これがもし、次号予告されるとしたら…。

 

「藍思追、ついに反抗期!?」

 

…というキャッチコピーをつけるだろうな…とちょっとだけ思ったりした(笑)

 

ちょっと想定外に長くなってしまったので…。

時間のある時にゆっくりどうぞニヤリあせる

画像引用元:©Shenzhen Tencent Computer Systems Co.,Ltd.

いい加減、聞き飽きただろうけど、あくまでもイメージ画像(笑)

 

 

『眠れぬ夜にみる夢は。』

 

 

「藍湛」

「何事」

「最近また、俺……よく眠れないんだ……」

 つい先ほどまで健やかな寝息を立て、眠り続けていた魏無羨のその言葉に、藍忘機はどう答えたものかためらった。

「いや……言うな、藍湛。言いたいことはわかってる」

「……あれ以上、どう眠る?」

「眠ってるわけじゃないんだ。俺は頭の中で会話してる」

「人はそれを夢と言う」

 藍忘機の方こそが眠れずにいることに、魏無羨は気づいていない。

 いつもの藍忘機なら、亥の刻に眠りについた後、卯の刻まで目覚めることはないのだ。

「魏嬰……」

 藍忘機が魏無羨の頭に優しく手を乗せ、髪を撫でながら滑らせようとした瞬間―‐。

 べべん……。

 静室の中に、悲しげな琴の音が鳴り響いた。

 忘機琴と交わした約束の一ヶ月はまだ過ぎておらず、二人の寝室は未だ、緊張感に満ちている。少しでもその素振りが見え隠れするたびに、忘機琴の弦が震え、何事かを恨めしそうに訴えてくるのだから……。

 しかし、この声は一体、どこから聞こえてくるのだろう……。

 藍忘機は初め、それを魏無羨の寝言かと思っていた。何故ならそれは、魏無羨が眠っている時にしか聞こえなかったからだ。また莫玄羽の霊識のしわざかとも考えたが、その気配は感じられない。

 眠れない、とつぶやいていた魏無羨が再び眠りに落ちた後……。

 藍忘機は自らの胸に乗る魏無羨の頭をそっと下ろし、寝台を抜け出した。

 

 

 

 やはり、何かの囁き声が聴こえてくる。

 藍忘機は静室の扉を開け、外の様子に耳を澄ませた。

 聴こえてくるのは自然の音ばかりだ。風が木々の葉を揺らす音。川のせせらぎ。夜行性の動物たちが活動する音……。

 夜更かしを是としない雲深不知処では、この時間に人の気配などはありえない。

 満月の明かりに誘い出された、不届きな者たちが闊歩する様子ももちろんない。

 扉を閉め、外の音を遮ってみれば、やはり囁き声は静室内でしているとしか思えなかった。

「…………」

 深い息を吐いて、首を左右に振り、藍忘機が寝台へと戻りかけたその時……。

 からんっ……と音を立てて、何かが転がり落ちた。

「……陳情?」

 魏無羨の愛笛・陳情。

 満月の薄明りがさす部屋で、黒光りするその竹笛を拾い上げ、藍忘機は目を瞠った。

「囁いていたのは、君か……」

 夢の中で主人に語りかけ、何を伝えようとしているのか。

 陳情笛は藍忘機の手の中で、震えているようだった。

 

 

 

「あの……。そろそろ、何かあるたびに私を呼び出すのはやめにしませんか」

 藍思追が珍しく、率直に進言した。

 今度は「『陳情』を問霊しろ」と言う、二人の先達に向かい丁寧に拱手してみせる。

「思追、思追。育ての親の俺が不眠で悩んでるってのに、お前は協力でき……」

「私の育ての親は、含光君です」

 瞳を潤ませた魏無羨の言葉を遮り、藍思追は続けた。

「だいたい、眠れないという割に、なんでそんなに艶々した顔をしてるんですか」

「…………」

「おい、藍湛。お前、もしかして今、鼻で笑ったか」

 かすかに口角をあげたまま、藍忘機が静かに首を横に振る。

「とにかく。私はこれから藍先生のおつかいで、彩衣鎮まで行かなくてはいけないんです。失礼します」

「あ……思追……」

 制止の声を聴かぬふりで去り行く藍思追に呆気にとられながら、魏無羨はそのまま寝台へ突っ伏した。

「藍湛……。思追は反抗期でも迎えたのか。何であんなに機嫌が悪いんだ。俺たちの可愛い阿苑はどこに行った……」

「魏嬰」

「何?」

 藍忘機は寝台に横たわる魏無羨のそばに腰かけ、その手を魏無羨の腰元へと伸ばした。一瞬、何かを期待した魏無羨の瞳が輝く。

 だが藍忘機が触れたのは魏無羨の体ではなく、腰帯へと差された「陳情」だった。

「『陳情』は、君が乱葬崗で作ったものだ」

「……うん。それが、何?」

 期待を裏切られた魏無羨が、若干、不服そうな声をあげる。頭の中で、忘機琴を数回蹴りつけたことは言うまでもない。

「魏嬰……。あの頃に何かあったのではないのか」

 

 

 

 こうして、土の上で独り目覚めるのは、何年ぶりのことだろう……。

 怨気漂う乱葬崗の、大地から突き出した骨の一つを眺めながら、魏無羨は瞼を何度か瞬かせた。

「意外と人は、状況に慣れるもんだよな」

 あの幼い日に、江楓眠に見つけてもらうまではいつも、こんな風に過ごしていたということすら忘れていたのは、幸せという他ない。それはもしかしたら夢を見ていただけで、実際はずっとここにいたのかも……などと考えながら、魏無羨はゆっくりと立ち上がった。

 とたんに、温晁につけられた傷が疼き、うめき声が出る。

「こんな時、藍湛がいてくれたらな……。霊力でさっと……」

「……呼んだか、魏嬰……」

 聴こえるはずのないその声に、魏無羨はハッとして振り返った。

「いてっ」

「魏嬰!」

 慌てて差し出した藍忘機の腕が魏無羨の体を支える。しかし、自分を抱える人物の顔を見て、魏無羨は首を傾げた。

「あんた……誰?」

 聞き覚えのある藍忘機の声。だがその姿は、魏無羨が知っている彼よりもずっと大人びている。それよりなにより、ここは乱葬崗なのだ。なぜ、「生きた人」がいるのだろう……。

「藍湛……だとしたら、お前、玄武洞で別れてから数月で、ずいぶんと老けたな」

「……君が心配させるからだ」

「そんなわけあるかよ」

 目の前にいきなり現れた、仙人のごとき白衣の青年を眺め、ふいに魏無羨はにやりと口元を歪ませた。

「でもちょうど良かった、藍二兄ちゃん。音律術に長ける姑蘇藍氏に相談したいことがあったんだ」

 

 

 

 香の煙りが揺らぎ、藍忘機は目を開けた。

「陳情」が夢の中で語りかけているのなら、魏無羨の夢の中に入ればいい。

 そう考え、久々にあの香炉を取り出してきたのだが……。

 思えば、魏無羨はあの行方知れずになっていた時期のことをあまり話したがらない。藍忘機もまた、今まで聞かずに過ごしてきたが、「陳情」は一体、何を伝えようとしているのか。

「陳情……。まだ君はいなかったように思う」

 枕もとの「陳情」に語りかけ、藍忘機は再び、瞼を閉じた。

 

 

 

「相談とは?」

「俺さ、この乱葬崗の怨気を姑蘇藍氏みたいな音律術で操れないかなって考えてるんだ」

「…………」

 怒りの表情も見せず、静かに頷く藍忘機を見て、魏無羨は眉をひそめた。

「お前……本当に藍湛? 怨気を操るなんて邪道だ、とか座学の時に怒ってなかったか?」

「君は君の思った道を進めばいい」

「……あ……そう」

 拍子抜けしたかのように、魏無羨は言いかけた言葉を飲み込んだ。

 思わず、藍忘機に質問したくなったのだが、思いとどまる。

「でな、藍湛。問題は楽器なんだけど……」

「ふ……」

「俺は、太鼓がいいと思うんだ」

 笛と言いかけた藍忘機の声を遮る勢いで、魏無羨は自信満々に言い放った。

「………………うん」

「おい、藍湛。頼むから、そこは否定してくれよ。世家公子番付第四位たる美男子の俺様が、太鼓なんか叩きながら登場したら、全てが台無しだろ」

さてこれは誰でしょうw ぶっこむにもほどがある太鼓を叩くめいなんず(笑)

「…………」

 しばし、藍忘機は真面目に考え込んだ。

 あまり聞いたことはないが、あってもおかしくはない、と。

「……お前、もしかして、本気で考えてる? 冗談なんだから、やめてくれ。本当はこれで試してるんだ」

 言って、魏無羨が取り出したのは、一本の竹笛だった。

「陳情……」

「……陳情? まだ名前は付けてないけど……。いい名前だな、それ、気に入った」

 本当はなんと名付けようとしていたのか……。右手でくるくると竹笛を回しながら、魏無羨が口笛を吹いてみせた。  

「魏嬰……。なぜ、笛を使わない」

「音が出ない」

 竹笛をぐっと握りしめ、魏無羨は握った右手をそれごと突き出して見せた。

「……音が出ない? なぜ」

「それを相談したい」

 藍忘機は竹笛を受け取ると、呼気を吹き込み、指孔のひとつひとつを確認した。音が出ないわけではなく、音程がずれているだけだとわかり、少しずつ孔を調節していく。

 その様子を眺めながら、魏無羨は軽く咳き込んだ。

「魏嬰?」

「ああ、大丈夫大丈夫。それより藍湛、お前って笛もちゃんと吹けるんだな。さすが、姑蘇藍……」

 その先の言葉が、口からあふれ出す赤い液体に遮られる。

「魏嬰!!」

 遠のいていく意識の中で聴こえてくる、自分の名を呼ぶその声に、魏無羨は心の中で笑い返した。

(大丈夫だって言ってるだろ、藍湛……)

 

<続く>

 

嘘よ (ΦωΦ)フフフ…

読み切りの二次小説を前後編にしたら、苦情がくるかもしれないじゃない(笑)

「魏嬰っ!!!」

っていう藍湛の悲痛な声で、引いてみたかっただけよニヤリキラキラ

 

ちなみに…。

なんで「太鼓」よってか。

誰も信じないかもしれないけど、「太鼓」が先で、「龔俊」は後づけなのよ。←書いた後に、たまたま見つけただけなの。

驚いたので、流れを無視して入れちゃったラブラブ

 

もう何も言わない、イメージ画像←言ってるってか。

 

 温かい光に包まれたような感覚の中、魏無羨は静かに目を開けた。背中や後頭部が柔らかな感触に埋もれ、心地よいゆりかごの中にいるような気がする。

「藍湛……お前、もしかして、膝枕とかしてくれちゃってる?」

 額に当てられた藍忘機の指先から流れ込む霊力の波動が、体の細胞のひとつひとつに溶け込み、体を癒していくのを感じとり、魏無羨は半分夢見心地だった。

「……今のお前、玄武洞で歌ってくれた時と同じ顔してる」

「…………」

「藍湛、実は俺……」

「わかっている。言わなくていい」

「さすが、藍湛。俺が言いたいことがわかるなんてな」

 目覚めていようとする心と、眠ろうとする体がせめぎあい、今の魏無羨はまどろみの中にいる。

「なあ、藍湛……。俺が選んだ道って正しかったと思うか」

「愚問だな」

「…………」

「変えられない過去を気にするより、君は思うように今を生きればいい。それでこそ、『魏無羨』なのではないのか」

 

 

 

 魏無羨が目覚めた時、そこは静室の柔らかな布団の中だった。

 同時に藍忘機も身動きし、目を開ける。

「……藍湛」

「何事」

「『陳情』が何を訴えてたのか、わかったよ」

 枕もとの「陳情」を手探りでつかみとり、魏無羨は藍忘機の目の前でそれを振って見せた。

「何だったのだ」

「その前に……気が付いてたか、藍湛」

「…………?」

 色素の薄い双眸を不思議そうに瞬かせる、藍忘機の両頬に手を添えると、魏無羨はそのまま自らの唇を藍忘機のものに押し当てた。

 忘機琴は静まったままだ。

「藍湛。今日で一ヶ月だ」

 手にした「陳情」を放り出しかけて思い直し、丁寧に置いてから、再び藍忘機へとしがみつく。

「もう眠らせてくれなくてもいいぞ、藍湛」

「……君は……本当に恥知らずだ」

「思うように……生」

 生きてるからな、と紡ぐ時間すら、魏無羨の言葉の出口にはもう与えられない――。

 

 

<終>

 

実は…。

4月8日のこれ上矢印からちょうど一ヶ月ということに突然気づき…。

なんとか完成させてみた(笑)

 

ちょっと急いだので、へんてこりんなところがあるかもしれないけれど、まあ…雰囲気だけで勘弁して

(ΦωΦ)フフフ…

 

これ下矢印と合わせて、三部作おばけ

 

やばい…。

一ヶ月が過ぎたぞ、と笑い泣きあせる

 

また二人のめくるめく、「続きはあなたの心の中で」な日々が戻ってくる…のかもしれない(笑)

 

あ…。

 

『陳情』が何を言いたかったのかは、秘密でも何でもないのだけれど、あえて入れなかった。

たいした理由ではないのよ…( ̄∇ ̄;)ハッハッハ