12.ニノとの出逢い
アメリが地下鉄を歩いているとホームでシャンソンのレコードを聴いているずっと正面を向いたままの盲目の老人がいました。
レコードの歌:
♫ あなたがいなければ、生きていけない。
♫ きっと知らずにいたでしょう。この夢のような幸せを。
♫ あなたの腕に抱かれると心が喜びで満ちあふれる。
♫ とても生きてはいけないわ。もしもあなたがいなければ
アメリはそっと老人のそばに硬貨を置きます。
その先の証明写真撮影機の前で何かを探している青年を見つけます。
ナレーション:
「この青年の名はニノ・カンカンポワ」
「アメリとは逆に子供のニノは友達に囲まれていた」
彼が子どもの時にいじめられていたシーンが出てきます。
ナレーション:「二人は9km隔てた所で、一方は兄を他方は妹を夢見て生きていた」
二人は一瞬目を合わせ、アメリは去って行きます。
それぞれの2階から鏡を太陽に反射させて遊ぶ子供の頃の二人のシーンは、感覚的なものが非常に近く ”運命の二人” を感じさせます。
13.引きこもりな父
アメリの父親は白雪姫の七人の小人の陶器に色を塗ったり、きれいに掃除していました。
アメリ:「新しいお友達?」
アメリの父:
「いや、前から家にいた。お前のママが嫌がるんで物置に仕舞ってた」
「今から仲直りさせよう」
「できた、いいだろう?」
アメリの父は小人を庭に据え付けて飾りました。
アメリ:
「ねえ、パパ。子供の頃の宝物が見つかったらどんな気がする?」
「嬉しい?悲しい?懐かしい?」
アメリの父:「ドワーフは子供の頃の宝じゃないぞ。これは退役記念の贈り物だ」
アメリ:「違うの。子供の頃、宝のように大切に隠した物のことよ」
アメリの父:「秋になる前にニスを塗らねばならないな」
父親はアメリの話を聞きません。
心が病んでいる人は自分のことにこだわり過ぎたり、精一杯なところがあります。
諦めて話を変えるアメリ。
アメリ:「お茶をいれるわ。パパも飲む?」
仕事場のカフェの紹介です。
14.神経症な面々
同僚ジーナがお客の首の関節を鳴らしてほぐしてあげています。
グリーンのカーディガンがとても美しいです。
ジーナ:「息を吸ってじっとして」
少し神経質で怒りっぽいジョルジェットです。
ジョルジェット:「ちゃんとドアを閉めて!すきま風が入るでしょ」
ジーナ:「凍死はしないわ」
ジョルジェット:
「私はアレルギーなの。咳がひどくて昨夜は肋膜(ろくまく)が剥離(はくり)する寸前よ」
ジーナ:「肋膜剥離?」
自分は病気を持っているのではないかと思ってしまう病気不安症です。
身近な人の死別によって、自分もその病気になるのではないかと恐れることがあります。
一人の男性客がジーナを監視しています。
録音機を持ってジーナの行動を記録しています。
客ジョゼフ:「12時15分、高笑い、動機は男を誘うため」
ジーナ:「あいつ、頭にくるわ」
店主シュザンヌ:「本当にしつこい男ね。他の店に行ってよ!」
ジョルジェット:「シュザンヌさん、グラタンってクリーム入りよね?」
店主シュザンヌ:「それが?」
ジョルジェット:「私、クリームはダメなの。シュザンヌは馬肉がダメでしょ?」
店主シュザンヌ:「私の場合、胃ではなく思い出の問題ね。馬より人を食べるわ」
ジョルジェット:「私は人もダメだわ」
この神経質な雰囲気のオンパレードがコミカルでいいですね。
とてもフランス映画らしいなと思います。
そうした人間の弱さをも愛でているところが人間讃歌ですよね。
アメリはカフェの電話帳でプルドトーの住所を調べます。
アメリ:「マダム・シュザンヌ、今日早退してもいいですか?」
店主シュザンヌ:「あら、彼氏ができたの?名前は?」
アメリ:「ドミニク・プルドトーです」
15.調査
一人目に訪れた、プルドトーは若い青年で人違いでした。
アメリ:「プルドトーさん?」
青年:「そうさ、僕だよ。何の用?」
アメリ:「ええと...ご署名を。目的は...ダイアナ妃を聖女に」
青年:「いや結構」
幼くして両親が離婚した家庭環境で育った、内気な性格のダイアナ妃にアメリは特別なシンパシーがあるのかもしれませんね。
二人目のプルドトーの訪問です。
アメリ:「欧州連合の国勢調査です」
探偵が板についてきています。
男:
「上がって、3階だ」
「こんちには、子猫ちゃん」
「アールグレイそれともジャスミン?どのお茶がいい」
アメリ:「お仕事中なので...」
男は写真とは面影もなく、女装をしていました。
3人目です。
女:「ここよ。何かご用?」
アメリ:「こんにちは、実はプルドトーさんに会いたくて来ました」
女:「お気の毒に、少し遅すぎましたわ」
棺が階段を降りて運ばれて来ました。
16.引きこもりな老画家
リストにあげた3人にはおらず、意気消沈して自室に戻ろうとするアメリに話しかけてきたのはガラスの手の老画家でした。
レイモン:
「プルドトーじゃない。プルトドーだよ」
「ひどい顔だ。シナモン入りの熱いワインを飲ましてあげるよ、おいで。」
ヴァン・ショー・・・
ヴァンは(VIN=ワイン)ショーは(CHAUD=ホット)という意味合いを持つ、HOTサングリアの”ヴァンショー”。つまりホットワインのこと。柑橘系の果物やスパイスを入れて煮詰めたもの。
アメリ:「ここに来て5年だけど初めて顔を見たわ」
レイモン:
「わしは絶対に外に出んし、会う人間は自分で選びたいからね」
「ろくな人間がいない」
人との付き合い方は人それぞれですが、幼い頃、若い頃人間関係で苦労をした人は傷つきやすかったり、そもそも人は悪人だと信じて生きています。
人の性格や行動が病気かどうかというのは、「日常生活に著しく影響が出ているかどうか」です。
生活への支障と心の平静の兼ね合いだと思います。
心の安寧を選ぶか、好奇心や刺激を好むかの生き方や気質によって色々とあっていいと思います。
その人の個性として尊重したり、受け入れることが気分や感情に振り回されないで生きる良い方法だと思います。
レイモン:
「さあ、入って」
「わしは ”ガラス男” と呼ばれてる」
「本名はレイモン・デュファイエルだ」
アメリ:「アメリよ、仕事は...」
レイモン:
「ドゥ・ムーランだろ。知ってるよ」
「今日は無駄足だったな。プルドトー捜索は失敗した」
「”ド”じゃない、”と”なんだ。トトの ”ト”」
アメリ:「ありがとう」
アメリは好きな人だと少しはにかんだ笑顔になり、とてもわかり易いです。
女性は特に表情に好き嫌いが出るように思います。
子供に愛情を伝えるためのオキシトシンというホルモンが関係しているようです。
17.ルノワールの少女
アメリ:「素敵な絵ね」
レイモン:「ルノワールの ”舟遊びの昼食” だ」
レイモンは部屋の仕切りのカーテンを開けました。
するとたくさんの ”舟遊びの昼食” が置かれてありました」
レイモン:
「年に1枚ずつ描いてる。20年前からね」
「難しいのは視線だ。ときどき皆で見つめ合ってる。わしの目を盗んでね」
アメリ:「幸せそうな顔です」
レイモン:
「ご馳走だからね。野ウサギの編み笠茸風味だ」
「子供たちにはジャムつきゴーフル」
ゴーフル
ゴーフルは、専用の型で作る凹凸模様の平たい菓子。英語でワッフル 、フランス語でゴーフル と呼ばれる。「浮き出し模様を付ける」という意味の “gaufrer” から、「ゴーフル」と呼ばれるようになった。日本では、薄焼き煎餅にクリームを挟んだ焼き菓子が「ゴーフル」「ゴーフレット」等の名前で販売されている。
レイモン:
「どこへ仕舞ったかな、あの紙切れは...」
「それは隣を映すためのビデオカメラだ。義妹からのプレゼントさ」
「隣の看板を映しておけば掛け時計がいらないだろ」
「20年描き続けていてもまだ描ききれない人物がいる」
「この水を飲む娘だ」
「絵の中心にいるのによそにいるみたいだ」
アメリ:「彼女は人と違うのよ」
レイモン:「どこが違う?」
レイモンは座っていたイスから立ち上がってアメリの意見を熱心に聞きます。
アメリ:「さあ...」
レイモン:「子供の頃、友達と遊んだことがなかったのかな。おそらく1度も」
レイモンは絵の中の少女をアメリの気持ちや境遇と同じように類推します。
驚くくらいアメリの心情を言い当てますね。
レイモン:
「これをあげるよ。ドミニク・プルトドー。ムフタール街27番地。この男だよ」
18.プルトドー
ナレーション:
「毎週火曜の朝、プルトドーは市場でチキンを買いオーブンで丸焼きにする」
「まずはもも肉、胸肉を切り分け、湯気の出ている骨の間に指を入れ腰骨の肉を取って食べる」
「ところが今日はそうできなかった。なぜなら公衆電話が彼を呼び止めたから」
初老のプルトドーは恐る恐る電話を取りますが、すぐに電話は切れます。
公衆電話の電話帳置きのところにアメリは宝箱をそっと置いていました。
プルトドーはいぶかしげに箱の外観を見ます。
そして宝箱のフタを開けた瞬間、自分の幼き頃の写真を目にしたプルトドーは目に涙を浮かべました。
ナレーション:
「一瞬のうちに記憶が蘇った」
「59年のツール・ド・フランス。叔母さんのシュミーズ。特にあの人生最悪の日。級友からビー玉を勝ち取った日を...」
過去のプルトドー。
整列に遅れたプルトドーは先生に耳をつままれて怒られます。
大事なビー玉がポケットの穴からすり抜けてあたりに散乱しました。
プルトドーにとっての屈辱の記憶です。
誰にも悲しい記憶がありますね。
わたしもみんなの前でおしりのズボンが思いっきり破けたことがあります。
プルトドーは感激の気持ちを携えてバーに向かいカウンターに腰掛けます。
プルトドー:
「コニャックをくれ」
「奇跡が起こった。天使が奇跡を起こしてくれた」
「公衆電話が俺を呼んだんだ」
バーテンダー:「電子レンジがお呼びだ」
店員がプルトドーを冷やかします。
プルトドー:
「コニャックをもう一杯くれ」
「人生って不思議だな。昔は時間が永遠にあったのに気がつけば50歳」
「思い出がこんな小さな古ぼけた箱の中に...」
プルトドーは隣に座っているアメリに話しかけます。
プルトドー:
「娘さん、子供はいるかい?」
「俺にはあんたくらいの娘がいるんだ」
「もう何年も会ってない」
「孫が産まれたそうだ。男の子で名前はリュカ」
「会いに行ってやろう。自分が ”宝箱” に入る前に」
「そうでしょ?」
プルトドーは宝箱を開けて子供の頃にタイムスリップしたことで「時」のはかなさを感じたのかもしれません。
たぶん今、彼は幸せではないのでしょう。
ひとり孤独を背負っているのかもしれません。
自分の人生を高いところ、異次元のところから俯瞰した時、むなしさが込み上げてきたのかもしれません。
昔の希望に満ちた楽しかった日々と今の暮らしを比べたのかもしれません。
無くしてしまったもの、置いてきてしまったもの、捨ててしまったものを思い出したのでしょう。
そして何かしなくてはいけないと思ったのでしょう。
外界とのふれあい
ナレーション:
「アメリは突然、世界と調和がとれたと感じた」
「すべてが完璧」
「柔らかな日の光、空気の香り、街のざわめき」
「人生とは何とシンプルで優しいことだろう」
「突然、愛の衝動が体に満ち溢れた」
アメリは生まれて初めて世界と関わりをもったのだと思います。
通じ合う感覚を得たのだと思います。
アメリは盲目の老人が通りを渡るのを寄り添って歩いてあげます。
アメリ:
「道案内をするわ。車道を降りてさあ、出発よ」
「ご主人の制服を着た楽隊員の未亡人」
「ほら舗道よ。気をつけて」
「看板の馬には耳がないわ」
「花屋のご主人の笑い声、笑うと目にシワができるのよ」
「お菓子屋の店先に飴細工があるわ」
「この匂いわかる?果物屋さんがメロンの試食をおこなってるわ」
「美味しそうなアイスクリーム。惣菜屋さんの前よ」
「ハム79フラン、ベーコン45フラン、チーズはアルデーシュ産が12フラン90」
「赤ちゃんが犬を見てる。犬がチキンを見てる」
「新聞売り場に着いたわ。地下鉄の駅よ。ここでお別れ。さよなら」
アメリは楽しそうに階段を駆け上がり、盲目の老人はキラキラと光りました。
アメリはプルトドーの役に立てたことで多幸感が心に生まれたのですね。
そしてその幸せをもっと分けてあげたいと感じました。
アドラーの言う『共同体感覚』です。
アメリが言うようにプルトドーとの精神的つながりが世界との調和として感じることができた。
人は何かを与えることで幸せを得ることができる動物です。
それは人とのつながりを持てたからです。
その時、私たちの体には「オキシトシン」というホルモンが生成されます。
これが「つながりの幸せ」をもたらす幸せの物質です。
気づくことだけで幸せを認識することができます。
幸せはあなたのすぐ近くにあるのです。
そう、あの幸せの青い鳥です。
そして自分のグラスに幸せのワインを満たすと、おせっかいにも人に分けてあげたくなります。
人の親切とは何も打算からだけではありません。
こういう性質が人の中には本能的にあるのです。
協力して厳しい生活を生き抜くための、人間の社会的な本能でしょう。
ギブ&テイクや返報性の法則などもこういった本能が習慣化や儀式化したものだと言えます。
そうしてギバー(与える人)はますます幸せ感を得るんですね。
もちろんそれが相手に良いか悪いかは別問題ですよ。
これまたアドラーの言う『課題の分離』です。
受け取った相手がどう感じるかはその人の領域です。
人の心や本能、愛着、欲求を論じる時に、善悪や倫理観はひとまず置いておくことです。
まずは自分のグラスを最初に満たすのが健康的なのです。
19.空想癖と葬式
その夜、陽気に夕食の用意をするアメリはレイモンの部屋が目に映ります。
独り寂しく夕食を食べているレイモンにアメリは心を痛めます。
それはまた自分にも跳ね返って来るのでした。
自分もまた外出を何十年もしていない老画家と同じように孤独なのだとアメリは悟ります。
アメリ:
「他人と関係を結ぶことができない」
「子どもの頃から孤独だった」
そこからアメリはダークな自己否定的な気持ちに変わってしまいます。
その気分がイメージ化されて、映像に映し出されます。
暗い色調で女性が黒猫を抱いてこちらを恨めしそうに見ている絵。
TVに映る仮想のアメリの国葬。
ナレーション:
「きらめく7月の太陽が傾き、浜辺ではまだ避暑客が無邪気に水と戯れる頃、またパリでは熱気の残る夜空に花火が輝き歓声があがる頃、アメリ・プーランまたは売れ残りの女王、縁遠いマドンナが静かに息を絶えたのです」
「パリの街に悲しみが広がり、数万の無名の庶民が無言で葬列に加わり哀悼の意を表しつつ、残された者の無限の悲しみに耐えていました」
「彼女の不思議な運命。不運な人生。しかし彼女は細やかな感受性の持ち主でした」
「まるでドン・キホーテのように人類の苦難という風車に立ち向かったのです」
「負けの決まった闘いが早すぎる死を招きました」
「アメリ・プーランは23歳の若さでその短い人生を世界の困窮の中で閉じたのです」
「死してなお、彼女の心を苦しめるのは父親が息を詰まらせて死に瀕したとき、ただ手をこまねいて死に至らしめたことです」
自己嫌悪な人、抑うつ症状の人はよく自分の葬式を思い描いたり、夢に見たりします。
叶えられない願望。
空想の中でも人々に愛され悲しまれることを切に願っているのです。
父親に対しての思いやりのなさでさえ、自分に責任を感じて責めてしまいます。
自分を嫌いになりすぎて、「解離性障害」のように自分を自己から切り離してしまいたい気持ちでいっぱいです。
そうした人はついには依存症、自傷、摂食障害、果ては自死企図にまで追い込まれます。
夜、アメリは父親の家の庭にある七人の小人の1体を持ち出し、地下鉄で夜を過ごします。
父親の愛を小人から奪い取りたかったのか、または父親の自閉症を治してあげたかったのか。
20.ニノという青年
駅構内で再びアメリは以前会った青年、ニノ・カンカンポワと出くわします。
まだ面識はありません。
ニノは一人の男をアメリのそばを通り過ぎて追いかけて行きました。
途中でアメリはニノのカバンを拾います。
中にはアルバムが入っていました。
ナレーション:
「証明写真のアルバム、丸めたり破ったりした失敗写真をきれいに復元し分類してあった。家族のアルバムのように」
21.恋愛談義
アメリの仕事場のカフェです。
ジーナが一人の男の客の注文を取りました。
それを見たジョゼフはジーナに言います。
ジョゼフ:「あの客とは交渉前か、それとも後?」
ジーナ:「先天的なバカね」
ジョゼフはまた録音機に記録します。
ジョゼフ:「交渉前だ」
カウンターの常連客の老人がジーナを慰めます。
老人:
「機嫌を直しなさい。今にいい男に出会える」
「女の幸せは男に抱かれて眠ることだ」
店主シュザンヌ:「でも男っていびきをかくでしょ。私、音に敏感なのよ」
老人:「わしは手術で喉を直した」
店主シュザンヌ:「あら、ロマンチストなのね」
老人:「大恋愛の経験がないらしいな」
老紳士がカフェで恋愛を語る。なんて素敵なんでしょう!
さすが、フランスですね。
店主シュザンヌ:「あるから足を悪くしたのよ」
ジーナ:「サーカスの事故かと思ったわ」
店主シュザンヌ:
「ええ、そうよ。相手は空中ブランコ乗り」
「空中ブランコは直前に手を離すけど、私も演技の直前に別れ話をしたの」
「私は動転して馬も動転し、運悪く私の上に馬が...」
老人:「ともあれ、一目惚れはあるよ」
店主シュザンヌ:
「でもこの商売を30年もやるとわかるのよ」
「一目惚れにもレシピがあるのよ」
「材料は顔見知りの二人。互いの好意を絡めてよく混ぜる。一丁あがり」
22.恋のキューピット
アメリはその言葉を聞いて、ジョゼフとジョルジェットを結びつけることを思いつきます。
ジョゼフ:「すまんが、お代わりを頼む」
アメリはコーヒーのお代わりを持っていった際、ジョゼフにささやきます。
アメリ:「誰かさんが心を痛めてるわよ」
ジョゼフ:「ジーナなら大丈夫さ」
アメリ:「ジーナじゃないわ。ジョルジェットよ」
ジョゼフ:「彼女が俺のことを?」
アメリ:
「自分に気づいて欲しいのにあなたはジーナばかり。可哀想に」
「あなたの関心を惹こうと必死なのに、その目は節穴ね」
閉店後、アメリはジョルジェットにも話します。
ジョルジェット:「ジーナの今の彼氏、あの録音機の変人よりきっとマシな男ね」
アメリ:「ジョゼフなら変人じゃないわ。悩みが深いのよ」
ジョルジェット:「でも2ヶ月も前に別れたのにまだ毎日通ってくるのよ」
アメリ:「その理由をあなたが知らないはずないわ」
ジョルジェット:「理由?」
アメリ:「いつもこの席よね」
ジョルジェット:「ええ」
アメリ:
「座って。座ってみて」
「何が見える?」
ジョルジェット:「煙草売り場よ」
アメリ:「何が足りないかわかる?」
ジョルジェット:「何も」
アメリ:「よく見て」
ジョルジェット:「何も見えないわ」
アメリ:「よく考えといて。おやすみ」
アメリはあなたの姿よと言いたかったのですね。
~PART③へ続く