NORIKUMAです。

 

 

 

インボイス・・・かなりやばいです。手間がかかりすぎ。他の税理士さんはどうしているのだろうか。

 

 

 

そんなこんなで本日は消費税。この事案は、消費税の更正の請求をしているけど、インボイス制度導入後は、こういう方々に「登録事業者となっていますか・・」と聞くんだろうか。いや、国は、こういう方々が登録事業者となっていた場合に、仕入税額控除を認めるのだろうか。

 

 

 

 

早速、事案の概要から。

本件は、社会福祉法人である審査請求人が、その提供する障害福祉サービスを利用して生産活動に従事した障害者に対して支払った工賃について、消費税法上の課税仕入れに係る支払対価に該当するとして消費税等の更正の請求をしたところ、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

 

 

 

 

請求人は、指定生活介護事業、指定就労継続支援B型事業又は指定就労移行支援事業をおこなっている。そして、事業所において、福祉サービスの利用者につき、それぞれ個別支援計画を作成して、その利用者の生産活動の内容を定めた上で、雇用契約等の契約を締結することなく生産活動の機会を提供し、生産活動に従事した利用者に対して、作業能力等に応じた等級に基づく月額給や時間給を基本に支給額を決定する支給規程に基づいて工賃を支払っていたとのこと。

 

 

 

 

工賃という名で支払っているが、例えば、外注費のように何かを依頼して、それに対する反対給付として支払うものという意味合いはないと思うし、そもそも「福祉サービスの利用者」とあるように、福祉の一環にすぎないと思われるが。

 

 

 

 

国税不服審判所は、下記判断をして、「本件工賃が、消費税法30条1項に規定する課税仕入れに係る支払対価に該当するとは認められない」としている(R4.2.4 TAINS:F0-5-373)。

 

① 消費税法上の考え方

「消費税法30条6項が、課税仕入れに係る支払対価の額について、対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他の経済的な利益の額である旨規定しており、同法2条1項12号が、課税仕入れについて、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けることをいう旨規定していることからすれば、金銭等の支払が課税仕入れに係る支払対価の額に該当するといえるためには、資産の譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供の反対給付として支払うことが必要であり、その反対給付としての性質を有さない場合には、課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないと解される。」

 

 

 

② 本件への当てはめ~生活介護の利用者に対する工賃について~

「請求人は、本件各事業所において、利用者に対する適切なサービスを提供することを目的として運営規程を定めるとともに、利用者との間で利用契約を締結して、利用契約に基づき、生産活動の機会の提供を含む障害福祉サービスを利用者に提供し、利用契約上、利用者は、生産活動の機会の提供を含む一連の障害福祉サービスに対して利用料を支払うこととされていた。

 また、生活介護の利用者は、常時介護が必要な障害者であって、生産活動に当たって雇用契約等の契約は締結されず、したがって、雇用契約等の締結に伴う労働時間等の縛りはなく、むしろ、指定生活介護事業を行う者である請求人には、法令上、生産活動に従事する利用者の作業時間や作業量に対する配慮義務が課されていた。

 さらに、運営規程及び利用契約上、生産活動に従事した者に支払われる工賃は、飽くまで生産活動に係る事業の収入から事業に必要な経費を控除した額に相当する額とされていた。」

 

 

 

「これらの事実関係に加え、本件生活介護が、入浴、排せつ及び食事の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供を通じて、身体機能及び生活能力を向上させ、ひいては利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことを目的に行われる障害福祉サービスであることを併せて考えると、本件生活介護における生産活動の従事者への工賃の支払は、生産活動の機会の提供と併せて、上記の福祉目的を実現するために、請求人が生活介護という障害福祉サービスの一環として行ったものと認めるのが相当であるから、生活介護の利用者に対する工賃は、当該利用者が役務の提供を行ったことに対する反対給付(対価)であるとは認められない。」

 

 

 

「なお、本件各事業所において、生活介護の利用者に対する工賃について、作業能力等に応じた等級に基づく月額給や時間給を基本に支給額が決定されていた事実は認められるものの、限られた工賃の支給財源の中で、利用者の生産活動への従事意欲を高め、生活介護における上記の福祉目的の実現を促進することを意図して、生産活動に係る事業の利益の分配方法として月額給や時間給の方法が採られていたものと考えられることからすると、これらの事実を考慮してもなお、工賃の支払は、生活介護という障害福祉サービスの一環として行われたものと認められ、利用者が役務の提供を行ったことへの反対給付(対価)として支払われたものであるとはいえない。」

 

 

 

 

 

指定就労継続支援B型事業についても判断されていますが、内容は上記と同じため省略させていただきます。

 

 

 

 

この裁決を読むとそりゃそうだと思う。消費税法上は「反対給付」の考えなので、この解釈となるだろう。

 

 

 

ただ、一方で、社会福祉法人などの税務に携わっている方からすると、ひとつ疑問が生じるだろう。

 

 

 

 

就労継続支援B型では、その工賃は「雑所得」OR「事業所得」ですよね。えー

 

 

 

所得税という点で考えると、これら工賃については、いくつかの市町村のHPをみると、家内労働者等の場合に該当し、必要経費として55万円まで(令和元年分以前は65万円)認められるとのこと。

 

 

 

 

所得税法上は雑や事業に区分されているからと言って、消費税の仕入税額控除の対象となるとは限らない。

 

 

 

 

 

この部分について、国税不服審判所は、こう判断している。

「請求人は、就労継続支援B型を利用して得た収入が雑所得に該当するという実務上の取扱いを前提とすれば、本件工賃は障害福祉サービスを利用して働いて得た収入というべきであり、当然に対価性が認められる旨主張する。

 しかしながら、所得税法35条《雑所得》1項のとおり、雑所得は、役務の提供に係る対価か否かにかかわらず、他の所得区分のいずれにも該当しない所得であることを意味するにとどまり、消費税法30条1項に規定する課税仕入れに係る支払対価か否かの判断は、所得税法上の所得区分等の判断によって決せられるものではない。そして、本件工賃が役務の提供を行ったことに対する反対給付(対価)であるとは認められないことは、上記のとおりである。したがって、請求人の主張には理由がない。」

 

 

 

飽くまで、消費税上は、「反対給付」での判断となるとのこと。

 

 

 

 

NORIKUMAクマ