旧大正銀行の不動産業向け比率は55%
合併による規模拡大で資金調達力↑

トモニホールディングス(HD)傘下の旧徳島銀行(本店・徳島市)と旧大正銀行(同・大阪市)が合併し、今年1月、「徳島大正銀行」(同・徳島市)が誕生した。

期待されるのは、旧大正銀行が強みを持っていた不動産融資の資金調達力が上がり、不動産投資家にとっても、より頼れる〝味方〟になることだ。今後、合併や経営統合を進める全国各地の地方銀行にとっても、不動産融資の強化へ向けた良い〝お手本〟になり、投資環境の好転につながる可能性がある。

 

徳島大正銀行は1月1日に合併し、6日に営業を始めた。関西・四国にまたがる広域銀行の誕生だ。2025年の関西・大阪万博や、カジノを中心とするIR(統合型リゾート)誘致で経済発展が期待できる関西を中心に、積極的な攻勢をかける方針だ。

不動産投資家にとってうれしいのは、旧大正銀行の不動産融資が、より「頼りがい」のあるものへとなることだ。

トモニHDの開示資料によると、旧大正銀行の19年3月期の不動産業向け貸し出し(物品賃貸業向け含む)は2314億7800万円で、貸し出し全体の55.87%にも上り、ほかの地銀と比べ、ダントツに高い比率となっている。

ただ、銀行の規模が小さく、資金調達が難しい側面もあった。合併によって銀行の規模が大きくなるため、「資金の調達力が高まり、不動産融資を拡充することが可能になるだろう」(市場関係者)との見方が有力だ。

 

賃貸物件向け融資にも注力
「合併→融資拡充」のお手本に?

旧大正銀行の不動産融資について、徳島大正銀行の関係者は、「戸建て住宅を手がける事業者向けなどに加え、ワンルーム、一棟ものといった、賃貸マンション向け融資などにも力を入れてきた」と話す。

万博に向けて再開発が進み、賃貸も良い物件が出てくることが期待できる関西エリアにチャレンジしてみたい投資家は、関東、九州などほかの地域に住んでいたとしても、徳島大正銀行は融資の相談相手として、有力な選択肢になりそうだ。

 

さらに期待できるのは、地銀が合併し不動産融資を拡充する良い先例に、徳島大正銀行がなることだ。たとえば、合併して不動産融資のための資金調達力が増せば、融資の相談をしても通りやすくなる可能性がある。地銀によっては、融資金利が下がりやすくなることもあるだろう。

 

金融庁は地銀の統合を後押し
独禁法の特例による制度改正も

少子化や人の流出による人口減、日本銀行のマイナス金利政策を背景とした収益環境の悪化などで経営が苦しくなっている地銀に対し、金融庁は、改革を進めて経営を改善するよう強く求めている。

具体的には、同じ都道府県内の銀行が統合し、地域のシェアが高くなったとしても、経営の改善やサービスの維持につながるといった条件を満たせば、特例として統合を容認する。政府は、20年の通常国会で法案を成立させ、制度改正を行うことを目指している。

一方、金融行政方針には、地銀をはじめとする金融機関が経営の破綻に備えて積み立ている預金保険の保険料について、経営の健全性に応じて差をつけることも盛り込んだ。経営が健全であれば保険料を下げるので、経営統合による経営改善の意欲が強まるだろうというわけだ。

実際、地銀の統合を後押しする政府の方針について、全国地方銀行協会の笹島律夫会長(常陽銀行頭取)は「選択肢が増えるという意味で、前向きに受け止めることができる」と話している。今後、地銀の再編は加速する可能性がある。

投資家の皆さんも、今後、地銀の統合や合併の動きが表面化すれば、その地銀が不動産融資に注力してきたのか、統合や合併が不動産融資の強化につながるのか、しっかり考えることが重要だ。その上で、自分の不動産経営にどう生かしていけばいいか、賢く戦略を練っていきたい。

 

2020.3.8 健美家 様より引用