Bag.
僕はずいぶんと長い間、重たいカバンを持って歩いていた。
そのカバンには、何が入ってるのかも覚えてないぐらい、いっぱい詰まっていて。
思った時に、大事なものを取り出せなかったり、見つからなかったり。
カバンに入れたと思っていたはずのものが入っていなかったりして。
だけど、何がそんなに必要なのかわからないけど、ぎっしり詰まったそれを、持っていないと不安で、仕方なくて持っていた。
どこへ行くにも、重たいのを我慢して持って歩く。
ある日、煙草が切れたので買いに出てみたら、カバンを持たずに出てしまったことに気がつく。
気付いてすぐは、物凄い不安に襲われた。
カバンを持たない自分に。
手持ち無沙汰で、心許ない。
けれど、外は風が気持ち良くて、サンドイッチとミルクを買って外を歩き出したら、どうでもよくなった。
今まで、せかせかと時間と仕事に追われるようにして歩いていた自分が、急に馬鹿馬鹿しくなった。
あのカバンの中には、何が入ってたっけ?
プライドとか意地とか、偏見の固まりに、猜疑心と虚栄心に曇った心が、いっぱい詰まってたんだっけ?
真っ黒な手で掴んだものはなんだろう?
カバンの奥底にあいた穴からは、大切なものをどれだけ落とし、見失っただろう?
今日この晴れた空のように、身軽になれたら、また新しい想いでカバンをいっぱいにしながら、歩きだそう。
深く煙草を吸い込み、白い煙を吐き出しながら、青空高く飛ぶ鳥の影を仰いで、僕はそう思った。