「住宅ローンで投資」、不動産コンサルを信じて…
不動産投資初心者のX氏は、ある日、不動産投資コンサルタントのセミナーに参加しました。
不動産投資コンサルタントは、セミナー中で「最近は不動産投資のローンの審査が通りにくくなっている」
「しかしながら、住宅ローンは不動産投資のローンと比べて通りやすいから、
不動産投資にも住宅ローンを利用すべきだ」などと話していました。
さらに、不動産コンサルタントは「住宅ローンを利用するメリットは審査の通りやすさの面だけではない」
「住宅ローンは不動産投資のローンよりも金利が安いため、利回りがより良くなる」
「不動産投資に住宅ローンを利用するのはメリットしかない」とも熱弁を振るっていました。
それを聞いたX氏は、住宅ローンを利用して不動産投資物件を購入しようと思い、状況をよく理解しないままに、不動産コンサルタントと契約をしてしまいました...
その契約は、契約時に数十万円、住宅ローン審査が通った段階で数十万円を支払うというもの。
不動産コンサルタントはあくまでアドバイザー的な立場であって、代理行為はしないということでした。
そのため、金融機関との間の契約は全て自分でやらなければなりませんでした。
一方で、住宅ローンの中でも、低収入や自営業者でも審査が通りやすい商品や、
住宅ローンが通りやすくなるための書面の準備といったことを、
その不動産コンサルタントが手取り足取り教えてくれました。
X氏が不動産コンサルタントの言うとおりにA銀行の商品に申し込み、
きちんと書類を揃えたところ、無事に住宅ローンの審査に通りました。
X氏自身も住宅ローンの審査が通った際には、嬉しさもひとしおだったそうで、
不動産コンサルタントにもきちんと報酬を支払いました
その後、購入した投資物件の賃借人も決まり、無事に賃料が入り始めました。
ところが2カ月後、A銀行から一通の通知がX氏の下に届きました。
X氏が不動産投資目的で住宅ローンを利用したことが発覚したため、
住宅ローンの残金を一括で請求するという内容の通知でした
その通知を見て驚き、X氏は、不動産コンサルタントに連絡をしましたが、
連絡がつきませんでした。X氏は結局投資物件を売却。
それでも債務が残っており、ほかに抱えていた投資物件の返済も滞ってしまったため、
やむなく弁護士に依頼して破産申立てをすることになったのです。
カギとなるのは住宅ローンの「目的」
住宅ローンや不動産投資ローンなど、銀行の提供する商品は、
民法587条が規定する消費貸借契約の一種である「金銭消費貸借契約」です。
金融機関との間で締結する金銭消費貸借契約書にはさまざまな条項が規定されていますが、
上記の事例で問題となったのは、
1.契約の目的と2.期限の利益の喪失条項です。
上記1の「契約の目的」は、多くの場合、契約書の最初の方の条項で規定されています。
契約の当事者が当該契約を何の目的で締結するのかということを定めています。
住宅ローンを例に挙げれば、借主は、
自分又はその親族が居住する物件購入のために金銭を借り受けるということになり、
それが目的として規定されます。上記の事例では、契約の目的と実態が異なっている
(投資物件を購入するために住宅ローンを借りています)わけです。
また、上記2の「期限の利益の喪失」条項は、端的にいえば、契約で定められた一定のルール違反をすると、
残金を一括請求されるという内容のものです(住宅ローンなどは、借り入れた金銭を分割で払っていく…つまり、
返済期限を猶予されているのですが、
その猶予されていた期限を失うことから、期限の利益の喪失と表現されます)。
多くの契約書では、例えば、契約の各条項に違反した場合などを期限の利益の喪失の事由として規定しています。
上記の事例では、X氏が住宅ローンの目的条項に違反したために、
住宅ローンの残金の一括払いを求められているわけです。
皆様も購入の際は気をつけてください