近年では日本においても東日本大震災、火山噴火、
地震、豪雨、台風など、突発的で甚大な規模の災害が
頻繁に起こるようになって来ています。
このような状況で起こる悲嘆(グリーフ)は、
到底言葉では言い表せない程に大きなものでしょう…

そこで今から5年前ではありますが、
兵庫県こころのケアセンターさんで受講した「悲嘆を学ぶ講座」から、
福島県立医科大学 医学部准教授 
瀬藤乃理子先生が、
ご自身の阪神淡路大震災・東日本大震災の被災地からの経験を元に
どのように災害時の支援を行ってゆけばよいのかをお話くださった、

「喪失の悲しみ、そこからの一歩」 を
ご紹介させていただきたいと思います。

瀬藤先生は医療心理学がご専門で、
悲嘆・複雑性悲嘆のケアおよび治療的介入
対人援助職の共感性疲労とストレス対策
難病の子どもさんとそのご家族の支援を行っておられます。

ご講義では災害時の支援で覚えておきたいこと
被災者がかかえる心理的な問題、気持ちの立て直しに役立つこと、
被災地の支援者の現状、支援の際に役立つこと、
そして支援者が燃え尽きない為のセルフケアの方法など、
多様な面からのお話で、とても学び多い3時間でした。

そのなかでも特に
「あいまいな喪失」という言葉が心に残りました。
アメリカの家族療法家であるPauline Boss博士が提唱された考え方で
9.11のテロ時にも支援を実践されました。

あいまいな喪失とは
 はっきりしないまま残り、解決することも、
 決着を見ることも不可能な喪失体験   であり

身体的には不在で心理的には存在している場合には

「さよならのない別れ」として
行方不明者のご家族がかかえる問題となり、

身体的には(実体は)存在して心理的には不在の場合には

「別れのないさよなら」として
福島の方々や認知症のご家族がかかえる問題となります。

このような場合では
はっきりとした喪失を体験されたご家族とは
別の枠組みでの支援が必要となるそうです。

あいまいな喪失をかかえるということは


「家族の関係性」 に重大な影響が出てきます。

・コミュニティーと疎遠になるだけでなく
 家族の中でも葛藤が起こり、
 コミュニケーションが断絶しやすい
 (お互いの気持ちを表出しにくくなる)

・役割が不明確になる

・意思決定が先延ばしになる
・お祝い事や儀式が中止される  などが起こります。

その結果、複雑化や凍結してしまった悲嘆に対応する為に、
東日本大震災を機に、これまで日本国内で、
「悲嘆(グリーフ)」を専門に、
支援活動や研究を行って来られた方々が集まり、
災害時に遺された人たちを支援するためのプロジェクト


『災害グリーフサポートプロジェクト(JDGS)』が誕生しました。
災害で大切な人をなくされた方を支援するためのウェブサイト、

「あいまいな喪失」情報ウェブサイトが活用されています。
   http://al.jdgs.jp/    (リニューアル版)

正常な反応として自然に消失してゆく悲嘆と違って
23%~47%の割合で複雑性悲嘆が起こるそうです…

喪失からの一歩のため何より大切なことは
 
「希望をもつ」 こと
 そして 
「人とのつながり」であるとして
クローバー

荒川静香さんが金メダルをお取りになられた時の
~ You Raise Me Up ~ を映像で流してくださいました。

この曲は 生と死を考える会でもよく聴かせていただく曲で
東日本大震災時にユーチューブで投稿されましたね
音譜

あなたが励ましてくれるから 山の頂にも立てる
あなたが励ましてくれるから 荒ぶる海も渡ってゆける
私は強くなれるのよ あなたの支えがあれば
あなたが励ましてくれるから 私以上の私になれる

喪失への支援において目指すものとして
 
人と共に生きること(共生)
 個として生きること(自立)


これらを目指して、より多くの人がグリーフ(悲嘆)へ
理解を深める「コミュニティ・ベース介入」が必要であり、
それは平時にできない事は、災害時にはできないもので、
グリーフ(悲嘆)への理解の浸透が望まれることを
今後の課題のまとめとしてお話されました。

大切な人やものを喪失されて…どんなにお辛い境遇にあっても、
人とのつながりが何らかの気づきや安らぎ、癒しに繋がってゆく。
そこから何らかの希望が生まれてゆくことの大切さを、
また深く学ばせていただけた日でした 
星 (*^_^*)