FJネクストは5年で売上高2倍に
購入客の7割は会社員

区分マンション投資の人気が過熱している。中古であれば1000万円台という低価格のものも多く、自己資金が少なくても購入できるため、将来の給料や年金に不安を抱く会社員の人気を集めているようだ。

実際、投資用の区分マンションを扱う企業の業績は急速に良くなっており、近年では、東証1部への上場も相次いでいる。不動産投資を始めたい人の〝入門編〟とされがちな区分マンション投資だが、メリットもデメリットもあるので、しっかりとした見極めが重要だ。

 

投資用の区分マンションを扱う企業の業績は好調だ。たとえば、「ガーラマンションシリーズ」を展開し、2013年に東証1部に上場したFJネクストを見てみよう。

同社の資料によると、創業は1980年で、「資産運用型マンション」事業を中心に展開してきた。94年に「ガーラマンションシリーズ」を始め、2004年にジャスダック、07年に東証2部へ上場を果たしている。

直近の業績は順調に拡大している。連結売上高は、19年3月期に815億1600万円と、15年3月期(401億5100万円)から倍増した。

販売戸数は15年3月期に1413戸だったが、19年3月期には1.7倍の2462戸まで増えた。購入客の属性をみると、7割が会社員だという。

同業の企業も業績が拡大しており、近年は東証1部への上場も相次いでいる。東証1部に上場していると、「知名度や社会的な信用度が高い」と投資家にアピールできるメリットがある。

とくに多かったのが18年で、4月にはグッドコムアセットが東証2部から、7月にはプロパティエージェントが東証2部から、12月にはグローバル・リンク・マネジメントがマザーズから、それぞれ東証1部への上場を果たしている。

 

人気の背景に給料、年金への不安
価格が低めで手を出しやすく

業績の拡大を支えているのは、会社員を中心とした区分マンションへの投資熱の高まりだ。背景の一つが、「勤めている会社がいつまで持つか」「いま貰っている給料がどこまで保証されるか」という会社員の不安の強まりだろう。

「給料以外に、毎月の定期的な収入確保の手段が欲しい」という思いがあるとみられる。
また、「年金で生活をまかなえるか」といった老後への不安もありそうだ。その象徴が、昨年、国民的な論争を巻き起こした「老後2000万円問題」といえる。若いうちに将来も貸し続けられるマンションを買っておき、老後の定期的な収入の手段にしたいという考えがあるのだろう。

数ある不動産投資物件の中でも、区分マンションは価格が安めで、会社員でも手が出しやすい。スルガ銀行の不正融資問題をきっかけに、高額なマンションやアパートなど1棟ものへの融資が厳しくなっていることも、より低価格な区分マンションに会社員らを向かわせている要因と考えられる。

 

利回り低くキャッシュフロー少ない
オーナーの権限も限られ要注意

読者の中にも、区分マンションから不動産投資を始めてみようという人がいるだろう。だが、メリットもデメリットもあるので、しっかり検討してから行動に移すことが大切だ。

メリットは、これまで述べてきたように、1棟ものと比べ、安い価格で購入できることだ。健美家の19年の「収益物件 市場動向 年間レポート」によると、区分マンションの平均価格は1566万円。一棟アパートの6501万円、一棟マンションの1億5161万円と比べると、かなり安い。

 

物件が東京23区の駅近といった一等地にあれば、入居者を探すのに困ることはない。管理も管理会社任せなので、手間がかからず、本業で忙しい会社員に適しているといえる。

一方、デメリットは、なんといっても、キャッシュフローの少なさだ。立地の良いマンションはどうしても販売価格が高く、家賃収入の利回りが低くなるので、手残りの利益が少なくなってしまうのだ。

健美家の19年の「収益物件 市場動向 年間レポート」によると、区分マンションの利回りの平均は7.37%。一棟アパートの8.88%、一棟マンションの8.35%よりも劣る。維持管理費や修繕積立金などの費用を差し引いた実質利回りは、かなり低くなり、場合によっては赤字になってしまうだろう。

加えて、1戸だけへの投資の場合、空室になるとまったく家賃収入がなくなるので、リスクが大きい。

さらに、区分所有だと、オーナーの権限が限られるのも注意したい点だ。「入居者を呼び込むため、マンションの外壁を塗りなおしたしたほうがいい」と思ったとしても、管理組合やほかの入居者から賛成されなければ、実行に移すことは難しい。空室を埋めるため、自分の部屋だけ家賃を下げたり、「ペットOK」にしたりしても、客付けで不利になるほかの部屋のオーナーから文句が来る可能性がある。

本当に自分に適した投資なのか…行動に移すときは、先輩大家さんや経験者にも話を聞くなどして、慎重に事を進めたい

 

2020.3.4 健美家 様より引用