NORIKUMAです。

 

 

 

今日は、今は税理士業界では忘れ去られている簡易課税の事業区分の話。実務的にもほぼ出会わないが、そのため、たまに簡易課税の事案があると非常に迷う。

 

 

 

事案の概要は下記のとおり。

本件は、株式会社Aとの契約によりB店の「生そばうどん」コーナーを運営する原告甲が、平成27年から平成29年までの各課税期間に係る消費税等について、原告の上記事業は消費税法施行令57条5項6号(平成26年政令第141号による改正前は同項5号)の第四種事業に該当するとして確定申告をしたところ、福岡税務署長から、本件事業は同項4号の第五種事業に該当するとして、上記各課税期間の消費税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたため、被告を相手に、本件事業は飲食店業であり第四種事業に該当すると主張して、本件各更正処分等の取消しを求める事案である。

 

 

 

 

国税庁のHPでも、第4種事業の説明で「第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業などです。」なんて堂々と書いてあるしね。そりゃ、4種で申告するわ。えー

 

 

 

 

実際にA社とどういう契約を結んでいたのかが問題となる。

甲は、平成22年4月1日、A社との間で、本件店舗の運営に関し、「(株)A荒利益折半契約書」に係る契約を締結した。その後、甲は、A社との間で、以下の書面を取り交わし、本件契約を順次更改した。

・平成23年4月1日付け「平成23年度営業委託契約書更改覚書(荒利益折半契約)」

・平成24年2月21日付け「平成24年度営業委託契約書更改覚書」

・平成25年2月26日付け「平成25年度契約更改誓約書」

・平成26年2月25日付け「平成26年度営業委託契約書更改覚書」・・・以下、毎年「営業委託契約書更改覚書」を交わしている。

 

 

 

 

そして、甲は、平成23年3月14日付けで、福岡税務署長に対し、簡易課税制度の「適用開始課税期間」を「自平成24年1月1日至平成24年12月31日」、「事業の内容」を「サービス業」、「事業区分」を「第5種事業」と記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している。

 

 

 

なんや、「第5種事業」という自覚があったんやないか。えー

 

 

 

 

ただ、原告は、本件事業は消費税法施行令57条5項6号に規定する第四種事業に該当するとして控除対象仕入税額を計算して確定申告を提出している。

 

 

 

裁判の争点は、本件事業が第四種事業と第五種事業のいずれに該当するかであり、具体的には、「飲食店業」に該当するか否かということだ。

 

 

 

福岡地裁は、次のように判断をして、甲の請求を棄却している(R3.714 税務訴訟資料に掲載されていますので、誰でも無料で読むことができます)。

 

① うどん店の経営の実態

 

「本件会社が展開するうどん事業の店舗は、本件会社の直営店と、個人事業主との間で「荒利益折半方式」と呼ばれる契約を締結し、当該個人事業主に運営を委託している店舗の二つに分かれている。本件店舗は後者に該当し、契約の形態は、本件会社が行う飲食サービスのために「荒利益折半方式」と呼ばれる契約を締結して店舗運営等を委託し、対価として営業委託料を支払うというものである。

 「荒利益折半方式」では、契約書に定めた方法で営業委託料を計算し、これを本件会社が受託者(本件では原告)に対して支払う。原告が受託している業務は、店舗運営、調理業務、原材料の発注業務、売上金の回収業務、従業員の管理及び店舗のクレンリネスの維持等である。

 原告は、店舗の運営に必要な人件費を負担している。他方、本件会社は、仕入れに係る経費のほか、水道光熱費並びに店舗運営に必要な建物、設備、厨房器具、備品及び什器等の人件費以外の経費を負担している。

 本件店舗における売上げは、会計上、全て本件会社の売上に帰属する。他方、原告の売上は、契約に基づき本件会社から支払われる営業委託料により構成されている。」

 

 

 

② 本件事業が飲食店業に該当するか

 

「消費税法基本通達13-2-4が、消費税法施行令57条5項4号の規定により第五種事業に該当することとされているサービス業等の範囲は、おおむね標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定する旨定めていることも踏まえると、「飲食店業」とは、主として客の注文に応じ調理した飲食料品、その他の食料品又は飲料をその場所で飲食させる事業をいうものと解するのが相当である。」

 

 

 

「本件事業は、原告が、会社の指示に従って、店舗における調理業務、原材料の発注業務、売上金の回収業務、従業員の管理、店舗のクレンリネスの維持等を含む店舗の運営に係る一連の業務を遂行することにより、本件会社から、上記業務遂行の対価として営業委託料を受領することを内容とする事業であるといえる。すなわち、原告は、対価の支払者たる本件会社との関係においては、店舗の一連の運営業務の遂行という役務を提供している(主に人件費の負担による労働力の提供)のであって、注文に応じ調理した飲食料品等をその場所で飲食させるという役務を提供している(原材料費等の負担による飲食料品及び飲食の場の提供)とはいえない。また、本件契約の条項等からすれば、原告は、店舗の運営業務を委託されているものであって、本件会社と共に店舗の経営を行っているとはいえない。

 したがって、本件事業は、「主として客の注文に応じ調理した飲食料品、その他の食料品又は飲料をその場所で飲食させる事業」に該当するものとはいえず、飲食店業には該当しない。」

 

 

 

③ 結論

「上記のとおり、本件事業は、飲食店業には該当しないから、消費税法施行令57条5項4号ハにいう「サービス業(飲食店業に該当するものを除く。)」に該当するものとして、第五種事業に該当すると認められる。」

 

 

 

 

この事案は、令和4年1月13日に福岡高裁で控訴棄却が、令和4年6月10日で最高裁の不受理で確定している。

 

 

 

控訴審では、甲は「控訴人の課税売上げは、顧客からの商品の代金(資産の譲渡の対価)ではなく、店舗における控訴人の運営業務の遂行としての役務(サービス)の提供の対価である業務委託料ではあるものの、控訴人は、店舗における調理業務、原材料の発注業務、売上金の回収業務を行っているのであるから、本件事業が飲食店としてのサービス業(第四種事業)に該当することは明らかである。」と主張した。

 

 

 

しかし、福岡高裁は、「控訴人と本件会社との間の契約に照らせば、本件事業は、対価の支払者たる本件会社との関係において、店舗の一連の運営業務の遂行という役務を提供しているというべきであり、店舗を訪れる客から対価を得て調理した飲食料品等を店舗において飲食させるという役務を提供しているのは本件会社であって、控訴人ではないといえるから、本件事業は飲食店業には該当せず、第五種事業に該当する。」

 

 

 

 

確かに甲さんの売り上げの状況をみると、飲食業としての食事の提供によりお客から対価をいただくというのでなく、A社からの営業委託料なのだから、裁判所の判断のとおりと思う。

 

 

 

 

甲さんからすると、やっているのは飲食店だろ・・・という言い分も分かるが、契約書とそして売上の実態からすると、致し方ない。

 

 

 

 

そういえば、飲食業は一部こういう業態・・・実態が多くなっていたが、インボイス導入後も同じなのだろうか。消費税対策が、そのうち対策にならなくなっていって、結局はあらたな消費税対策を目指す。

 

 

 

 

インボイス導入により、業態もどんどん変わっていく現実。

 

 

 

 

NORIKUMAクマ