管理会社サービスの質はバラバラ

アパート経営を始めると、安定収益を得られる一方でさまざまな問題に直面することになる。入居者づけ、滞納、騒音トラブル、違法駐車、建物メンテナンス…数え上げればきりが無い。

大家が自らこれらの対応をできる時間があれば良いが、なかなかそうとも言えない。本業が別にあるサラリーマン大家であれば、ことさら難しい。正直そこまで面倒なことができないから、管理会社にフィーを支払い、管理を任せることになる。

しかし管理と一言で言っても、全国各地ごとに慣習の違いや、同じエリアでもルールやサービス内容が全く違うことだってある。
 

地方高利回り物件の管理委託リスク

こんなエピソードがある。あるサラリーマン大家が地方に築古高利回り物件を購入した。自宅から物件まで200km以上も離れているので、運営のほとんどを管理会社に頼らざるをえない。

ある日、管理会社から一本のメールが届いた。「共用廊下の蛍光灯が切れている、と入居者から連絡が入りました。つきましてはお手数ですが交換をお願いします。」

これを見た大家はこう返した。「入居者さんもお困りでしょうから交換をお願いします。費用は後日ご請求ください。」管理会社から物件まで車で5分。当然管理会社が動いてくれると思った。

しかし、このような回答がきた。「共用部の照明の交換は管理業務に含まれていません。また当社の指定業者は費用が高いので、大家さん自らお知り合いの業者へ依頼をお願いします。」遠方であるため、大家が知っている業者など存在しない。泣く泣く大家は業者を探して、交換をしてもらった…。

管理会社はなんのために存在しているのだろう。管理委託契約書をみれば、「やる」とも「やらない」とも記載がない。百歩譲って、管理会社がそのような作業をやらずとも、業者への依頼や進捗管理は、管理会社の業務である。

このように管理委託の内容が不明瞭ということは良くある。都市部と違い、特に地方郊外で物件を保有するリスクは、この辺りの「管理会社の質」と直結する。
 

管理会社のレベルを知る3つの質問

確かに賃貸管理は業務範囲が広く、店子もたくさんいるためイレギュラーも発生しやすい。グレーゾーンをやるかやらないかは、管理会社判断になる。

これらを判断するには、最終的には管理委託契約書の業務内容を一つずつ確認するのだが、その前に営業段階でホームページやパンフレットなどから情報を得ることもできる。管理会社を選ぶときには、「リーシング(募集)」「出納」「入居者対応」の、主要3カテゴリーからよくあるトラブル事例をヒアリングして考えるのが望ましい。

<リーシング(募集)>

 

① 自社媒体(HP)にしか掲載されない:
通常は自社ホームページだけでなく、ポータルサイト(スーモ、ホームズなど)などへも掲載される。自社で客づけをすれば、入居者からの仲介手数料と、大家からの広告料とダブルでフィーを得ることができるためこのような手法が取られる場合がある。いわゆる「囲い込み」で募集範囲が狭まり成約までの期間が長くかかることもある。

② 募集しているのになかなか決まらない:
募集をしてくれているのだろうが、管理会社からの提案がないためどうすれば成約するのかが不透明。さらに内見や案内の報告やレポートがないため、どのような状況かわからない。

③ 自社の管理物件ではなく、仲介しやすいからと他社の管理物件を優先的に決めている:
こんなことであれば、管理を任せている意味を感じられないし、そもそも自社物件の仲介成約率を高める管理会社であって欲しい。

 

<出納(集送金)>
① 賃料送金明細にたびたび間違いがある(正しい入金額ではない):
賃料の集金額から修繕や管理料などの経費を控除したものを取りまとめたものが「賃料送金明細」であるが、入金額の間違いや、控除額が間違えていることがあるため要注意。

② 滞納に対する処理が遅すぎる:
滞納保証会社を利用していればこのようなことはないが、滞納処理を管理会社が行っている場合、初回滞納を未処理にしたままにすると悪質な滞納を生んでしまうことになる。

 

<入居者対応>
① クレーム発生時の対処法が担当者によってバラツキがある:
設備故障、入居者間トラブル、騒音など、トラブルの対処方法が人によって違う。初動が遅れることで二次クレームへと発展させてしまう担当がいる。管理会社ごとにトラブル時の対処フローやガイドラインが決まっているべきである。

② クレーム、トラブルがあった際の報告書の有無:
クレーム、トラブルが発生したときに管理会社内で解決することもあれば、費用発生する場合にはオーナーへの決裁が必要となることもある。これらの経過や結果を報告(文字情報)として残してもらわなければ、大家としては情報という経営資源を失っていることと等しい。レポートが存在していることが望ましい。

上記以外にも多数の項目が存在しているが、まず抑えるべきは3つのカテゴリーである。管理委託時の管理会社との折衝の際に、上記のようなトラブル事例をもとに「このようなケースはどのように対処していますか?」というように、ヒアリングをしながら管理会社の体制を知ることで、実態を把握できる。物件購入前などにこれらの管理体制を知ることができれば賃貸経営のリスクを減らすことができるため、表面利回りと実質利回りとを近づけることができ、より事業計画通り安定経営ができる。

 

2020.3.20 健美家様より引用