今回も前回に引き続き、施設職員の語られた言葉を紹介いたします。
(論文「児童養護施設の職員が抱える向精神薬投与への揺らぎとジレンマ」吉田耕平 著 福祉社会学研究10 136頁~137頁 4.3 向精神薬の効果および副作用 より引用)
※論文の引用は太字としてます。
※著者の注釈は(注1)とピンク字で記載させていただいてます。
※論文以外の引用は緑太斜め文字とします。
※途中に奈々草の解説、最後に奈々草の感想を青字で書いています。
(途中の解説は〔〕で括っています。)
※薬品名にリンクを貼りました。(今回は、リスパダールのみ)
※気になる部分は、赤太字にしました。
4.3 向精神薬の効果および副作用
AさんとDさんから、向精神薬の効果および副作用について話を聞くことができた。
Aさんは
「リスパダール を飲んでいた子どもは、太るんよ」。
「その子どもは成長期ということもあり、かなり食欲もあったけど、異常にお腹がポッコリと出ていたりして、ただの肥満とは違うというか」
「薬を止めると痩せるし、ほんと薬の副作用と思った」
と述べている。
代謝及び栄養障害
食欲不振、高脂血症、食欲亢進、多飲症、食欲減退、高尿酸血症、水中毒
高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡
高血糖や糖尿病の悪化があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡に至ることがあるので、本剤投与中は、口渇、多飲、多尿、頻尿等の症状の発現に注意するとともに、血糖値の測定を行うなど十分な観察を行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、インスリン製剤の投与等の適切な処置を行うこと。
低血糖
低血糖があらわれることがあるので、脱力感、倦怠感、
冷汗、振戦、傾眠、意識障害等の低血糖症状が認められ
た場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
<リスパダール添付文書 副作用より引用>
〔リスパダールを服用して太る理由については、こちらのサイト
http://okwave.jp/qa/q6094685.html
のベストアンサーにわかりやすく書かれています。
質問とアンサーでは、「セロクエル」について書かれていますが、リスパダールもセロクエルと同じ「セロトニン・ドーパミン拮抗薬(SDA)」です。〕
また実の子どもであれば病院も薬も使わないといっていたDさんも、向精神薬の効果および副作用について調べている。
「以前、リスパダールについて調べたことあるけど、調べた通りでリスパダールを飲んでいる子どもは皆、異常な太り方やね」
「実際は薬を飲んでも何も良くなってないように感じるし、副作用で太っていったりしてかわいそう」
という。
このように、AさんもDさんも子どもの行動が良くなってないと日々の観察から向精神薬の有効性について疑問視している。
つまり、向精神薬によって子どもが落ち着き、多動でなくなった結果、運動不足に陥り太ってしまうのである。
〔これは違う。
多動でなくなり、運動不足になっただけで太ったわけではない。
運動不足になっただけで太ったのだったら、Aさん、Dさんも異常な太り方とは言わない。
太った原因は、明らかにリスパダールの作用、副作用です。〕
さらに、Dさんは「薬には眠くなるものもあって、○○ちゃんなんかは22時まで起きていても良いかと聞いてくるから、私はいいよっていってあげるけど、薬のせいか20時過ぎた頃にはねてしまうんよ。」
「そういう意味では、暴れんと寝てくれたら助かるけど、ほかに薬を飲むことで何が良くなっているのか、わからんけど、集団を管理するというか薬を飲んでくれる安心感みたいなものはあるかもしいれん」と語っている。
重要な基本的注意
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがある
<リスパダール 添付文書 重要な基本的注意より引用>
そして、Dさんは体型の変化に「かわいそう」という言葉で受け止めているが、子どもが向精神薬を飲むことで暴れずに寝てくれることで安心して仕事ができると、向精神薬が子どもの行動に効果をもたらさないとしても、向精神薬を使用することで安心感を得ている。
安心感を得ているのはAさんも同じで、次のように語っている。
「薬は子どもにとっては良くないと思っても、薬を飲んでくれると安心して仕事ができますね。」
Aさんもまた、Dさんと同様に向精神薬の投与に対して否定的な意見を述べる一方で、子どもが落ち着いて過ごしてくれることで安心して仕事ができると語っている。
しかし、安心して仕事ができるというDさんも「不安」がある。
「薬は増えていく一方ですよ」
「職員が薬を管理するのも大変で、間違えて渡してしまわないか不安で一杯です」
「施設の子は薬がただやしね。薬は増えることがあっても、減ることはないですからね。」
Dさんが、減ることのない向精神薬の量に対して不安を抱いている。
さらに、Dさんは「施設の子は薬がただ」であると「医療費公費負担」(注1)の適応について触れている。
施設入所者全員に適用される医療費公費負担は、子どもの医療費が施設ではなく、国や都道府県が負担していることで向精神薬が増えると捉えている。
(注1)東京都福祉局によると、「公費負担医療」とは、「児童福祉法に基づき、都道府県が児童福祉施設入所者を対象に医療費を全額公費負担する制度」である(東京都福祉保健局2011)。
奈々草の感想を読む前に、angsanaorchard さんのブログを読んでください。
施設の子どもたち(向精神薬を使わない)
http://ameblo.jp/angsanaorchard/entry-12004277482.html
セネカ・センターを卒業した子どもたち
http://ameblo.jp/angsanaorchard/entry-12004669852.html
奈々草の感想
紹介した論文と2つのブログを読み比べたら、日本の児童福祉は、子どものことを第一に考えていると言いつつも、実は施設運営を優先していることがわかります。
論文に出ているAさん、Dさんは、いい人なのだと思います。
(だから、正直に語ったと思います。)
子どもに対して愛情がないわけではありません。
どうにかしたい、よくしたいという気持ちは持っています。
仕事についてのある程度の理想もあるのでしょう。
しかし、現実の前に、「仕方ない」とあきらめ、ジレンマを感じながら、自らの仕事のやりやすさのため、言い訳をしながら向精神薬を服用させています。
日本全国にこういう福祉・医療・介護職員の方は多いのでしょう。
こういうあきらめを持ったいい人が、子どもや弱者に刃を向けているのです。
支援するつもりが、いつの間にか負の状態にしているのです。
AさんもDさんも向精神薬を服用していも、よくなってないということはわかっています。
(実は、それすらわかってない支援者は意外と多いのでは、と思います。)
よくなってないということをわかっているなら、子どもが可哀想と思うなら、薬の量が増えて不安なら、施設長、施設の他職員に声をあげて欲しいです。
医師に疑問を発して欲しいです。
「それでも、薬を飲まさなければいけないですか?」
「子どもにとって、薬を飲むメリットは何ですか?」
「薬を飲んで将来悪影響が出たら、どうするのですか?」・・・・と。
施設の子どもは薬がただだから、薬を飲ませる・・・
薬の量が増える・・・
バカげてます。
<http://blog.e-salad.jp/%E3%82%BF%E3%83%80%E3%82%88%E3%82%8A%E9%AB%98%E3%81%84%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%AF%E7%84%A1%E3%81%84/
より引用>
薬はただではありません。
施設の子どもに服用させている薬のお金は、税金です。
ということは・・・・私たちが子ども達に薬を飲ませているようなものです。
そんな・・・・
私達の税金が使われているのですから、
・児童養護施設で向精神薬を服用している子どもは何人いるのか?
・どんな症状、診断で服用しているのか?
・服用している薬
・効果、副作用
を追及する必要があると思います。