★6610★ 劇場版「Fate/stay night [HF]」第二章下屋則子インタビュー①
今もなお、数多くの作品が作られている『Fate』シリーズの原点ともいえる『Fate/stay night』。その最終ルート[Heaven's Feel](以下、HF)は、劇場3部作で映像化。2019年1月からはその第2章にあたるエピソードが公開となります。
公開時期が少しずつ迫る中、アニメイトタイズでは本作のヒロイン「間桐桜」を演じる声優・下屋則子さんを軸に7週に渡る連載インタビューを実施しました。連載を通して、「みんなが考える“間桐桜像”」を浮き彫りにしていきます。
連載第1回は特別編。前後編でお届けします。今回の主人公は、もちろん下屋さん。前編では、これまでと今回の[HF]で演じた桜への印象についてお聞きしました。
演じている下屋さんご自身は、桜をどのように見ているのでしょうか。そこには下屋さんだからこそ見えた世界がありました。
徐々に作品理解を深めてきた
――まず、最初に桜を演じた時、どのようなことを感じられていましたか?間桐桜役・下屋則子さん(以下、下屋):一番最初に桜を演じた時は、『Fate』がすごく人気のある作品だということは知っていました。その時はまだ私自身はゲームをプレイしていなかったので、『Fate』の世界を理解するのがすごく難しかったですね。
第一話のアフレコの前には、すごく分厚い資料も作っていただいたのですが、それを読んだだけではなかなか理解しきれなくて。
演じながら徐々に世界やキャラクターへの理解を深めていっきました。なので今と当時では、桜に対する理解の深さというのも全然違っていましたね。
その後にゲームの収録があり、発売されたゲームを自分でプレイしたり、『Fate/Zero』で幼い頃の桜を演じられたのも大きかったと思っています。
桜が幼い頃にこうした聖杯戦争が起きて、桜のことを想ってくれる人がいたんだと知ることができましたし、今でも「もしも雁夜おじさんが生きてくれていたらどうなっていたのかな……」というのはふとした時に想像してしまいますね。
下屋:そうですね。最初に演じる時から、「[HF]ではこういうことがあるんだけど」というお話自体は聞いてはいました。
でも、これまでは日常を象徴する存在として、一人の可愛い後輩を演じる意識が強かったのかなと思っています。
――自分が以前演じたシーンを再度演じるというのは、なかなか難しい部分もあるのではないかと思ったのですが。下屋:ゲームやアニメの収録はまったく違うものですし、以前の自分の演技を思い出してそれと比較して……といったことはあまりないですね。
とくに[HF]に関しては、一度まっさらな気持ちに戻ろうという意識がありましたから。
下屋:はい。『stay night』の桜を演じる間には『カーニバル・ファンタズム』のよう作品もありましたから(笑)。
とはいっても、『stay night』の世界では描かれていないだけで、セイバールートや凛ルートであっても間桐家で起こった出来事というのは変わらないと思うので、ベースとなるものを捨てているわけではないんです。
『zero』での出来事や士郎との出会いを踏まえた上で、もう一度桜と向き合いたいなと。
特に第2章から先はすべてが[HF]でしか描かれない領域に入っていきますから、一度演技を作り直すことができたのは良かったのかなと感じています。
須藤友徳監督、こだわりの桜のシーン
――今回のインタビューに合わせて、あらためて1章を見直したのですが、桜のかわいさを再確認しました。ふとした仕草とか、影のある部分とか……。下屋:そういう感想をいただけるのは嬉しいですね。ただ、やっぱり桜がかわいく見えるというのは、須藤友徳監督のお力というのが大きいんじゃないかなと。
下屋:1章の公開後に、須藤監督とお話させていただく機会があって、ここぞとばかりにいろいろな質問をぶつけたことがあったんです。
監督は、他のスタッフさんから上がってきた原画をチェックする際に、桜の出ているところだけを一箇所まとめて、後でチェックするということをやっていたそうですよ(笑)。
もちろん、贔屓をしているわけでなく、どのシーンも大切にされている中でのお話なのですが。
――楽しみは最後にとっておく的な(笑)。下屋:でも、アフレコの時の絵コンテよりさらにかわいくなっていたのには驚きましたね。
最後の雪のシーンも、(アフレコの時から)ほぼ完成形かと思っていたら、公開時の映像ではさらにすごい映像になっていて、さらに桜がかわいくなっているなと感じて。
やっぱり、須藤監督の作品への深い理解があったらこそ作れた作品が[HF]なんだと思います。
下屋:第1章だけでなく、第2章にも映画で新しく追加されたオリジナルシーンがあるんですが、これが本当に凄くて、私自身も絶叫したくなったくらいでした。
今回の劇場版は、原作から15年近くの年月が経った、今だからこそ作れたものだと思いますし、それだけの間待っていただいた甲斐はある作品になっています。