NORIKUMAです。

 

 

 

 

さて、本日は固定資産税。いろいろこの税金は問題あるんだ・・と感じる判決だ。

 

 

 

 

事案の概要から。

原告は、平成30年度の公売において建物を含む不動産を8900万円で落札してその所有権を取得したところ、被告市長は、本件家屋の固定資産税に関する価格である令和3年度土地・家屋課税台帳への登録価格を3億1556万7800円と決定した。原告は、被告に対し、本件登録価格を不服として審査の申出をしたが、小樽市固定資産評価審査委員会(裁決庁)は、小樽市の評価額は適正であるとして審査の申出を棄却する旨の決定をした。

 本件は、原告が、本件決定につき、①本件家屋は約17年間使用されることなく放置されていたなどの損耗による評価減点事情がある、②本件家屋の地域的状況が劣るなどの需給事情による評価減点事情があるにもかかわらず、固定資産評価基準に従ってこれらの事情が考慮されることなく登録価格が決定されたため違法であるなどと主張し、被告に対し、本件決定の取消しを求めた事案である。

 

 

 

 

公売で8900万円の家屋が、固定資産税の価格では3億1556万7800円となるということが本当にあるのだろうか、事案の概要を読むだけでも疑問が出てくる。

 

 

 

判決を読むと、原告は、公売で、本件家屋を含めその敷地を含む周囲の土地14筆を8900万円で落札した。

もともと、この家屋は、昭和63年5月21日に新築され、新築時の1㎡当たりの評点数は11万6750点、そのうち特殊設備及び建築設備の評点数の合計は3万6108点であり、再建築費評点数は11万6800点、評価額は6億4035万8600円であった。ただ、建物は平成13年から約17年間使用されていないとのこと。

 

 

 

被告である市町村の財政部納税課から不動産鑑定の依頼を受けた不動産鑑定業者が、平成29年12月6日等に、本件家屋及び同敷地の実地調査を行い、その結果を踏まえ、平成30年3月30日、同月31日時点の鑑定評価額を3850万円(市場性減価をする前の建物のみの価格は2720万円)と評価している。

 

 

 

 

不思議だ。この経緯からすると、3850万円の登録価格なら理解できるが、これがどうして3億を超える価格になるのだろう。

非常に強気な価格設定。えー

 

 

 

 

では、裁判所は、この強気な価格設定を認めたのだろうか。

 

 

 

 

札幌地裁は、次のように判断をして、納税者の請求を全て認めている(R5.10.4 TAINS:Z999-8499)。

 

① 判断枠組み

「建物の基準年度に係る賦課期日における登録価格の決定が違法となるのは、当該登録価格が、①当該建物に適用される評価基準の定める評価方法に従って決定される価格を上回るときであるか、あるいは、②これを上回るものではないが、その評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものではなく、又はその評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情が存する場合であって、同期日における当該建物の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るときである(最高裁平成25年7月12日第二小法廷判決)。

 本件においては、被告が、本件登録価格の決定において、評価基準の定める方法に従っていなかったといえるか、その結果、本件登録価格が、評価基準の定める評価方法に従って決定される価額を上回るといえるか(上記①)が問題となり、以下この点について検討する。」

 

 

 

② 損耗の状況による減点補正において損耗の程度に応ずる減点補正を行わなかった違法があるか

「損耗の状況による減点補正率について、損耗減点補正率によることとされる「その他の事由により当該非木造家屋の状況からみて経過年数に応ずる減点補正率によることが適当でないと認められる場合」とは、通常の維持管理を行う場合に生じる損耗を超える損耗が明らかに生じている場合をいうと解するのが相当である。」

 

 

 

「本件家屋は、その建物の性質を踏まえた通常の維持管理が長期間されていなかったことは明らかであり、そして、そのような本件家屋の状況を踏まえて、家屋に関する公売時の鑑定評価額は、3850万円(市場性減価をする前の建物のみの価格は2720万円)と、登録価格と著しく乖離しているのであって、これらの事情を、当該公売を実施して不動産鑑定を依頼した当事者である被告は当然に知っていたといえることも併せ考慮すると、本件においては、家屋の状況について、通常の維持管理を行う場合に生じる損耗を超えた損耗が明らかに生じているというべきであり、したがって、評価基準における「当該非木造家屋の状況からみて経過年数に応ずる減点補正率によることが適当でないと認められる場合」に当たるものと認められる。」

 

 

 

「以上を前提とすると、評価基準によれば、部分別再建築費評点数を算出し、これに損耗減点補正率を乗じて評点数を算出する必要がある。しかし、被告は、損耗の状況による減点補正において、損耗減点補正率による評価を行わず、経年減点補正率による評価を行ったのであり、さらに部分別再建築費評点数も算出していないのであるから、本件登録価格は評価基準の定める評価方法に従って決定されたものとはいえない。

 そして、被告が考慮しなかった事情は、本件家屋の価値を減額する要素といえること、部分別再建築費評点数を算出した上で評点数を算出した場合、登録価格への影響が見込まれること、公売の際の不動産評価において家屋及びその敷地を含む14筆の土地の鑑定評価額が3850万円とされていたことを考慮すれば、本件登録価格は、評価基準の定める方法に従って決定された価格を上回るものと認められる。」

 

 

③ 結論

「以上のとおり、本件決定は、損耗の状況による減点補正において損耗の程度に応ずる減点補正を行わなかった違法があり、登録価格は評価基準の定める評価方法に従って決定される登録価格を上回るのであるから、本件決定は取り消されるべきであるが、本来決定されるべき登録価格を具体的に算出することは困難である。

 したがって、本件家屋の登録価格につき、裁決庁に改めて審査をやり直させるため、本件決定の全てを取り消すのが相当である。」

 

 

 

 

そうだろうね。裁判でも、納税者の請求が棄却されていたならば大問題だ。3850万円が3億1556万7800円って・・・いや、税法を知らない人でも、おかしいと思うだろう。

 

 

 

 

こういう価格で、しら~っと固定資産税の納税通知書を送ってくるって、怖い話だ。それに裁判をやらなきゃ送られてきた納付書の金額を納めなきゃいけないというのも、それっておかしい。

 

 

 

 

世の中おかしい話がいっぱい。

 

 

 

先日TVで同じようにおかしな事件を紹介していた。信号無視したバイクと衝突した乗用車だが、まさかの信号を守っていた乗用車側に罰金30万円の略式命令がでた事案。これも乗用車の男性の不服申し立てで正式裁判が始まり、福岡地裁は、乗用車の運転手に無罪を言い渡した。

 

 

 

 

いや、裁判になる前に、おかしいって普通気づくでしょ。

 

 

 

 

NORIKUMAクマ