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01.登場人物の紹介

 

ジョーンズ・・・主人公。双極性障害をもつ。過去にエレンという恋人がいた。

エリザベス・・・精神科医。ジョーンズの主治医。

ハワード・・・大工職人。ジョーンズの親友となる。

スーザン・・・ジョーンズと街で出会った女性銀行員。

アマンダ・・・若い精神病患者。

Dr.パトリック・・・エリザベスの同僚医師

Dr.キャサリン・・・エリザベスの上司の精神科医

 



02.はじめに

 

この作品は「双極性障害」(双極症/躁うつ病)を患った男とその女主治医の物語です。

双極性障害という病はうつの状態と躁(ハイになる)の状態が一定期間ごとに入れ替わる病気です。

「うつ病相」ー「躁病相」、「躁病相」ー「うつ病相」の間は健常者と何も変わらない「寛解期」と呼ばれる時期にあるか、またはうつっぽいのに躁の症状もある「混合状態」になる患者さんもおられます。

躁病相に入ると、陽気になり、自信に満ち溢れ、自分は何でもできるという万能感につつまれます。

多くの事をしゃべりたくなり、頭の中に次々とアイデアが生まれてきます。

自分が重要人物だと思い込み、とにかく楽しくて愉快な気持ちになります。

一晩くらいなら寝なくても平気になります。

ですがその会話は思いつきが多く、支離滅裂だったりします。

容易に怒りっぽくなったり、落ち着きがなくなり、時には暴言を吐くこともあります。

急に金遣いが粗くなり、性的なことへの興味が高まったり、ひどい時には妄想や幻想が現れます。

辛いことに本人には自覚が無いんですね。

躁の病相が終わると自分がやってしまったことを後悔して自責の念に苦しみます。

職場では同僚や上司、取引先との関係がこじれたりして、退職せざるを得なくなります。

家庭では暴言や思いつきの行動、多額の借金をしてしまったりして、家族との関係が悪くなり、最悪は離婚や絶縁にいたります。

そうしてこの病気は患者の社会的な信頼や財産そして、大切な人を奪っていきます。

一方でうつの病相になると精神的なエネルギーがなくなり、何をするにも「おっくう」になり、涙が止まらず、別人のように何もできなくなります。

トイレにすら行けないほど、気力と体力が奪われてしまいます。

ひどくなると「希死念慮」と言われる死にたい、消えたいと思う気持ちから抜け出せなくなり、幻聴や幻覚が見えることもあります。

躁の状態がひどければひどいほど、のちに来るうつの状態もひどくなります。

こういった気分の波が数年単位で訪れます。

よりひどくなるとラピッドサイクラーと言われ、段々とその周期が早くなります。

非常に簡単ではありますが、以上がこの病気の症状です。

もう少し詳しい症状は作品の中でお伝えしようと思います。

多くの精神障害の中でも、圧倒的に自死を選んでしまう方が多い病気です。

それは患者全体の19.4%にもなる高い数字です。

この数字がこの病の恐ろしさを物語っています。

うつ病患者の10人中1,2人はのちに双極性障害と診断されるようです。

患者本人にとって、病気そのものの「痛み」はとても苦痛なものです。

そして何よりも辛いのは「親しくしていた人たちが離れていくこと」

または「迷惑をかけまいと自分の方からその人たちのもとを去っていくこと」です。

これがこの作品のテーマでもあります。

このような症状を抱えて生きている主人公のジョーンズ。

それでは作品に移っていきたいと思います。

 



03.陽気な男

 

映画の冒頭シーンです。

若者たちがロードバイクで気持ちのいい噴水の水しぶきがあがる公園を、颯爽と走っています。

彼らを追いかけるように、一人の中年の男が自転車で追いかけます。

また別のシーンです。

女性が朝、目覚まし時計で起こされ、髪を整え、服を選びます。

この女性に恋人らしい人から電話がかかってきて、デートの約束をします。

『衝動』という言葉がふさわしい、気持ちのいいオープニングです。

その男は新築の家の工事現場にやってきました。


 

ジョーンズ:「誰かいるかい?」

現場監督:「押し売りはお断りだよ」

ジョーンズ:
「いや、大工だよ」

「新聞広告で見たんだよ」

現場監督:「あの口はもうふさがったよ」

ジョーンズ:
「断ると悔やむぞ」

「僕は2人前の仕事をこなす腕なのに」

現場監督:「そうか、天才なんだな」

ジョーンズ:
「天才?その発音って...」

「きみは東部出身だな?ニューヨーク州?シュラキュースかい?」

現場監督:「ビンガムトンだ」

ジョーンズ:
「ほらね。ほとんど当たり!」

「1日目は無料で働く。2日目は2日分の日当。3日目は僕が監督」

「1日だけ、お願い!」

現場監督:
「しかたがないな。1日だけだぞ」

「屋根へ行ってくれ」

現場監督:「だが、よく当てたな」


陽気で人懐っこいこの男に現場監督も心を許すんですね。

彼は無邪気な子供のようで憎めない人柄なんです。

ジョーンズは屋根に登ります。

楽しげにハンマーを勢いよく振り回しながら、屋上の高さに気分をよくして、爽快に心踊らせます。

 



04.空飛ぶ男

 

ジョーンズ:「おれは何をすりゃいい?」

現場監督:「あれを手伝って」



屋根の長い横板を大工たちが並んで釘で打つ作業です。
 

ジョーンズ:
「やあ、皆!」

「君の名前は?」

ハワード:「ハワードだよ」



ハワードは知らない男の馴れ馴れしい物言いに、そっけなく言葉を返します。

そこに上空間近にジャンボ飛行機が飛んでいきます。

ジョーンズは手の届きそうなくらい近い飛行機に目を奪われ、上機嫌にリズムを取ります。

どうやら空港が近くにあるんですね。

着陸する飛行機を見て、ジョーンズは興奮していました。

あまりに陽気なジョーンズにハワードは不思議がります。

そして、共同作業です。

ハワードが2回釘を打てば、ジョーンズも2回釘を打ちます。

子供同士の遊びのようにマネをします。

ハワードが釘を打つリズムに合わせて、そのあとジョーンズも釘を打ちました。

 

ハワード:「お前、ふざけんなよ」

ジョーンズ:「君は子どもが7人いるだろう?」

ハワード:「当たりだ!」

ジョーンズ:「ピタリだ。男?女?」

ハワード:「2人と5人だ」

ジョーンズ:
「そいつはすごい。おめでとう」

「だが生活は大変だな」

ハワード:「それも当たりだ」



それを聞いた途端にハワードは心を許すような笑顔に変わります。

ジョーンズのまさに特殊能力ですね。

すっと人の心に入っていけるチカラ。

皆さんのまわりにもこういった方がいますか?

そんな人がいれば、すぐにでもお友達になりましょう。

こんな純粋な人の心を分けてもらってください。

 

ジョーンズ:「何か食わせてやれ」

 

ジョーンズはポケットから100ドル札を出してハワードに手渡そうとしました。
 

ジョーンズ:「道に落ちてた100ドル札だよ」

ハワード:「そんなもん要らんよ」

 

ハワードは少し気味が悪くなって断ります。

これは双極症の躁状態の症状の一つで、気前がよく金遣いが粗くなるんですね。

 

ジョーンズ:
「嘘じゃない、本当だよ」

「道を歩いてたらドブに落ちてた」

「天の声が『ハワードにやれ』と」

「君がそのハワードだ。ツイてるな」

ハワード:「いらないよ...」

ジョーンズ:
「いいからとっとけよ」

「家族にハンバーガーでも食わせてやれ」

 

そう言って、ジョーンズはまた陽気にリズムを取りはじめます。
 

ジョーンズ:
「いい気分!」

「心、ウキウキ♫」

 

ジョーンズは棟の一番高い所まで登って、見渡す限りの良い景色を眺めます。

そこは足場が狭く、地上まで落ちてしまう危険な場所でした。

 

ジョーンズ:「危ないよ」

 

そう言ってジョーンズはハワードの頭を優しく撫でました。
 

ジョーンズ:
「君は空を飛びたくないか?」

「鳥のように」

「いいね。飛ぼうと思えば飛べる」

「そうだろ、ハワード?」

ハワード:「よしなよ」

ジョーンズ:
「おれはどこにいる?」

「屋根の上だ」

「75度の傾斜。悪くない」

ハワード:「やめろよ」

ジョーンズ:
「バランスが大事だ」

「バランスを保てば落ちない」

 

ハワードは心配して恐る恐る彼を捕まえに行きます。
 

ジョーンズ:「西風だ。風は時速22...いや24キロメートル」

ハワード:「戻れよ」

ジョーンズ:
「こいつは基本的な物理の法則だ」

「バランスを保てば落ちない」

「均衡を保てばいいのさ」

ハワード:「おい、ロープを持って来い!」(そばの若者に)

ジョーンズ:「均衡が大事さ。バランスだよ、ハワード」

ハワード:「そのとおりだ」

ジョーンズ:
「推進力を与えて加速度を加える。それで離陸」

「最高だぜ」

「どうだ、君も来いよ」

「飛ぼう、飛ぶぞ」

「加速度をつけよう」

ハワード:
「こっちへ来いよ」

「戻ってこい」

 

ジョーンズは屋根の先端に近づきました。

その先にはもう歩くことができる足場はありません。

 

ハワード:
「そんな先へ行くな」

「バカはよせ」

「バカはよせ。いいな」

「じっとしてろ」

ジョーンズ:
「へい!おれは飛行機だ」

「離陸して飛ぶぞ!」


地上には人だかりができていて、救急車と警官が到着していました。
 

ハワード:「こっちを向け」

ジョーンズ:
「おれと一緒に飛び立とうぜ」

「あの救急車の周りを飛んでベッドに着陸する」

「3回あの周りを飛ぶぞ」

「ベッドの上に着陸してみせる」

 

ジョーンズが下を覗いている隙をついて、ハワードは彼を捕まえることに成功しました。

実際のところ、この時の状態は躁病相で、自殺するつもりは本人にはありません。

「爽快感」からの衝動で行動してしまっているんですね。

本人は多幸感に包まれていて、この気持ちが本来の自分と思い込んでいたりして、手放せない快感な気分です。

 

 



05.初めての出逢い

 

もう一人の主人公の精神病院の閉鎖病棟に勤務する精神科医エリザベスは、その後保護室で眠らされたジョーンズと初めて出会います。

大勢の研修医たちに見世物にされるジョーンズ。

治療者たちでさえも「スティグマ」(=精神疾患への偏見)を持ち、人権意識に欠けるシーンやセリフが多く目につきます。

この精神疾患への偏見も患者が自分の病気を受け入れるときに、壁として立ちはだかるものです。

本当の自分はもう無いのだろうかと自信を失っていくんです。


 

精神科医パトリック:
「白人の男性、推定35歳。屋根の上で曲芸を行い、警察が保護」

「かなり興奮してて、精神と聴覚に幻覚症状」

エリザベス:「医師の診断は?」

パトリック:「見習い医師は『妄想型精神分裂病(統合失調症)』と言っている」

エリザベス:「投薬は?」

パトリック:
「ハルドル10ミリが効いてる」

「新患だ、こういった場合はどうする?」

研修医:「自覚能力を調べます」

パトリック:「よろしい、いいね」

 

エリザベスはジョーンズの手を握って話しかけました。

 

エリザベス:「あなたの名は?」

パトリック:「名前も身元も不明。仕事は日雇いだった」

エリザベス:「今日は何日?」

ジョーンズ:「ジョーンズ...」

 

ジョーンズは薬によるまどろみの中、言葉を振り絞ってかすかに答えます。

彼の目からは一粒の大粒の涙が頬を伝っていました。

誤解を恐れずに言います。

神はどうしてこのようなむごいことを人にするのか。

人の身体と心を操り、遊び終わったら開放する人形のように...。

そこには人の尊厳など全くありません。

 

エリザベス:
「彼は『ジョーンズ』と...」

「名はジョーンズ」

 

 



06.精神科医エリザベス

 

ところ変わって、夜になり、元旦那か元恋人を上機嫌で家に迎えたエリザベスでしたが、その男は女を同伴していました。

どうやら男はエリザベスと以前いっしょに住んでいたらしく、荷物を引き上げに来ただけのようです。

主治医のエリザベスにもジョーンズと同じく「別れと孤独」を持たせることで、ジョーンズや観客に共感を持たせようとする設定のようですね。

エリザベスは担当の患者を幾人か持っていました。

その中に年頃の若い女性(アマンダ)がいます。

双極性障害の多くは10〜20代にかけて発症します。

発症原因はよく分かっていないようですが、遺伝子の中に双極性障害にかかりやすい性質があるようで、強いストレス、不規則な生活リズムのある環境の元で発症するようです。

双極性障害はそういった遺伝的な性質があったとしても、必ずしも発症するとは限りません。

「遺伝病」では決してないということははっきりと言っておきます。

子供も産めますし、病相の波をうまくコントロールし押さえていけば、人生を楽しむことができます。

単極性のうつ病と同じく、なりやすい性質を持った人がストレス源から罹患するということです。

人は思っているよりも弱い生き物です。

強いストレスが自分の外や内からかかってしまうと、依存症、強迫症、不安障害、ノイローゼ、そしてそれでも頑張って、リミットを過ぎて努力し続けるとうつ病や双極症などになります。


アマンダは息つぎをする間もなく興奮ぎみに、時には涙を流して喋り続けています。

その言葉には脈絡がなく、思いついたことを言い続けています。

 

アマンダ:
「『ジョニー・カーソン・ショー』にわたしが出たのよ!」

「3歳まで名前がなかったのに!」

「父は昔ながらの中国人で言い伝えを信じていたの」

「『耳をすましていると子どもの名前は天から聞こえてくる』でも私の名は聞こえなかった」

「聞こえないふりをしてね」

「『ミランダ』って名をつけたかったから、歌手のカメルン・ミランダの大ファンだったの」

「でも母はRとLの発音が出来ず、結局わたしはアマンダと呼ばれたの」



躁病相の症状ですね。

そしてエリザベスは他の幻覚・幻聴の症状が出ている患者たちと面談するシーンが続きます。

 



07.エリザベスを口説くジョーンズ

 

ジョーンズは病院の中庭からパラグライダーを上空に見つけると、想像力を掻き立て朗らかな笑顔を浮かべます。

通りすがるエリザベス医師を追いかけ、ジョーンズは話しかけます。

 

ジョーンズ:
「大変!大変!遅刻した」

「わたしは医者だ。大変だ!遅刻した」

「寝坊して時間に遅れた」

「間に合わない」

エリザベス:「ジョーンズさん!」

ジョーンズ:「どこに奴が?」

エリザベス:「どこへ行くの?」

ジョーンズ:「僕は家へ帰るよ」

エリザベス:「今の気分は?」

ジョーンズ:
「旦那にもそのセリフをいつも言うのかい?」

「『あなた気分は?』というと彼は飛び起きる?」

「君は離婚をしたの?」

「簡単な推理さ、ミス・ワトソン」

「薬指に指輪の跡が...」

「それに心に傷を受けたような痛々しさがあるよ」

「その言葉はスウェーデンなまり?」

「聞いてるよ。寒いけど美しい国だって」

「それでは、エリザベスじゃあね、また」

エリザベス:「なぜ、名前を知ってるの?」

ジョーンズ:
「医者だろ?」

「患者に飲ませる薬は自分も試せ」

「薬で病院中の話が聞こえるようになる」

「何もかもさ」

「用心をしなきゃね」

エリザベス:「また話をしましょう」

ジョーンズ:
「僕ももっと話したい」

「そうだ、合唱つきの音楽は好きかい?」

「ベートーヴェンの第九『喜びの歌』」

「今夜の切符があるんだ。一緒にどう?」

「そのあとカフェへ行って一晩中語り明かそう」

「いいだろ?君の電話番号を教えて」

エリザベス:「違うのよ。医者として...」

ジョーンズ:「こうして話してるじゃないか」

エリザベス:
「病院で話すのよ。なぜ屋根に登ったか」

「わたしの名刺よ。電話して」

ジョーンズ:
「もちろん。ボーエン先生!」

「さよなら!遅刻だよ!」

エリザベス:「電話をくれる?」

ジョーンズ:「電話?ノーだ」



女性としてエリザベスに興味のあるジョーンズでしたが、診療については良くは思っていないようです。

躁病相(双極症Ⅰ型)、軽躁病相(双極症Ⅱ型)ともに、いわゆるハイな状態なんですね。

患者さんはこういった爽快な状態を維持しようという傾向があります。

こういった期間は家族や親しい人にとって、時には困難な時期でもあります。

本人の本心とは離れたところで、その言動に傷つけられてしまうんですね。

それはとても論理的だったりもするので、余計に傷つきます。

そういうこともあって、家族や親しい人たちは患者がうつ病相でいる方を望んでいて、本人が躁病相を好んでいるのとは正反対の思いになります。

そうしたことでお互いの関係がこじれてしまうんですね。

 

 



08.診断

 

ジョーンズについて、精神科医同士で議論しています。
 

Dr.キャサリン:「彼を退院させない理由は?」

エリザベス:
「誤診です」

「統合失調症の症状ではないというの?...」

「テンションが高く、詮索好きで、躁病的」

Dr.パトリック:
「とにかく彼は薬を拒否してる」

「公聴会に持ち込めば、彼は勝つ」

エリザベス:「退院させたらまた屋根に登るわ」


いつも通り、ジョーンズは病院の中庭で爽快にリズムをとっています。
 

ジョーンズ:
「いい気分♫」

「心ウキウキ!」

「いい気分♫」

「心ウキウキ!」

「いい気分♫」

「僕には君がいる!」



ジョーンズは陽気にダンスします。

こういった病状を説明するシーンは特徴を表現するのに必要な所ではありますが、同時に私たちはいたたまれない気持ちになります。

彼はおどけているのですが、故意の本心の意思からではありません。

躁病相の行為は本当の人格かという議論があります。

わたしもたくさん考えて来ました。

神に反逆して正義、道徳、倫理とは真逆のことをするという考察記事を書かれていた方もいます。

わたしは思うに、人は怒ったときに限界を越えて爆発するときがありますよね。

感情が振り切れた状態だと思います。

抑圧された悲しい気持ちのうつ病相から、一気に気持ちが溢れ出した状態が躁病相なんだと思うようにしています。

自然な身体の治癒力だと考えるとそうした作用なのではないかと思いますし、そういった考えの方が本人に対して思いやりや優しさがあると思います。

怒りや悲しみで我を忘れたとき、これが本当のこの人の本心だと思う人がいますか?

感情のバランスを保とうとする、身体の防御作用なんだと私は思います。

こうした自分の心や身を守る行為のために、人が離れて行ってしまう。

残された患者は自責の念に突き落とされる。

このような、人の尊厳もない無情な病をどうして神は作ったのか。

怒りをぶつけるところがないですよね。

感情をもて遊び、どん底を味あわせ、そしてカラ元気を与える。

この苦しみの落差、非常さ、残酷さ。

そういった病に一生苦しまなくてはいけない。

そんなふざけた神の遊び心を思わせる、とても嫌な無情なシーンです。

 

 



09.スーザン

 

ジョーンズは街で次々と女の子に話しかけます。

読んで下さっている双極症の方にお伝えします。

これは誰にでもあるパターン化された症状です。

本心ではありません。

落ち込まないで下さいね。

人は多幸感を感じると人とおしゃべりしたくなるものです。

皆そうですよ。

次は日常のストレスを盛り込んだシーンになります。

どんな人にも精神疾患は起こり得ることを教えてくれます。

こういった不快感の繰り返しが精神疾患を生むんだなと分かる場面です。

銀行内で上司が部下にミスを指摘しているところです。

 

女性銀行員スーザン:「いいがかりです」

上司の銀行員:「君の対応が『無礼だった』と」

スーザン:「身元確認のために...」

上司の銀行員:
「うちはこの州第二の銀行だよ」

「客の対応はもっと丁寧にして欲しい」


そこに陽気なジョーンズが現れます。

女性銀行員は叱責されていた重い表情から、気持ちを押し殺して、明るく客に対応します。

 

上司の銀行員:「ほら客だ。今度はきちんと対応しなさい」

スーザン:「今日は何でしょう?」

ジョーンズ:
「チーズ・バーガーとチョコ・シェイクで頼むよ」

「冗談だよ」



先程まで気落ちしていたスーザンは朗らかに笑いました。

詮索好きのジョーンズですが、一方見方を変えると、人の表情や仕草を読み取って、相手を受け入れる力があるのですね。

 

ジョーンズ:「口座を解約したいんだ」

スーザン:「先週開いたのに?」

ジョーンズ:「僕はきまぐれでね」

スーザン:
「分かりました」

「12,752ドル、全部100ドル紙幣でいいかしら?」

ジョーンズ:「プロの君に任せるよ」

 

すごく魅惑的なセリフですね。

リチャード・ギアの甘い顔で言われると女性は一目惚れしちゃいますね。

人生で一度は言ってみたいセリフですね。

 

ジョーンズ:
「チップ用の5ドル紙幣をたくさん入れてくれる?」

「利子もね」

スーザン:「5日間の利子です。5.5%」

 

5日間しか銀行に預けてないなんて、本当に気まぐれです。

するとどうでしょう、スーザンの笑顔が行員でなく女の顔になっているんですね。

女性は好意をもった人に対する姿勢がとてもわかり易いですね。

目がキラキラしていますよね。

こういったところを見れるのも映画という映像芸術の魅力です。

 

ジョーンズ:「12,752ドルだから...9ドル60セントの利子だね」

スーザン:「すごいわ!」

ジョーンズ:
「簡単な計算さ」

「簡単だよ」

「君に100ドルあげるよ」

スーザン:「そんな悪いわ」

ジョーンズ:「君には必要なんだ」

スーザン:「なぜ?」

ジョーンズ:「僕に昼飯をおごるから」

 

二人は陽気に街に繰り出します。

スーザンは仕事を早退したのでしょうか。

嫌なことを置き去りにして、街に繰り出す。

なんて爽快な気分でしょう。

 

ジョーンズ:「僕と彼女にチリ・ドッグをくれ」

露店員:「100ドル?釣りがないよ」

 

 

 

~PART2へ続く