NORIKUMAです。

 

 

 

本日は、いろいろ意見が分かれるかもしれないが、ポイント負担金について。以前、ポイントの原資として受領した金員は、課税資産の譲渡等に該当しないとする判決(令和3年9月29日大阪高裁)があったが、今回のものは、支払った側の話だ。

 

 

 

 

早速、事案の概要から。

ポイントプログラムの参画事業者である請求人が、ポイントプログラムの運営会社に対してポイントの原資負担として支払った金員は、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するとして消費税等の更正の請求をしたところ、原処分庁が、当該ポイントの原資負担金は対価性がないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、請求人が、その全部の取消しを求めた事案である。

 

 

 

 

請求人は、美容室の経営等をする法人。システムとしては、ポイントプログラムの参画事業者の店舗で提供されるサービス(事業者提供サービス)を利用した会員に対し、ポイントを付与し、その会員が付与されたポイントをポイントプログラムの参画事業者の店舗で一定の換算率でサービスが利用できるというものだ。

 

 

 

問題となっているポイントだが、会員がポイントの運営会社を通じてサービスを予約して、そのサービスを利用した場合に付与されたポイント部分だ。請求人のようなポイントプログラムの参画事業者は、自己が会員に提供したポイントの付与の対象となるサービスに対して、1ポイント当たり一定の割合での原資の負担がある。その負担については、請求書により負担する仕組みとなっている。

 

 

 

この場合、単なるポイントの原資負担であれば、令和3年の大阪高裁の判断を基にしても、消費税の対象とならないのではと思われる。ただ、納税者の主張は、「本件ポイント負担金として支払った金員は、名目的にはポイントの原資負担であるが、実質的には予約した会員に対する売上高に応じて発生するサイトの掲載サービス又はポイントプログラムの利用に係る対価として支払う変動費用であるから、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに係る支払対価の額に該当する。」としている。

 

 

 

裁決文には、審判所の判断の材料として①受領側の経理処理(ポイント負担金を消費税法上の課税資産の譲渡等の対価の額としていない、ポイントプログラムの利用の対価の授受はしていない、サービスの利用の対価は、予約額等の基準額に料率を乗じる従量制ではなく、月額の定額制である)と②ポイント負担金の対価性(利用約款等には、ポイント負担金が、掲載サービス又はポイントプログラムの利用に係る対価である旨の記載はなく、請求人との間で、何らかの課税資産の譲渡等の対価であるとする合意があった事実も認められない)点の2つを取り上げている。

 

 

 

上記判断材料を踏まえ、審判所は、下記のように判断して納税者の請求を棄却している(R3.10.7 TAINS:F0-5-368)。

 

① 法令解釈について

「事業者が事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けた場合に、当該他の者が個別具体的な課税資産の譲渡等を行ったことを条件として、当該事業者から金員が支払われたといい得る対応関係があるときに、当該金員は、当該事業者において課税仕入れに係る支払対価の額に該当することになると解される。

 また、当該事業者が受けたその資産の譲受け等が、当該他の者にとって課税資産の譲渡等に該当しなければ、当該事業者にとっても課税仕入れに該当しないと解される。」

 

 

 

② 本件への当てはめ

「本件ポイント負担金として支払った金員が、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当するか否かは、〇〇から請求人に対して個別具体的な課税資産の譲渡等が行われたことを条件として、請求人から〇〇に対して本件ポイント負担金が支払われたといい得る対応関係があるか否かで決せられることとなる。

 この点を見てみると、本件ポイント負担金は、利用約款に基づき、会員が〇〇を通じて請求人が提供する付与対象サービスを予約及び利用した場合に、〇〇が会員に対し付与したポイントについて、1ポイント当たり×の割合で、その原資を負担するために請求人から〇〇に対して支払われたものであると認められる。」

 

 

 

「また、〇〇の経理処理等によれば、本件ポイント負担金は、〇〇において消費税法上の課税資産の譲渡等の対価の額とされておらず、〇〇が本件ポイントプログラムの利用の対価として請求人から金銭を授受した事実は認められない。加えて、利用約款等の記載事項からも、本件ポイント負担金が、掲載サービス又はポイントプログラムの利用に係る対価、あるいはその他の課税資産の譲渡等の対価であるとの事実も認められない。

 そして、このことは、〇〇が請求人宛に発行した「自動引落のご明細」と題する書面に、請求金額に係る「消費税等」欄に零円と表記されていること及び「引落額」欄の下部に消費税等は含まれていない旨の表記がされていることとも整合するものである。

 したがって、本件ポイント負担金として支払った金員は、〇〇から請求人に対して個別具体的な課税資産の譲渡等が行われたことを条件として支払われたといい得る対応関係があるとは認められないから、消費税法2条1項12号に規定する課税仕入れに係る支払対価の額には該当しない。」

 

 

 

 

審判所の判断は、納得できる。消費税では、反対給付の有無と相手側と表裏一体の経理処理というのが判断の基本だ。

 

 

 

 

この事案の場合、自動引落の明細に消費税等は含まれていない旨の表記がされているという点も大きい。ただ、裁決文を読んでいて、美容室という業種的なものもあるのかなと思う。

この業種の場合、大きな支出は給与だ。簡易課税が使えればいいが、売上の関係で原則課税となった場合、つらい。

少しでも、仕入税額控除を増やしたいところだが、この事案の場合、消費税は対象外だ。

 

 

 

 

こういう運営会社のポイントサービスに加わり集客を増やしたいという点からも、請求人の「サイトの掲載サービス」という主張も分からなくはない。

 

 

 

 

令和5年10月1日からのインボイス導入からは、こういう「課税仕入れかしら」などと迷うことは無くなる。その点はいいのだが、別の意味で問題は発生しているので、なんともいえないが。

 

 

 

兎に角、インボイスどうにかして欲しい・・と怒りまくりながら月次処理する税理士は、私だけかしら・・。えー

 

 

 

 

NORIKUMAクマ