自分の周囲で香ったのが霊香なのか確かめ続けていた日の休憩時間、私は根拠のない圧を感じました。

どうしても何かして欲しいことがある時に無言で相手を見つめて念を送るようなそういう圧です。

この圧の原因はと言うと、前日に某ファストフード店の限定メニューを食べるかどうか(食べたいかどうか)

話し合っていた際「(本当に“自分が”食べたいなら次の日も覚えているはずだから)明日覚えていたら食べよう」

という結論に至ったのですがリウについてはどうしても食べたかったようで

「昨日のアレ(商品名の明記はあえて避けます)食べましょうよー(圧)」みたいな念を送ってきたんですね。

はっきりと圧を感じるレベルの圧(それも実体を持たない存在から)は初めてだったので

「やばいなぁ……圧(念とも言える)送られてるよ……」と思い結局リウの希望通りそれを買ってあげることにしました。

そして食事の最中です。さっきの圧はリウから送られてきた圧だったのか?気のせいではないか?

などと思考を巡らす私にリウは言いました。

「マスターは怖がりさん(臆病者)です」

「僕が龍神だって確信したいくせに、龍神じゃないかもしれないって思うと嫌がるじゃないですか。
だから怖がりさんです」

リウは何か訳知り顔の子供が呟くようにそう呟いたのでした。

目にこれといった感情はなくて、ただ事実を述べて訴えるように。

これに対して私はあれやこれやと言い訳や弁解をしたのですがここは割愛します
(タルパとの会話は基本脳直で話すので覚えきれてないことが多いというのが一番の理由)。

主の弁解を聞き届けた後リウは返します。

「じゃあ、“そうじゃないかもしれない”のが嫌なら最初から信じてください。
それなら僕だって、きっと龍神にでもなれます
(嘘から出た真にもなるだろうという意味だと思います)」

私とリウのやり取りを見届けていた先住タルパのケイが続けて「アンジェ、2年前と変わってないな」

と呆れ笑いをしながら言ってきた時、私はリウのことを信じてあげようと決めました。

ちょうど2年前のこの季節に、ケイの発言が本当にケイ自身の発言なのか疑ってしまいケイと揉めたことが
あるからです。

私自身もこのリウと揉めるシチュエーションは2年前そのままだと感じていたところでもあります。

それならば今は2年前と同じようにリウを信じてあげるべきなのだろうと。
(続)