前回の続きです。



前回は、箸を使って食べる時と、フォークナイフを使って食べる時は、調理の段階で食材の切り方を変えなければならない事を書きました。


調理をするにあたっての大前提の違いです。



今回は、箸で食べる時、フォークナイフで食べる時の料理を作る考え方の違いです。


前提が違えば当然作る料理の考え方も変わってきます。





では実際にフォークナイフを使って食べてみましょう。




口に運べる量はどうですか?


これは、ナイフを使って切る事で大きくする事も小さくする事も出来ます。







では、運べるアイテム数はどうでしょう?


これは少なく、せいぜい1アイテムをフォークに刺して口に運ぶ、多くても2アイテム、それをソースと絡ませる。


そんな程度です。




1度に口に運べるアイテム数は少ないのです。





そして、皿を持って食べるのはマナー上で禁止されているので、丼をかき込むような食べ方は出来ません。




運べる量、アイテムともフォークに乗せるか刺すかの一回分が上限です。


麺料理は、フォークに巻き付けて食べるので、それはまた別の回に書きます。




じゃあ箸を使って食べるとどうですか?




運べる量はフォークと同じぐらいです。


豆腐や煮魚等の柔らかい物ならば、圧迫して切るのも可能です。



ただし硬い物は切る事が出来ないので、前回書きましたが、調理段階で切っておく必要があります。




では、運べるアイテム数はどうですか?





そうですね、たかだか2本の棒ですけど、運べるアイテム数は意外に多いのです。





フォークを使って食べるには食材をフォークの上に乗せるか刺すかですが、箸は挟んで運ぶので、数種類の食材を1度に口の中に入れる事が可能です。




さらに、複雑に重ねたり、重なった物を挟んだり、巻いたりも可能です。




握り寿司を挟んでひっくり返してネタに醤油を付けて食べる。




フォークナイフではかなり難しいけれど、箸なら普通に出来ます。





また、丼物等の手で持つ物や、持つ事が許されている料理は、大げさな話ですが口に運べる量、アイテム数は上限なし。無制限です。






口の中へ1回に運べる食材の種類が、箸を使う時とフォークナイフを使う時とでは、
明らかな違いがあります。



1回に口に入れる食材の種類が変われば、根本的に一皿の上の料理の構成が変わります。




1種類の食材を食べて美味しく感じるにはどうするべきか、複数の食材が1度に口の中入った時はどうなるか。



前提が変わると考え方も変わらなければいけないはずです。




さらに、箸を使う食文化とフォークナイフを使う食文化とでは、単に地域的な食材の違いからではない嗜好の違いも出てきます。







一流のフランス人シェフの料理や料理の写真を見ると、明確にどれが主材料にあたるかが分かります。


また、マリアージュと呼ばれでいる、「2つの素材の組み合わせ」がハッキリしている料理も多いです。










極端な例になってしまいますが、例えばミックスピザ。




私もイタリア在住時代に、現地の友達とピッツェリアへは何度も行きました。




ミックスピザというメニューがある事はありますが、あまり一般的で無いような気がします。



そんなのメニューに無い店もありました。




友達が注文するピザは、あれこれ何種類もの食材を使っているピザではなく、生ハムとかキノコとか明確に「○○のピザ」。





もちろん彼らはフォークナイフの文化ですから、ピザがカットされては出されません。



数人で何品か注文して、皆んなで分けて少しづつ数種類食べる事もありません。



そもそもそれはルール違反ですから、やってはいけないのですが。





さて、彼らにとって美味しい料理とは何か?


皿の上に色々乗っていて何が主役か分からない料理でなく、主役が明確な物。

ちょっとづつあれこれ色々な物を食べるのではなく、とにかく主役をハッキリさせる事が彼らが美味しく感じるポイントだと思います。






前にも書きましたが、私の場合、イタリア料理として作る基準は、イタリア人が食べて納得してくれる物です。


あくまでもイタリア料理として出す場合です。


例えば団体様の貸し切りご予約の時に、ご要望で違う料理を出す特別な場合はあります。



それはイタリア料理ではありませんので。




さて、長くなりましたので続きは次回。





今回はヨーロッパ人の食の嗜好まで書きましたが、次は日本人の食の嗜好です。