今年1月下旬、アルヒがアプラスと提携して扱う「投資用マンションローン」において、融資申込書類の改ざんやその指示などの不適切行為が行われたと、報道機関が報じた。その後、アルヒとアプラスは、それぞれ3月末までに調査を行うとしていた。アルヒは3月31日に調査結果を公表。書類の偽造や改ざんや、それらを指示した事実はないと不正関与を否定した。

 

外部の弁護士を交えた特別調査チームにより、
フランチャイズ店舗の役職員の不正関与を調査

アルヒでは、報道された不正疑惑を調査するために、1月27日に、特別調査チームを立ち上げた。調査の客観性や公正さを保つために、外部機関である、西村あさひ法律事務所の森本大介弁護士をはじめとした同事務所所属の弁護士4 名に対し、調査方法の助言や調査結果の確認等の調査の協力を求めた。その上で、次の3点について、調査した。

① アルヒのフランチャイズ店舗の役職員が債権者から受け取った申込書や源泉徴収等の書類を偽造・改ざんし、アプラスに提出した事実が存在するのか。
② その役職員が、偽造・改ざんを指示した事実があるのか、不正行為を認識しながら、黙認していたのではないか。
③ 役職員に、不正行為を働く動機はあるのかどうか。

調査対象となったのは、255件の契約についてである。さらに、アプラスから個別に、調査が必要であるとの情報提供を受けた14件と、アプラスから追加調査依頼があった56件を調査した。

アプラスから個別に調査が必要だと情報提供を受けた14件の内訳は以下だ。

(a) アプラスが本件報道以前に債務者等より収入証明書類の改ざんが行われた可能性があると申出を受けた案件等 計 9 件

(b) 報道において不適切行為が行われた可能性が高いと言及された案件に、債務者が「女性かつ融資金額 2500 万円以上」である案件が含まれていたことを踏まえ、債務者が「女性かつ融資金額 2500 万円以上」に該当し、かつ調査対象の255件に含まれていない案件 2 件

(c) 報道後、2020 年 2 月中旬頃までの間に、債務者からアプラスに対して、自身の融資関連書類を送付してほしいと依頼があった案件 3 件

不動産業者2社は、ヒアリング調査を拒否
疑惑の案件を担当した社員は退社

調査では、不動産事業者がアルヒに提出した書類と、アルヒのフランチャイズ店舗からアプラスに審査を依頼する際に提出した書類を、突き合わせて、整合しているかどうかを調べた。その結果、報道されたような、源泉徴収票等の収入証明書類における勤務先及び収入額等の内容に関する齟齬は発見されなかった。

さらに、この役職員をはじめ、不動産業者のA社とB社にヒアリング調査を要請した。

役職員によるヒアリング調査では、役職員は、申込書や収入証明書などの書類の偽造や改ざんを行ったことは一切ないと述べている。また、メールサーバーに残されたデータを調べる「フォレンジック調査」でも、不正が伺えるような証拠は見つからなかった。

ただし、A社とB社のヒアリング調査は実施できていない。

A社の社長はヒアリングに応じず、弁護士を通して書面で回答した。A 社において本件不適切行為の存在が疑われる案件を担当していた社員は、既にA社を退社しており、A社社長は関与していないため、本件不適切行為については認識していないとのことだった。B 社社長は、複数回に亘って連絡しても、返答がなかったため、ヒアリングを実施することができなかったのだ。

アルヒは媒介業務を行うに留まっている
収入証明書の原本との照合作業はできていない

アルヒは、そもそも、投資用マンションローンの媒介業務を行うにとどまり、収入証明書類の原本を有していないため、本件調査において、原本と照らし合わせて、収入証明書類そのものの偽造・改ざんの有無を確認することはできないとしている。

ただし、アルヒでは、アプラスの特別調査委員会から、債務者から提供を受けた収入証明書類に記載の金額とアプラスが本件投資用マンションローンの審査に用いた収入証明書類の金額との対比を行った結果、複数の案件において、収入証明書類の偽造・改ざんが行われていたことが認定されたとの情報共有を受けたことを、明らかにしている。

アプラス側からの、この件に関する調査の結果は、4月2日現在、公になっていない。

なお、アルヒのフランチャイズ店舗では、不動産事業者提出書類一式を確認し、記載の抜け漏れの有無等の形式面の確認や、必要書類で不足しているものがないかをチェックし、特に問題がなければ、不動産事業者から送付された PDF ファイルをアプラスに対して送付していた。不動産事業者提出書類に偽造・改ざんされていることを窺わせる点がないか否かまで精査することは求められていなかったとしている。

フランチャイズ店舗の役職員が不正を働く動機に関する調査では、不動産業者から高額な接待や金品の提供を受けている事実はなかった。契約に至った場合でも、10万円前後の手数料をえるにとどまるため、自ら率先して、不動産業者に書類の改ざんを指示するようなことはないとの見方をしている。

疑念が残るものの、真相は不明
アルヒは、投資用マンションローンを中止

アルヒの調査では、不正行為は認められなかったものの、アルヒに提出される前段階で、収入証明書や源泉徴収票などの書類が改ざんされているのではないかとの疑念が残る。

なお、アルヒでは、投資用マンションローンの取り扱いを完全に中止し、住宅ローンに集中する。投資用マンションローンは、営業収益の0.6%にすぎず、財務インパクトはほぼないとしている。今後は、住宅ローン不正利用検知システム「ARUHIホークアイ2.0」の開発を進め、2021年3月期中に稼働を予定している。

 

2020.4.3 健美家様より引用