第20回生と死を考える市民フォーラム。
 「認知症の介護と医療
   -住み慣れた尼崎で笑顔で暮らす-」

長尾先生に続いての特別講演は


 『感情に働きかけるケア
   -あなたらしさは、ここにある』


株式会社あおいけあ
代表取締役 加藤忠相氏のご講演でした。

東北福祉大学社会福祉学部社会教育学科をご卒業後、
横浜の特別養護老人ホームに就職された加藤氏は、
介護現場の現実にショックを受けられ3年後に退職。
25歳で平成13年に株式会社あおいけあを設立。

「グループホーム結」「デイサービスいどばた」
平成19年より小規模多機能型居宅介護「おたがいさん」
25年にデイサービスを小規模サテライト事業に切り替え、
29年には「おとなりさん」を開所されました。

2016年にはNHK「プロフェッショナル
~仕事の流儀~“あなたらしさ”は、ここにある」
昨年は映画
「ケアニン~あなたでよかった」
映画
モデル事業所としてなど、
メディアでも数多くご紹介されています。

壇の上は慣れていないので…と
すぐに客席に降りられた加藤さんは、

「良い介護人材とは?」「成功事例とはなんなのか?」
様々なエピソードを交えてお話くださいました。

キャリアや肩書きで仕事をしているのではない。
実際にご自身は何の資格も持っておられないそうです。


『目の前の人にやれることをやる』

マニュアルはない。
その人がやりたいことを最期まで支える。

「俺は死ぬまで自分の足で歩く」
「人に迷惑はかけたくない!」
「皆があって自分がいる、俺のやれる事はなんでもやる!」

そう仰っていた方が、ある日余命半年と宣告を受け、
治療はしないで痛みを和らげる緩和ケアを受けながら、
ご家族・訪問医療&看護・いどばたさんの連携により、
いどばたの頼れるお父さんとして日々を過ごされました。

最期がそう遠くないと思われた頃
昔訪れた温泉に行きたいと仰った時、
何かあったらどうする?と躊躇するものですが、
「介護の仕事は何か有るもの」として、
スタッフの方は加藤さんに相談することもなく、
行って来ます~と、早速お二人で出発されました
温泉

もうほとんど食べられなかったその方が、
温泉に何回も入り、お料理も美味しく召し上がって、
ビールまでお飲みになる程楽しいご旅行となりました♪

旅行から帰宅して5日後に旅立たれましたが、
2日前まで、いどばたさんに来てお風呂にも入るなど、
その方らしい穏やかな最期を過ごされたそうです。

ケア(自立支援)とは何か?
ケアをする人とは何か?

① 回復を目指す
② 現在の機能を保つ
③ 上記が出来ない時には最期まで支える
④ それとも害を与える!?

現在の介護状況では
残念ながら④が多くなっているとのこと…

新しく開設準備をしている施設の写真、
よくある施設のリビング写真を見ながら、
どんな風に感じますかと問い掛けられました。

機能的効率的に配置された机と椅子。
そこは利用者さん側ではなく、
施設側の目線で作られています。

あおいけあさんでは来られる方々が、
誰に何を強いられることなく、
普通のお家のような一軒家で
それぞれに日々を楽しく過ごしておられます
音譜

寿命が延びて年々増えている認知症は
病名ではなく“症状”であり、
症状が見えにくいため無理解が起こります。


「アルツハイマー・脳血管性・レビー小体病」

①原因病 脳の細胞が死ぬ

②症状:中核症状  
  記憶障害・見当識障害・理解・判断力の障害
  実行機能障害・その他

③行動:周辺症状・随伴症状
  不安・焦燥:うつ状態:幻覚・妄想:徘徊
  興奮・暴力:不潔行為:せん妄
  性格・素質・環境・心理状態により、
  状況に対応できないために起こる。

介護の専門職の方々による管理的業務マニュアルでは、
決められた時間での食事やトイレ、鍵をかけたり、
向精神薬処方等で症状が悪化してしまうので…
その方に寄り添う、その人らしさを尊重した自立支援、
存在意味や安心と感じられる支援をする為には、
アセスメント・情報を得ることが大事になります。

あおいけあさんでは、心地よいと感じられるような、
“ゆらぎ”を大切にされているそうです
音譜

「記憶の種類から考えるケアのありかた」

①意味記憶
②エピソード記憶
  前後の記憶と繋がっている:障害されやすい×

手続き記憶=自分らしさの源泉
  体が覚えている:障害されにくい○
プライミング(呼び水)記憶

手続き記憶と呼び水記憶を
どんどん使ってもらえるように働きかける。
その為に
「マニュアルがない」

18年間もそうやって来ているが、
お料理や大工仕事など作業をされるなかで
指を切った方を一度も見たことがないとのことです☆

施設の利用者さんはスタッフさんにお世話になりながら、
その方が出来ることで地域・社会に参加=社会資源となる、
おたがいさんケア=自立支援を促しておられます。
お年寄=被介護者ではなく、社会資源として楽しんで頂く♪

駄菓子屋さんをされていた女性の元には
ご近所の子どもさんたちが買いに来たり、
地域の方々がいつも訪れています
クローバー

特別な場所ではない開かれた日常生活。
新しく併設されたカフェとレストランでは、
不登校の経験や発達障害がある方が働いておられます。


『“支援”と“支配”は違うのです。』

私達はクオリティ・オブ・デスの為の杖になりたい。

溢れる熱意に惹き込まれた加藤さんのお話は、
昨今起きている痛ましい出来事等から
介護に抱かれがちなイメージを払拭し、
最期までその人らしく生きることを支えてくれる、
尊いお仕事であることを改めて感じさせくださいました☆

今年の秋には「ケアニン」のスピンオフ映画

『『ピア~まちをつなぐもの~(仮題)』が制作決定。

~最期の願いは、この場所で僕たちが支える~
在宅医療と介護・他職種連携・看取りがテーマだそうで、
こちらの作品も今からとても楽しみです
ドキドキ (*^_^*)