金曜日の夜は大阪で開催された、
JR西日本あんしん社会財団さん主催第5回いのちのセミナー

 
『生きる力 ~愛(かな)しみと共に生きて~』 と題して

大阪教育大学付属池田小児童殺傷事件被害者遺族であり、
精神対話士・グリーフケアワーカー・スピリチュアルケア師の

本郷由美子氏のご講演を聴かせていただきました。

本郷先生は2001年に大阪教育大学付属池田小学校で、
当時小学2年生だった愛娘の優希ちゃんを亡くされました。


「犯罪に巻き込まれることとは」

・理不尽な暴力によって罪のない犠牲者がでる
 → 家族は最愛の人を喪失

・非自然死・突然死・暴力的な死
  他者によって奪われる「いのち」は、
  人間の条件として最も悲惨な死の一つと言われている
  検視などが行われ、自分の知っている姿で戻って来ない為に
  その死を受け入れ難い

・家族は犯罪被害者遺族と言う代名詞がつき
 レッテル・スティグマという偏見に苦しむ
 → 社会復帰が容易ではなく孤立する

  運の悪い人と思われたり、
  実際にお塩を巻かれたりしたそうです…。

被害者遺族には、克服しがたい喪失と言う遺産が残される
直接の一次被害・周りから傷つけられる二次被害、
一次二次が繰り返されるプロセスで生じる三次被害、、
裁判など長期にわたる手続きに巻き込まれるなど、
事件直後から様々な難題と苦悩が押し寄せました。

愛する人の喪失は、役割・環境・当たり前の日常、
何より「生きる基盤」の喪失となり、
被害者に必要な支援は、生活・医療的・司法的・経済的、
そして、とても大切な心理社会的支援です。

「子どもを亡くした親を呼ぶ言葉はない」
その痛みを言葉で表すことができないからだ。
            (NY M.ブルームバーク市長)

「愛児を失うと、親は人生の希望を奪われる」
             (E.Aグロマン)

優しい希望という思いを込めて名づけられた優希ちゃんが
ほぼ即死だった傷を負いながらも歩いた68歩…
その痛みがわからないことが苦しく、
本郷先生は優希ちゃんの足跡を何度も何度も辿られました。

そしてある時、ひまわりのような笑顔で
優希ちゃんが廊下を走って来た姿が見えた!
ヒマワリ
最後まで希望を捨てずに歩き続けた娘に、
「人にはこんなに生きる力があるんだ」と、
先生は生きること、前を向いて歩くと誓われました。


『精神的な「いのち」=愛(かな)しみと共に生きる』
愛する優希ちゃんから「生きる力」を教えられました。

一番最初に読まれた「突然の死とグリーフケア」
の著者である柳田邦男先生は
『悲しみは真の人生の始まり』と
お言葉を贈ってくださったそうです。

かなしみ悲嘆がいろんな人の思いやりを戴いて、
グリーフケアとなり、優しい愛(かな)しみに変化しました。

優希ちゃんを失って灰色のスローモーションの世界となり、
音も味も感覚さえも無くなってしまっていた日常に
下の娘さんが空にかかる虹を見つけた時に発した、
「ママ ゆきちゃんがお空にお絵描きしているよ!」 
虹
その言葉を聴いて、虹を綺麗だと美しみ、色彩を取り戻して、
魂や心の奥に変化を感じられました 
星

息…生きている。息…自らの心 
生きている! 心が動くことなんだという「いのちの自覚」
こころのドロドロが溶けてゆき、
支えてくれた人たち、子どもたちの笑顔が浮かんで来て、
「ありがとう!」と感謝の言葉があふれてきました。
そして先生はご自身の悲しみと向き合ってゆかれました。

人が人を傷つける、人を救うのも人である。
   殺人とは、人が人を殺めること…

ずっと見守り支えてくれた友人・知人など、
ピアサポート・地域の人・学校関係者・有識者・支援者…
…悲しみを通したからこそ出会えた人々・絆


『ただそこにいてくれた 話を聞いてくれた
 他者の力をかりながら
 解決できないことと折り合いをつけていくことができた』


・寄り添う… 
  人は互いに存在を送り(贈り)合うことで
  自分を認められる。        (鷲田清一氏)

・支えるとは…
  その人の心の揺れを一緒に感じて治まるまで一緒にいる
  心の揺らぎが穏やかに安定できること、
  平穏になれることを一緒に見つける。


『グリーフケア(悲嘆のプロセスをサポート)』とは…

・その人なりに「かなしみ」と折り合いをつけていくプロセス
・その人が持っている力を信じて支える
  悲嘆力は生きる力・希望となる
・その人が自分らしいあり方を見いだしていくプロセスを支える
  今見えていないところまで想像し寄り添う

会場で活動の紹介として映し出された映像は
以前にもTVニュースで拝見したことがありますが、
穏やかな優しい眼差しとお声で包み込むように、
目の前の方に向き合っておられるお姿が印象的でした。

先生が辛く苦しい時に
同じ立場の先輩ご夫妻にして戴けたように、
手を握る・肩に手を添えることで、
何も言えないような時でも「私は此処にいます」と
命の振動は伝わり支えを感じられるのです。


人は共感と言う「糸」でつながれる

どんな人でも「その人にしかできない事がある」
誰がどう関わるか どんなプロセスを経て行くかが
「その後の人生や生き方に影響する」

わたしたちは共生(共に生きる)・共育(共にいのちを育む)
生きる力(レジリエンス)を与えあっている

「いのち」とは自分の使える時間  (日野原重明氏)

その時間(いのち)を自分のためだけでなく
他者と分かち合っていきたい。


「生きる」とは、たくさんの「いのち」と繋がりをもつこと

本郷先生は戴いたたくさんの『恩おくり(送り贈り』を
生きることをつないでゆくというお気持ちで、
事件や事故の被害者、東日本大震災の被災者の方々や、
身近な人を亡くした方の悲しみに寄り添う活動のほか、
いのちの重さ・大切さを伝える講演を
学校や教育関係者などに行われています。
ご著書に「虹とひまわりの娘」(講談社)などおありです。

また2016年からは、
学校の先生になりたかった娘さんの夢を引き継がれて、
学童保育の指導員も務めながら、
子どもさんたちの「いのち」を見守っておられます。
「ただいま」に「おかえり」に心を込めての送り迎えです。

そして
グリーフパートナ-歩み 代表   
グリーフサポートやまぐちのスーパーバイザーなど
多岐にわたって活動をなさっています。

「いのちを守ることを求める側から求められる側」へ。
両方の立場になるからこそ見えることもある


~かなしみは、愛(かな)しみと共に生きる力になる~
救える人を救う一助の人でありたい

本郷先生の思いは温かい灯となり
多くの方々の支えとなっておられるでしょう 
ラブラブ

人によってもたらされた、
言葉にすることが出来ない程の悲しみも…
また人によって救われ支えられてゆきます。

大きな希望と勇気を戴けた深い学びの夜でした
乙女のトキメキ (*^_^*)