NORIKUMAです。

 

 

 

先週からEテレのソーイングビーが準決勝を迎えた。準決勝のテーマは日本。司会者が「時間どうりに電車が来る国」と言っていた。そうか、日本って、そこなんだね。

 

 

 

 

さて、本日は、更正の請求の判決をご紹介。

事案は、一時期問題となって破産会社となったところの破産管財人が更正の請求をしたのだが、結果、更正の請求の立証が不十分のため認められなかったというもの。更正の請求が認められれば債権者に配当ができるのに、残念だ。

 

 

 

 

早速、事案の概要から。

本件は、破産手続開始決定を受けたA社(破産会社)とその顧客との間で「オーナー制度」という仕組みの下でされた取引のうち「Aコース」(以下「本件取引」という。)の実態は金銭消費貸借契約に基づく顧客からの預り金であるのに、出資法などの関係法令に違反していないよう装うため、破産会社において会計上買戻特約付売買契約であるかのように処理し、これに基づいて平成26年7月期から平成30年7月期までにおける法人税等の確定申告を行っていたと主張して、破産会社の破産管財人となった原告が、本件取引は金銭消費貸借契約であって課税取引には当たらないこと等を理由に、本件課税期間の消費税等及び法人税等に係る更正の請求を行った事案である。

 

 

 

 

〇〇ちゃん農園などを展開し、後に出資法違反などで警察の捜索などを受けた会社だ。破産手続開始決定を受けたが、いままでの経理処理が誤りであるとして更正の請求をした。

 

 

 

 

判決文には、その取引と経理処理について、詳しく記載されている。

この取引(Aコース)においては、顧客との間で買戻特約付売買契約に係る契約書を作成し、法形式上、対象商品の所有権を買主(顧客)に移転し、決められた日に売買代金に一定額を加えた金額で買い戻すという形態の下に顧客との間で資金をやり取りしていたとのこと。つまり、所有権の移転時は、売上げとして、買い戻しは、仕入として計上していた。

 

 

 

 

ただ、後に出資法違反で捜策されているように実際の取引としては、1口5万円を払い込むと、半年後に5万4750円の振込金を受けられる契約となっていて、買戻特約付売買契約の形態を取っているものの、顧客はその商品を受け取ることはなく、破産会社が商品を仕入れているのか、あるいは、仮に商品を仕入れていても、それを顧客のために分離し、分別して管理をしているかも顧客に対し明らかにされておらず、少なくとも顧客はその実態を知ることはなかったとのことだ。

 

 

 

 

また、顧客も商品を購入するというよりも、1口5万円を払い込むと、半年後に5万4750円となる利殖目的だったらしい。

 

 

 

そのため、破産管財人は、売上、仕入として買戻特約付売買契約での処理は間違えで、実態は金銭消費貸借契約なんだ・・として更正の請求をした。

 

 

 

ま、確かに、判決文に記載されている取引の実態をみると、商品のやり取りをする買戻特約付売買契約ではなさそうだ。えー

 

 

 

 

東京地裁は、次のように判断をして、破産管財人の請求を棄却している(R5.2.21 TAINS:Z888-2500)。

 

① 本件取引が金銭消費貸借契約か否か

 

「本件取引について、顧客の中には利殖のための手段であると考えている者があり、買戻し時期が近付くと、最初に支払った金員に一定の金員を付加した金額を受け取ることが可能であった一方で、破産会社から別のオーナー制度による取引についてのDMを受け取り、払込済みの金員を、新しいオーナー制度による取引の払込金に充当することも可能であり、利殖目的の顧客は、新しい取引での払込金と買戻予定額の差額で利得を得ようとしてした。また、破産会社も、本件取引を資金調達のための手段と認識しており、「特別企画ダブルプレミアム」等のキャンペーンを通じて従前の口数を新しい取引にそのまま充当することを顧客に推奨していた上、××の供述等からは、Aコースについて、そもそも対応する商品を準備していなかったことがうかがわれる(破産会社の棚卸資産として若干量の商品が存在したことには争いがないが、その分量からみてBコースや通信販売事業等のものと解して矛盾はないものと考えられるし、当初から願客が注文した商品を仕入れていなかった旨の××の供述も、その文脈からAコースについてのものであることは明らかである。)。

 以上からすると、本件取引の実態は、顧客が一定の金員を破産会社に払い、破産会社が(払い込まれた金額の大半を商品の仕入れではなく資金繰りや人件費等に充当した上で)顧客に対して6か月で1割程度となる払込金と買戻予定額の差額を利息のように支払うというものであり、その限りでは金銭消費貸借契約に極めて類似した実態を持つ契約であったということができる。」

 

 

 

 

「一般に、買戻特約付売買契約は、当該売買の対象物の所有権を買主に移転することにより、担保権を設定するのと同様の効果を生じさせるために用いられることが多いが(なお、買戻特約付売買契約については、その実態に鑑みて譲渡担保と同視することができるものは消費税等が非課税とされている。)、本件取引は、そもそも対象となる商品を破産会社が準備していたかも疑わしいものであり、むしろ、買戻特約付売買契約という法形式を用いることにより、金銭消費貸借契約という法形式を用いることによる出資法との抵触といった不都合を破産会社が回避しようとしたものと考えるのが合理的である。

 以上によれば、本件取引(Aコース)について、少なくとも、シロップに係る契約について、その実質が金銭消費貸借契約にほかならないとする原告の主張には、理由がある。」

 

 

 

 

② 本件課税期間における取引の総額について

 

「原告の主張によれば、顧客の氏名・住所・取引履歴等を管理するためのデータベース(DB)が、オーナー制度による取引をその総額や種別を含めて正確に記録していることとなる。しかしながら、原告の主張によっても、本件DBは、顧客によって内容が書き込まれたはがきのPDFを基に破産会社において手作業で打ち込まれ、必要に応じて更にその後に電話確認等を通じた修正がされたものであることがうかがわれるのであって、顧客の申込内容が機械的にDBに転記されるような仕組みにはおよそなっていなかったものと認められる。

 また、DBの記録の正確性については、その一部についてすら被告の検証を経ておらず、当裁判所もその正確性を検証する機会があったものではない。」

 

 

③ 結論

 

「以上のように、更正の請求の対象となる本件取引等の額について、本件において立証があるといえないから、不明であるというほかない。そうすると、本件取引のうち△△以外の部分について、その全てがこれと同様に金銭消費貸借契約としての実質を備えていると仮定したとしても、本件について更正すべき金額は立証がなく不明というほかないのであるから、破産会社の確定申告について更正すべき理由があるとの原告の主張は、採用することができない。」

 

 

 

 

これ、控訴されているので、控訴審でどうなるのか不明だが、非常にもったいない。

東京地裁は、取引の実質が金銭消費貸借契約であるとの破産管財人の主張は認めているのに、結局、その取引はいくらだったのかの立証が出来なかったため、更正の請求が認められなかった。

 

 

 

 

もったいない。本当に残念。えー

 

 

 

更正の請求が認められて還付されれば、それだけ債権者に返金されるのにと思うといたたまれない。法人税だけでなく、消費税も含めば、それなりの金額になるだろうに・・。

 

 

 

こういう時に、破産管財人という弁護士だけでなく、税理士も集団で訴訟に当たって実務的な部分を担うべきだと思う。この事案では補佐人税理士がひとりいるようだが、実務的な部分は人海戦術も必要だろう。

 

 

 

 

高裁では、この部分の立証ができて、認められるといいけど。

 

 

 

 

しかし、1口5万円を払い込むと、半年後に5万4750円となるとは・・・・。すごいね。えー

 

 

 

 

NORIKUMAクマ