沖縄からドラゴンフルーツとアンダミスーが送られてきました。


沖縄の「アンダミスー」は、標準語に訳すなら「油みそ」といって、豚肉を細かく切って炒め、豚肉から出てくる油に砂糖、みりん、泡盛、みそで味付けするのですが、沖縄のおにぎりに入れる具の定番になっています。


普段はアツアツのご飯にのせて食べるんですけどね。


暑い沖縄の環境で生活する人々の知恵なのでしょうね、保存食として、そのような食べ物がたくさんあります。


幼いころから、「おにぎりの具」は「アンダミスー」しか口にしたことがなかったので、親元を離れて生活したとき、「うめ」や「シャケ」「おかか」のおにぎりが入ったお弁当を初めて食べて、とてもおしゃれに感じたことがありました。


アンダミスーのおにぎりが、田舎臭く思えて何年も食卓に上ることはなかったのですが…


でも、もう年なんですかね…昔なつかしい味を求めるようになってきているように感じます。



どれくらい島に帰ってないだろう…。



沖縄本島へは確か「神と共に歩む」の大会に出席して以来、一度も行ってません。



十数年ぶりに再会するJWの兄弟姉妹と、当時の思い出話しが尽きずに夜を明かしました。



十数年経っても、組織にまだ留まっているJWや、当時親しくしていたJWで、離れたJWもいました。




その時の大会で、とても懐かしい兄弟姉妹をステージ上で見ることができました。

お二人はご結婚されていて、夫婦で大会プログラムの実演をされていました。




私が十代の頃、お二人は独身で共に接点がありませんでした。


姉妹は私が交わっていた会衆の姉妹で、同じ会衆に婚約者がいました。




また、兄弟は私の母が住む離島の職場に転勤してきて、母が「えっ…●●さん、エホバの証人なんですか…うちの娘が沖縄本島で看護婦になるために学校に行ってるんだけど、最近エホバの教会に行ってるらしいのよね…」と話したら、この兄弟が「娘さん看護婦目指しているんですかぁッ!ダメですダメです!エホバの証人になるなら、看護婦になっちゃいけません!看護婦はどうしても輸血の問題が関係してきます。医療で輸血の現場に遭遇する可能性が高いんです!うちの会衆にも元看護婦がいるのですが、二人とも輸血の問題で看護婦を辞めているんですよ。エホバの証人になるつもりなら看護婦は諦めたほうがいいです。」と忠告したらしく、それを切っ掛けに私は母から凄い迫害(笑)を受けました。



確かに、島の元看護婦の姉妹のことは良く知っていました。


その姉妹とは、ファーストフードでバイトしている頃に知り合って、看護婦になる事を進路としていた私には「元看護婦」ということでとても関心がありました。


その姉妹から、はじめて聖書を見せてもらい、はじめて神にはみ名があると教えてもらいました。


島に帰省したときは、その姉妹に研究司会をして頂いてたので、母から「エホバの研究辞めなければ学校を辞めさせる!」とか、「来月から仕送りは停止する」とかの脅しに、泣きながら島の元看護婦の姉妹に「母の職場に転勤してきた兄弟は誰なんですか?どうして母を刺激するような事を言ったのでしょう?無責任です」という内容の手紙を書いた事がありました。



帰省した時、島の会衆に交わり、その兄弟と初めてお会いしました。



兄弟は心なしか申し訳なさそうにして、「はじめまして…お母様とは職場でご一緒させて頂いてます…Angeさん、お母様にお顔立ちが似ていらっしゃいますね。」とだけ話され、後は会話が続きませんでした。



母は、その兄弟の事を「変わっている人だよ…職場でも浮いているし、職場の人たちとの会食で二次会はカラオケに行った時も、課長が『長崎の鐘』を歌ったら、画面に教会の十字架が映ったんだよね、そしたらその人、『うわぁ~!十字架だ!オェ~吐き気がする、十字架は気持ちが悪い!ヤメテくれ!』と発言して、課長は気持ちよく歌っているのに、本当に非常識な人だとヒンシュクかってたわよ。

あんたたちキリスト教なんだから十字架を拝むんじゃなかったの?変な宗教だね。変な宗教に入ってる人はやっぱり変な人なんだね」と嫌っていましたが、とてもそのような常識のない方にはお見受けできませんでした。



母の証言には個人的感情が入っているので、多少オーバーに伝えたと思いますが、JWが十字架を否定する教えは知らないので、十字架の映像を見た兄弟が十字架を否定した発言は確かにあっただろうなと思いました。


でも十代の私は、若さゆえの偏った正義感があったので「本当に十字架を見て、『十字架は聖書的ではありません』と言うのではなく、『オェ~!気持ちが悪い』って言ったの?母さん大げさに言ってるんでしょ!」と責めたことがあります。


何度問い詰めても、母は「嘘じゃない!本当に顔も歪めて体も震わせて『オェ~!』って嘔吐する真似したんだよ!みんな見てたんだから!今度母さんの職場の■■さんに会った時聞いてごらんよ!母さんが本当の事言ってるって証明できるから!」と強気でした。



今あの組織を離れて感じることですが、母が言ってたことはもしかしたら本当だったかもしれない…なんて思ったりします。



この兄弟の実弟は、国内ではもちろんのこと、海外でも活躍されているタレントで、巧みな芸で観客を魅了しているエンターテイナーです。

その方が出演するテレビ番組を見ると、いつもその兄弟のことを思い出します。



姉妹のほうは十代の私にとって、憧れの女性で、清楚で大人の女性という印象が強く残っています。

とても裕福なご家庭のお嬢様で、エホバの証人になることをお父様が凄く反対したらしく「大学にまで行かせたのに、まともな職に就くこともせず伝道かぁッ!」と激怒したそうです。


そんな背景のある姉妹でしたが、会衆に婚約者がいました。


その兄弟はヒッピーのような生活をしていたころ、JWと聖書研究して生き方を変えた兄弟でした。


二人に結婚意志があることを会衆の主宰監督に報告はしたそうですが、会衆内での発表はまだありませんでした。


姉妹のお父様が結婚に反対していることもあったかもしれません。



婚約者の兄弟は、とても控えめな方で、あまり自分を表に出さない方でした。

集会で、いつも最前列に座るのですが、生活を変えた兄弟の証よりも、兄弟の聖書が印象的でした。


私の新世界訳聖書は、おろしたてで太さも厚みがなく、手垢もついていない真っ白な聖書でした。

でもその兄弟の聖書は、同じ新世界訳聖書なのに、私の聖書の何倍も厚く手垢がついて、聖書を閉じると白い紙が灰色に変色していて、おまけにヨレヨレに波をうってました。


それくらい一冊の聖書をかなり読み込んでいたという証拠なのでしょうね。


私は、そんな兄弟の事を「本当にみ言葉を愛して大切にしている人なんだな…信仰のある方なんだな」と、とても好感が持てました。


ヒッピーのような生活していた兄弟ですから、いくら生き方が変わったといっても、正社員として働くには年齢も関係してきますし、ましてやJWになったわけですから、安定した収入がのぞめる職に就くわけでもありません。


でも、そんな兄弟の事を姉妹は将来の伴侶として選んだという事に、「学歴、職歴は関係ないんだ…やはりみ言葉を愛する者は、エホバと同じようにその人の心をご覧になるんだ」と、「これが真実の愛というものなんだ」と勝手に感動していたことがありました。




でも、あれだけ御言葉を愛し、あれだけ信仰が厚く、あれだけ聖書を調べることに誰よりも熱心だった兄弟が、集会を休みがちになりました。




その頃から、姉妹の表情も明るさを失い、あまり元気がないご様子でした。


会衆の姉妹たちから、「あの兄弟、完全に奉仕に出なくなったし、このままだと集会にも完全に来なくなるだろうね…」と心配され、「霊的に弱っているし、それだけじゃないのよね…兄弟には背教の疑いがあるらしいから、Angeちゃん、集会で会ったとしても、あまり声かけちゃだめよ」と注意されました。


その時、「背教」ということがどんなことなのか姉妹たちから教えてもらい、当時の私には衝撃的で、「あんなに聖書をよく読んでいる兄弟に背教の疑いがあるなんて…背教ってことは、真理を否定しているってことでしょ…真理を否定するってことはサタンの手先じゃない…そんな…あの優しい兄弟がサタンの手先になるなんて信じられない…何かの間違いじゃないの…」と姉妹たちに話している時、涙が止まらなかったことがありました。



泣いている私に、一人の姉妹が「聖書を深く調べようとするとき、気をつけなければいけないことは、知識の罠に陥ることなのよ。

そういった人は、聖書を理解すると、自分の理解のほうが正いと思い、油注がれた統治体よりも自分の聖書理解を高めようとするの…

それこそ高慢な霊でしょ…

統治体の理解を否定するなんて、恐ろしいことよ。それはエホバの権威を否定していること、エホバに対して挑戦している行為なのよ。」と「背教」ということが、どれほど恐ろしいものなのかということを説明されました。



それからしばらくして、兄弟は全く集会に出席しなくなりました。



そして数か月後には会衆の誰にも…婚約者の姉妹にも「さよなら」も言わず、行先も告げず、誰にも知られないようにアパートを引っ越し、どこで生活しているのかも分からないまま消息不明となりました。





とても悲しかったことを覚えています。




あんなに会衆の兄弟姉妹の世話になり、将来を誓った姉妹まで悲しませるような不義理をしたのかと、兄弟のことが分からなくなりました。





でもね…



でも…



今となると、兄弟の気持ち、よくわかります。




兄弟…





もしかしたら兄弟はきっとあの時、この組織が偽りであることを知ってしまったんじゃないですか…?






当時、あの組織は急成長で信者も増えて勢いがありました。

そんな中で、組織に疑問を持つような言動がみられるなら、あの組織内の圧力も今より強いものがあったと思います。


どんなに真実を伝えようと、愛を動機で組織の偽りを仲間に伝えたとしても、カルト思考で凝り固まっている者を脅えさせ、自分自身も組織から背教者として吊し上げられ、仲間から村八分されてしまいます。

集団リンチを受けるようなものです。

公開処刑されるようなものです。


そういったリスクを考えると、兄弟も一人で苦悩されたのではないだろうかと胸が痛みます。


今でも、その兄弟がどこでどうしているのかはわかりませんが、あの組織で受けた心の傷が癒されることを願っています。


そして、あれだけみ言葉聖書を愛し、信仰を持っていた兄弟ですから、信仰を捨てず真理を求め続け、真の神様と正しい関係に入られているだろうと信じています。