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サラリーマン不動産投資家の8割ほどが年収や資産状況に見合わない多額の借り入れをして投資に及んでいる実態が浮き彫りとなった。

オンラインの不動産投資ローンサービスを提供するMFS(東京都千代田区)が、同社のサービスを利用している約2000人の個人投資家を調査したところそんな結果が出た。平均年収1166万円に対して平均の融資額は8243万円となっている。

これに加えて約7割が2%以上という高い金利で投資ローンを借り入れていることもわかった。既に借り入れしているユーザーの適用金利を分析したところ、2.0~3.0%未満の金利のユーザーが42%を占め、3.0~4.0%未満のユーザーが22%、4.0%以上も6%いた。2.0%以上が7割に達する。1.0~2.0%が25%で1.0%未満は5%にとどまっている。

自身のリスク許容度を超えての借り入れで投資している可能性が高い。なぜなら不動産投資ローン借り換えを申し込んだユーザーのうち事前審査で否決される割合が78%と約8割近くに達しているためだ。

年収倍率(ローン残高と年収の比率)が15倍を超えている借り入れケースでの借り換え承認率はほぼ0%だという。年収倍率が8倍以下のケースを見ると、承認率は40%程度となり、8倍までは収倍率が下がるほど借り換えできるユーザーの割合も増える傾向にある。

同調査での年収倍率の分布を見ると、5倍までが37%、6~10倍が28%、11~15倍が13%、16~20倍が8%、21倍以上が14%となっている。

不動産投資額を見ると、区分所有マンション保有者の平均額は4600万円、一棟アパートで1.4億円だった。保有物件数の分布では、半数が1件のみの保有となり、残り半数が2件以上の複数物件を保有し、平均2.2件で最高は21件だった。

資産額で最も多いのが1億円(32%)となり、次いで2000万円以上4000万円未満(19%)、4000万円以上6000万円未満(16%)が続いた。

表②-1

こうした中、今後の購入物件については、半数以上の56%が中古と回答し、新築は9%に過ぎなかった。MFSでは、不動産価格の高騰を受けて購入しやすい中古物件に人気が集まっているとしている。

■年収10倍超はハードル高い

同社不動産投資事業部部長の浦濱純一氏は、「定期的に不動産投資ローンを見直すことが重要で、自分の返済能力をしっかり把握し、その信用力内で借り入れを行うことがポイント。それにより金融機関からより低い金利を引き出すことも可能だ。

一つの目安として、年収倍率が10倍を超えると借り入れのハードルが上がると考えたほうがいい」といい、追加で投資物件の購入を検討する場合は、購入する前に既存物件の借り換えを先に実施することが賢明だとアドバイスする。同社のサービスを申し込んだユーザーの年収倍率の平均は11.8%と目安の10倍を超えている。

表③

サラリーマン投資家の資金調達環境に改善の機運は見られない。収益物件の購入では、購入者の年収・職業といった属性が重視され、物件価格の2~3割、なかには半分近い頭金を求められるケースは珍しくない。金融機関は個人に対してシビアだ。

「もう年収400万円は無理。銀行の貸し出し姿勢はそれぞれだが、メガバンクは初心者には融資しないようになった」「初心者ならば年収500万円以上で預貯金などの金融資産を300万~500万円ないと厳しい」。

マーケットウオッチャーやアナリストなど関係各所ではこうした実感値が珍しくない。今後の経済環境の下振れリスクも高まっている中では、金融機関がサラリーマン投資家の身の丈以上の借り入れに更に敏感になるのは間違いない。余力のあるうちに資産状況と借り入れ状況を洗い出すことが求められている。

 

2020.2.28 健美家 様より引用