

美容室で働いていた頃、ドレッドの男と付き合い出した。
彼は同じ年で、エクステンションのドレッドヘアに、グッチのサングラスをしていて、
まるでレニー・クラビッツのようだった。
サングラスを外したら、マッチのようなかわいい顔をしていた。

そんな彼と、彼の寮で生活していた。
彼と、一緒に二人で暮らす為にお金を溜め出した。
でも金遣いの荒い彼は、人に奢らせるのが上手かった。
私もどれだけお金を出す羽目になったか・・・
『ま、いっか』という気にさせるのが上手いのだ。

そんな彼が、ドレッドを修復しに池袋の方に出掛けた。
一緒に着いていった。
数時間見知らぬ土地のカフェで待たされた。
その帰り道、何かで喧嘩をした。
先に帰ってきた私は、寮の鍵は持ってなかったけど、
他の住人に開けてもらい、中で待っていた。
すると帰ってきた彼と大げんかすることになった。
手を出された。
いわゆる取っ組み合いの喧嘩になったのだ!

どう考えても負ける。
私はとっさに修復したてのドレッドを思いっきり掴んだ。
痛がる彼。
こっちも痛い。
そして思いっきりねじってやった。
すると、一束・・・
地肌で言うと2センチ×2センチくらい、ごっそり根元から抜けた。
しかも、一番前。
中側ならわからなかったのに、よりによって一番前が禿げた。
しかも修復して3~4万払って帰ってきた時に。

その場でボウズにした。
3~4万は数時間の夢だった。

しかしその時、
そこから始まる悪夢には、まだ気が付いていなかった。