Ameblo版『天使の翼』(angelwings2015のブログ)

Ameblo版『天使の翼』(angelwings2015のブログ)

Ameblo版『天使の翼』は、Ownd版『天使の翼』の姉妹サイトとして、SF小説『天使の翼』・エッセイ集『ハッシュタグ狂詩曲(#Rhapsody)』・フォトエッセイ『天空のエクリチュール』等を発表しています。

 政治とは、より多くの情報を収集し、隠匿して、その情報のごく一部を、特定の人物、集団に発信・誘導して、所期の目的を達成することである。その際、最も大切なことは、説得力である。――人は、ひとたび説得を受け入れると、そのことに対して盲目となって突進する。

                                 (第二王朝初期の貴族政治家)

 

 

 黄金色の船体が、一瞬の輝きを放って発ワープ・ステーションのリングを通過し、ワーム・ホールを無窮の彼方へと疾駆しだしてから、船内時間で既に三日も経ったろうか。
 いつものように、わたしは、超空間航法の間もさして睡魔に襲われるようなこともなく、物思いに耽っていたけれど、作詞作曲にいそしんでいた訳では、もちろんない。
 ――余りに考えることが多過ぎ、心の整理が追いつかない……もっとも、今回は、そのための時間は、十分にありそうだった。
 サンス大公国の領域直前まで、55、000光年以上を、ノンストップで飛ぶのだ!
 わたしとシャルルは、事件の後、本国へ一時帰国する大使フラージュ伯爵のスペース・クルーザーに便乗していた。不本意ながら、彼の前に膝を屈して、請願したのだ。
 伯爵は、本心では、脈がないと思っていたに違いないわたしの低姿勢に、満面の笑みを浮かべた――まったく!

 でも、これで、サンスへの越境が何の問題もなくなった。
 わたしの旅は、天使の翼という重大な任務を帯びつつも、常に家族の問題をはらみながら、それでいて、それが、最終的なサンス入国へと結び付いてきた……
 わたしの頭の中で、辺境にケインという名のギターの使い手がいるという話――その顔と、すっかりパトロン気取りのきざな伯爵の顔が、振り子のように交錯する……もちろん、精神的な厚みの全く感じられない、身分を鼻にかけた、それでいて、悪知恵だけは働きそうな……おまけに好色な伯爵は、大嫌いだ。どうやって誘いをかわそうか、と考えると、心底憂鬱になる……
 ……しかし、今は、そのことよりも――
 今回の事件には、誰にも予想すらできなかった結末――最後にもう一つのエンディングが待っていたことから話さなくてはなるまい。
 宰相スカルラッティは、暗殺された。
 あの事件の喧騒のさなか、それは、一瞬の出来事だったという。
 陰鬱な聖堂を出て、兵員輸送エアカーに乗せようという、護送途中のことだった。音もなく飛んできたニードル・ガンの一撃で心臓を貫かれたスカルラッティは、その刹那目を剥いて、そのままあっけなく事切れた。……後々のことを考えるなら、スカルラッティにとっては、かえってその方が幸せだったと言うべきか。

 武器が武器なだけに――静音性にすぐれ、ありふれていて、しかも、危険――、何の証拠もなく、唯一の手掛かりとして、現場近くを走り去る髪の長い女――それとも男か――の後姿が目撃されている……。なんとも頼りないことだ。

 

 

 

 

via 天使の翼
Your own website,
Ameba Ownd

 

 その後すぐ、科学捜査班の一団が、見たこともない程大量の機材と共に、この『天国』への控えの間に雪崩のごとく入室してきた。
 そもそも、戦艦の搭乗人員は千人単位だから、既に、このスカルラッティの離宮は、虫一匹逃さぬ配置で制圧されているのだろう。この前代未聞のスキャンダルは、スキャンダルにはならずに終わる。シャルルに聞かなくとも分かるけれど、おそらく公式には、全く別の形で――たとえば、スカルラッティの急病による引退――発表されるはずだ。帝国宰相がサイコ・キラーであったなどと認めることは、政治的に不可能だ……
 捜査官の一人が、『天国』のコンソールを分解し、秘められた暗号を解読した。ガラス張りの壁面が、恐ろしく重そうなのにもかかわらず、スルスルとスムーズに天井の溝の中へとずり上がっていき、今や、『天国』は、崩壊への助走を滑り出した――『地獄』の実相を白日の下にさらすために……
 わたしは、シャルルの視線を感じて振り返った。
 暗黙の問いかけ――
 ……
 しばしの後、わたしは、シャルルの顔をじっと見て、首を横に振った。
 シャルルは、小さく頷いて、わたしの手をとった。
 ――変わり果てた母の姿を見ることは、わたしにはできない。母だって、そんなことは望んでないはずだ――仮に文字通り母に生き写しの『物体』があったとしても、そこには、もう……いや、最初から『母』は存在していない。そのような物体には、写真ほどの精神的価値も存しない。実際のところ両親の身に何が起きたのか、後で調書を見せてもらえれば、それでいい……

 

                                ( 第8章 完 )

 

 

 

 

via 天使の翼
Your own website,
Ameba Ownd

 

 グリンフィールド査察官は、駄目を押した――
 「私は、准大公である。そこに跪け!」
 ――査察官は、通例、調査対象以上の爵位を有している。
 そして、グリンフィールドは、位階呈示装置を作動させた――右手の平を体の前にかざして、「ハー」と静かに息を吐いたのだ。
 右手の前の何もない空間に、鮮やかな金文字がきらきらと浮かび出た。
 『GRAND DUKE』――
 1WOPの疑念もなかった。
 まだ一度も使ってない、わたしの両肩に埋め込まれた天使の翼と同様、位階呈示装置は、人の肉体に移植された機械だ。この装置を不法に取り扱って身分を偽ることは、死罪に次ぐ厳罰を覚悟せずには行なえないことだ。身分秩序を偽ることは、帝国の体制の根幹に関わる罪である。
 スカルラッティは、屈強の兵士に両脇を固められたまま、わなわなと膝を屈した。
 「――スカルラッティ公爵、あなたを、多重殺人罪、第一級違法目的聖薬使用罪及び聖薬使用に関する虚偽報告罪の容疑で逮捕する」
 ――スカルラッティは気付いたであろうか?聖薬が絡んだ瞬間に、刑罰の極刑が死刑の可能性……いや、この場合は、必然性を帯びたことを。しかも、グリンフィールドが列挙した罪は、あくまで現時点で想定される代表的な罪状に過ぎない。スカルラッティのやってきたことを思うと、一体どれほど多くの犯罪の構成要件を満たすか、知れたものではないのだ。

 スカルラッティと修道僧は、完膚なきまでに叩きのめされ、連行されていった。
 すれ違いざま、グリンフィールド査察官が、シャルルに軽く頷いて見せた。
 冷静に考えれば当然の処置であった。隠密行動中のシャルルが表に出るような事態は、何としても避けなくてはいけない。『黒子に徹する』とは、こういうことであったのだ。

 

 

 

 

via 天使の翼
Your own website,
Ameba Ownd

 

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

    ブログをはじめる

    たくさんの芸能人・有名人が
    書いているAmebaブログを
    無料で簡単にはじめることができます。

    公式トップブロガーへ応募

    多くの方にご紹介したいブログを
    執筆する方を「公式トップブロガー」
    として認定しております。

    芸能人・有名人ブログを開設

    Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
    ご希望される著名人の方/事務所様を
    随時募集しております。

    Copyright © CyberAgent, Inc. All Rights Reserved.