NORIKUMAです。

 

 

 

今回は、かなりマニアックな事案だ。固定資産税等は「賦課期日である毎年一月一日現在登記簿上に所有者として登記されている者は、真実の権利関係の如何にかかわらず、それだけで当該年度の固定資産の納税義務を負うというべきである。(福岡地方裁判所昭和56年4月23日)」とされている。

 

 

 

それでは、1月1日に譲渡したらどうなる。

 

 

 

というか、1月1日に譲渡しても、登記所休みだから、その後に登記するんじゃないの。えー

 

 

 

皆さんは、もし顧問先から、こういう質問されたら、どう答えますか。

 

 

 

東京都の某都税事務所長は、東京法務局から、本件家屋について、原因を「平成31年1月1日売買」、義務者を請求人とし、権利者をA社とする所有権移転登記がなされた旨の登記済通知書を受けた。

そして、本件家屋に係る平成31年(令和元年)度分の固定資産税等の賦課決定を行い、固定資産税等の納税通知書を請求人に送付している。

 

 

 

これに対し、請求人は、

「本件家屋を平成31年1月1日にA社に譲渡しているとこから、本件処分により、家屋に係る固定資産税等を請求人に賦課することは誤りである。

 また、本件家屋は、譲渡に際しての売買契約書に基づき、平成31年1月1日にA社に引渡し済みである。

 そして、譲渡に伴う移転登記は、平成31年1月1日付けで登記済みであるが、当該所有権の移転登記手続は、1月1日に登記所が休みであるために、1月8日に登記申請を行ったものにすぎない。」

 

 

 

 

一方で、処分庁は、

「請求人が、平成31年(令和元年)度賦課期日(平成31年1月1日)時点において、本件家屋の所有者として登記されていた事実が認められる以上、請求人に対して行った本件処分は適法な処分である。」

 

 

 

審査庁は、下記理由により請求を棄却する裁決をしている(R2.1.21 TAINS:F0-7-050)。

 

① 法令解釈

「地方税法359条によれば、固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とするとされており、また、法702条の6によれば、都市計画税についても同様とされている。すなわち、固定資産税等の納税義務者、課税客体、課税標準等の課税要件は、賦課期日現在の状況によって確定されるものである。」

 

 

 

「法が固定資産税等の賦課について台帳課税主義を採用したのは、「徴税機関をして一々実質的所有権の帰属者を調査させ、所有者の変動するごとにその所有期間に応じて税額を確定賦課させることは、徴税事務を極めて複雑困難ならしめるものであることにかんがみ、徴税の事務処理の便宜上、納税義務者の判定にあたつては、画一的形式的に登記簿上の所有名義人を所有者として取り扱えば足りるとしたものであり、こうした地方税法の規定に照らすと、賦課期日である毎年一月一日現在登記簿上に所有者として登記されている者は、真実の権利関係の如何にかかわらず、それだけで当該年度の固定資産の納税義務を負うというべきである。」(福岡地方裁判所昭和56年4月23日)とされている。」

 

 

 

② 本件への当てはめ

「処分庁は、本件家屋について、平成31年(令和元年)度分の固定資産税等の賦課期日(平成31年1月1日)現在、請求人が登記簿上の所有者名義人として登記されていると認めたことから、令和元年6月3日付けで、請求人を名宛人として、本件処分を行ったことが認められる。

 また、本件処分における固定資産税等の税額の算定について、違算等も認められない。

 そうすると、本件処分は、法令等の定めに則ってなされたものといえ、違法・不当な点は認められない。」

 

 

 

③ 請求人の主張について

「固定資産税等の賦課については、徴税事務処理の便宜上、賦課期日である毎年1月1日現在、登記簿上に所有者として登記されている者は、真実の権利関係の如何にかかわらず、それだけで当該年度の固定資産の納税義務を負うとされているところ、請求人は、賦課期日現在の本件家屋の所有者として登記簿に登記されている者であると認められることから、本件家屋に係る平成31年(令和元年)度の固定資産税等の納付義務を負うべきものといえる。したがって、請求人の主張には理由がないというほかない。

 なお、本件家屋に係る請求人からA社への所有権の移転登記は、請求人が自認するとおり、平成31年1月8日の受付の登記申請であるところ、登記所において、同申請に基づき、原因を同月1日売買として遡及的に登記したにすぎないものであるから、このことをもって、本件賦課期日現在、A社を本件家屋の所有者として認めることができないことは、明らかというべきである。」

 

 

 

 

固定資産税をなんとなく1月1日の所有者に課せられると思い込んでいた。しかし、法解釈をきちんと読むと「毎年一月一日現在登記簿上に所有者として登記されている者」が正しいらしい。

 

 

 

 

つまり、本当に平成31年(令和元年)の固定資産税等を払いたくなければ、その前年の12月最後の登記所がやっている日までに、登記申請をしなければならないということか。

 

 

 

今回のケースでは、請求人は、平成31年(令和元年)の固定資産税等が賦課されるとは思わなかっただろうから、固定資産税等の清算もしていなかっただろう。

 

 

 

知っているのと知らないのでは、大違い。

 

 

 

NORIKUMAクマ