NORIKUMAです。

 

 

 

確定申告後にぞくぞくと更正処分のニュースが入ってきた。通信回線サービス会社が「連結納税制度」について申告漏れを指摘された事案では、不服審判所に審査請求しているとのこと。

そのほかにはサッカーの外国選手が「居住者」か「非居住者」か。

 

 

 

いろいろあるね。えー

 

 

 

さて、本日は、久しぶりの事前確定届出給与。お久しぶりすぎて、前回はいつだったのかわからないくらいだ。

 

 

 

 

事案の概要から。

本件は、審査請求人が、事前確定届出給与として所轄税務署長に提出した届出書に基づき支給した給与の額及び請求人が外国から課された罰金を分割払したことによる利息の額を、それぞれ支払った事業年度の損金の額に算入して法人税の申告をしたところ、原処分庁が、当該役員給与は過去の職務執行の対価であることから事前確定届出給与に該当せず、また、当該利息は罰金に相当するものに該当するから、いずれも損金の額に算入できないとして、法人税の更正処分をしたのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

 

 

 

 

個人的には、後者の罰金を分割払したことによる利息も興味深い。罰金の利息は、罰金か。審判所は、いや、利息は利息でしょ。と処分を取り消した。

 

 

 

さて、メインの事前確定届出給与だ。これ、先日某所で、弁護士さんから最近こういう裁決・判決がありました・・・というセミナーを受けた時に紹介されていた裁決。聞いてもよくわからなかった。だって、事前確定届出給与って、事前の話しでしょ。それがどうして課税庁の過去の職務執行の対価として処分になるのか。

 

 

 

この会社は、定款で取締役の報酬等については株主総会において定めるとしており、定時株主総会において、その総額上限額を決め、各取締役の支給額等については取締役会に一任することとしていた。

そして、問題となった事業年度については、各取締役会と同日に開催された定時株主総会で取締役として選任(再任)された代表取締役等の金銭交付分の支給額及び支給時期について決議し、1月以内に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、その届出書により届け出たところに従い、各取締役に役員給与を支給し、その支給の日の属する事業年度の損金の額に算入したとのこと。

 

 

 

 

これの何が問題なんですか。えー

 

 

 

 

課税庁が問題としたのは2点だ。賞与の決定方法と経理処理。

賞与の決定方法については、この会社はグループ法人の一員で、グループの親法人がグループ企業に属する一定の役職にある取締役及び従業員を対象とした賞与の支給方針を設けていて、請求人も、対象者に対し、定額報酬ないし基本給に加え、グループの親法人から請求人へ連絡される金額の金銭を賞与として支給することとしていた。そして、支給額を算出し、その事業年度の翌事業年度の7月及び1月にそれぞれ半額ずつ支給していたとのこと。

 

 

 

経理処理は、請求人は、翌事業年度の支給額を見積もり、賞与引当金を計上した上で、翌事業年度に支給する際に、その賞与引当金を取り崩す会計処理をしていた。

 

 

 

引当金について、課税庁側は次のように主張している。

「役員賞与引当金に関して定める会計基準等によれば、役員賞与引当金の計上は、計上する事業年度の職務についてすることが要件であるところ、請求人は、算出された役員給与について、役員賞与引当金を計上し、支給時にこれを取り崩す会計処理をしていたのであるから、本件各役員給与に係る職務執行期間は過去のものである。」

 

 

 

 

会計基準はよくわからんが、それをいうと他の引当金もダメなのか。まさか・・・。

 

 

 

 

まさかえー

 

 

 

 

いや、審判所は、下記のように判断して、納税者の請求をすべて認め、処分をすべて取り消した(R5.2.3 TAINS:F0-2-1196)。

 

① 法令解釈

「本件においては、各役員給与が当職務執行期間における職務執行の対価であるか否かが争われているところ、請求人においては、役員給与の各人への支給額等の決定権限は、株主総会から取締役会に適法に委任されており、各取締役が選任(再任)された定時株主総会と同日に開催された取締役会において、各役員給与の支給内容が決定されたことについて、当事者間に争いはなく、当審判所の調査及び審理の結果によっても、その事実が認められる。そうすると、本件各役員給与が当職務執行期間における職務執行の対価であるか否かは、取締役会が各役員給与を当職務執行期間における職務執行の対価として決定したか否かによって判断すべきである。」

 

 

 

 

② 本件への当てはめ

「まず、取締役の報酬等の額については、毎事業年度の終了後一定の時期に招集される定時株主総会の決議(本件においては株主総会から委任を受けた取締役会の決議)により、次の定時株主総会までの間の取締役の報酬等の支給時期及び支給額が定められるのが一般的であるところ、請求人の定時株主総会と同日開催の取締役会の議事録には、各役員給与をいつの職務執行に対する役員給与として決定したかを明確に示す記載はないものの、各役員給与が過去の職務執行の対価であることをうかがわせる記載もなく、むしろ、請求人が、各役員給与を、同日開催された定時株主総会で選任(再任)された各取締役を対象に、当職務執行期間における職務執行の対価と認められる毎月の定額報酬の額と合計した上で承認していたことからすれば、本件各役員給与は毎月の定額報酬と同様、当職務執行期間の職務執行の対価として決議されたと考えるのが自然である。」

 

 

 

「請求人における〇〇の運用実態からみても、各取締役の過去の職務執行開始時点において、内容のとおりに報酬等を支給することが確定していたとはいえず、請求人が当職務執行期間における職務執行の対価として具体的な報酬等の額を決定するための指針ないし参考情報にすぎないといわざるを得ない。

 こうしたことからすれば、本件各役員給与の支給額の算定に当たり、直ちに過去の職務執行の対価であるということはできない。」

 

 

 

③ 結論

「本件各役員給与については、法人税法施行令第69条第4項に規定する届出期限までにその定めの内容に関する届出がされ、その届出内容どおりに支給されたと認められる。また、各役員給与は、その支給時期が7月及び1月であるから、定期同額給与に該当せず、業績連動給与にも該当しないから、本件各役員給与は、事前確定届出給与の各要件を充足すると認められる。」

 

 

 

 

 

問題の賞与引当金のことはどう審判所は、判断をしているのだろうか。

「引当金の会計処理は、企業会計原則の定める要件や諸原則に即して行われる企業の会計上の判断であって、取締役会の決定内容を直接明らかにするものではないから、請求人が、本件各役員給与は引当金計上の要件である「将来の特定の費用‥であって、その発生が当期以前の事象に起因し」を充足していると判断して、引当金を計上し支給時にこれを取り崩す会計処理をしたとしても、その会計処理をもって直ちに本件各役員給与に係る職務執行の時期が判断できるものではない。

 また、△△については引当金処理をしているにもかかわらず、××については引当金処理をしていないことからも、請求人の引当金処理が本件各役員給与に係る職務執行の時期を反映したものということはできない。

 したがって、これらの点についての原処分庁の主張には理由がない。」

 

 

 

 

引当金を計上して取り崩しているから過去の職務執行の対価っていわれると、うっかり引当金も繰り入れられない。

 

 

 

ただ、中小企業などは、再任されることが多いので、「取締役会が本件各役員給与を当職務執行期間における職務執行の対価として決定したか否かによって判断すべきである。」との法令解釈からすると、しっかり取締役会議事録等で対処となる職務執行期間はいつかを記載して残すしかない。

 

 

 

 

いや、ここで誰も問題としていないが、そもそも付表に職務執行期間を記載して提出する。じゃあ、これはなんなんだ。

 

 

 

 

国税庁の記載要領等では、「「事前確定届出給与に係る職務の執行の開始の日(職務執行期間)」欄には、「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」に係る職務の執行の開始の日(定時株主総会の開催日など)及び職務執行期間(定時株主総 会の開催日から次の定時株主総会の開催日までの期間など)を記載してください。」

 

 

 

 

 

ここの職務執行期間での判断でなく、実質基準で判断しますとのことか。

 

 

 

 

 

 

「取締役会が本件各役員給与を当職務執行期間における職務執行の対価として決定したか否かによって判断すべきである。」であるから、無駄な争いを避けるためには、取締役会議事録等の記載と調査時の丁寧な説明が大切か。

 

 

 

 

「丁寧な説明」って、どこぞのだれかの口癖だったわ。

 

 

 

 

NORIKUMAクマ