NORIKUMAです。
皆さま、台風は大丈夫だったでしょうか。NORIKUMAのところは、なんとか大きな被害はなく、無事でした。
さて、本日の裁決は、収益事業における経費について。収益事業と収益事業以外の事業を行っている場合に、共通経費をどう按分するかが争われた裁決がありましたので、ご紹介いたします。
先月26日に公表された裁決です。事案の概要は下記のとおり。
本件は、マンションの管理組合法人である審査請求人が、マンション屋上部分の一部を携帯電話等の基地局の設置場所として賃貸して得た収入について、法人税等の申告をした後、当該収入に係る費用を損金の額に算入していなかったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、当該費用は損金の額に算入することができないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、請求人が、当該処分の一部の取消しを求めた事案である。
当該費用とは、なにかということですが、マンションの管理を委託している管理会社に支払っている委託費と設備点検業務に関する点検費及びマンションの共用部分を対象とする保険契約に係る保険料の3つです。
経費として認めてもええんやないの~。
大方の予想とおり、結果は「一部取消し」となっています。
問題は、誰もが経費として認めてええんやないの~と思いながらも、按分どうするんやということが問題となる。要するに按分方法の問題だ。
納税者側は、本件各経費の額に、賃貸事業の収入の額及び賃貸事業以外の収入の額の合計額のうち、賃貸事業の収入の額の占める割合を乗じて算出した金額を収益事業に配賦される費用の額として区分経理し、当該区分経理した金額が、各事業年度の損金の額に算入されると主張しています。
ちなみに、収入割合は、7%だそうだ。
一方、原処分庁の主張は、「収益事業に直接要した費用とは認められず、共通費用に該当しない。」としている。
直接要した費用って・・・・・所得税かい。
国税不服審判所は、下記判断をして、処分を一部取消している(H31.2.15 公表裁決につき、誰でも国税不服審判所のHPで読むことができます)。
「公益法人等は、収益事業を行う場合に限り、当該収益事業から生じた所得についてのみ法人税が課される(法人税法第4条第1項)ところ、公益法人等の当期の益金の額に算入されるのは、収益事業及びその付随行為から生じた収益に限られるのであるから、当期の損金の額に算入される費用も、収益事業及びその付随行為から生じた費用に限られる。」
「本件委託費を対価として管理会社が行うマンションの管理に関する業務は、本件各賃料を含む事務管理業務並びに賃貸部分の外観目視点検及び収益事業に係る電力量計の検針を含む管理員業務であるから、本件委託費は、共通費用に該当すると認められる。
次に、本件点検費に係る設備点検は、各基地局に電力を供給するために必要な電気設備を対象として実施されるものであり、本件賃貸事業に必要な点検であると認められることから、本件点検費は、共通費用に該当すると認められる。
また、本件保険料は、共用部分を対象とする保険に係るものであり、その対象部分に賃貸部分が含まれていることから、本件火災保険料は、共通費用に該当すると認められる。
以上のとおり、本件各経費は、いずれも共通費用に該当すると認められる。」
「共通費用については、常に一律の基準で配賦するのではなく、個々の費用の性質及び内容などに応じた合理的な基準により、それぞれ収益事業と収益事業以外の事業に配賦するのが相当である。
この場合の費用の区分経理については、法人税基本通達15-2-5の(1)で、収益事業に直接要したものについてはその収益事業の固有の費用とし、また同(2)で、共通費用については、合理的な基準によりそれぞれの事業に配賦することとして、区分経理の基準を明らかにしており、本件通達の取扱いは、当審判所においても相当であると認められる。」
「管理員業務費については、本件委託契約における管理員の各事業年度の全体の従事時間のうち、管理員が賃貸部分の外観目視点検及び電力量計の検針に要した時間の占める割合により収益事業に配賦する方法が、収益と費用の対応関係をより具体的に明らかにすることができ、合理的であると認められる。」
「本件保険料については、保険金額が建物の面積を基準として算出されることから、保険料も面積を基準としてあん分するのが相当であり、保険料に係る保険契約の対象となる共用部分の全体面積のうち、①本件賃貸部分の面積に、②管理員室の面積に管理員従事時間あん分割合を乗じて算出した面積を加えた、収益事業対応面積の占める割合により収益事業に配賦する方法が、収益と費用の対応関係をより具体的に明らかにすることができ、合理的であると認められる。」
非常に、常識的な裁決だ。
税理士の方の中にも、「もう、すでにこの按分でやっているよ」という方もいらっしゃるかもしれない。
ただ、この按分方法は、理論的であるが、唯一の欠点は、管理員の従事時間を逐一記録しておかなければならないところである。
そういう意味で、納税者のいう、収入金額での按分方法は、厳密には正しくはないかもしれないが、簡便的な方法のひとつとして認めてもいいような気もするが。(飽くまで個人的意見だが)
収益事業の収入割合は、7%だとご紹介した。7%のために、200%の手間を掛けるのも、いかがだろうか。
そういうところ、税は、効率性を無視しているような。
お役所仕事だけじゃ、民間はやっていけないぞ。
NORIKUMA