住宅ローン「フラット35」を不動産投資に不正利用していた問題に、新たな動きがあった。フラット35を提供する独立行政法人 住宅金融支援機構が、不正利用していたことが分かった利用者に対して、融資額の全額・一括返済を求め始めたのだ。

 

なお、全額・一括返済ができない場合は、物件を競売にかけて売却したうえで、残額も分割で返済を求めるという。

 

年収300~400万円の20~30代単身者、
融資額1000~2000万円を一括返済できるのか

フラット35を投資目的で利用したり、住宅購入金額を水増ししたり、不正が確認されたのは、最新の調査結果では合計162件に及んでいる。

住宅金融支援機構の調査によると、物件購入者は20~30代前半の単身者が84%を占め、その過半数は年収300~400万円の会社員である。すべてが中古物件で融資実行されており、価格は1000~2000万円台ものが80%をしめている。また、フラット35以外にも、多額のリフォームローンや多目的ローンの借入を、物件の購入後に他の金融機関からしているケースが89%も確認されている。

上記のような住宅購入者が、全額・一括返済を求められて、1000~2000万円を、一括で、返金できるものだろうか。手元に現金が残っているような状況は考えにくいのではないだろうか。競売にかけ、その売却した金額で、分割ででも、支払っていかなくてはならないケースが少なくないのではないだろうか。

2月5日付けの日経新聞では、フラット35の不正に関連して、架空のリフォームや家具購入のために、信販2社に、融資契約を本人のものではない印鑑が押されて、契約された事例や、サブリース業者による家賃保証額が一方的に下げられたケースもあると報じている。

 

スルガ銀行でのシェアハウス向け融資では
元本の一部カットなど個別相談に応じている

ちなみに、記憶に新しい、スルガ銀行のシェアハウス向け融資問題のその後に目を向けてみると、スルガ銀行では現在、個別に、金利の引き下げや、元本の一部カットに応じている。不動産の取得価額と積算価格の差額を上限に、元本を一部カットする。これは、ローン返済を含む物件収支が赤字であるなど返済が困難な物件であって、ローン契約締結時にスルガ銀行が関係する不正行為があるなどの条件がある。元本の一部カットの前に、金利の引き下げで、赤字が解消される場合は、金利の引き下げが検討される。

 

スルガ銀行の件では、不正が行われたかどうかや、借り手の投資判断の因果関係など、裁判所の民事調停または民間 ADR 機関の和解あっせんなどによって、中立公正な第三者の判断を経て、元本の一部カットがなされるかどうかが判断される。

フラット35の不正問題に至っては、物件を仲介する不動産業者グループの関与が明らかになっているが、不動産業者や、金融機関の責任は問われていない。

現段階では、契約者への全額・一括返済が要求されているのみである。今後の住宅金融支援機構の対応にも引き続き注目したい。

 

2020.2.10 健美家編集部 様より引用