私の職場は調剤専門の薬局です。

お医者さんが発行した処方せんを持って来られた患者さんに対して、処方薬の説明をしたり、体調についてのお話を伺ったり、患者さんの質問に答えたりなどして、お薬を手渡すことが主な業務です。

 

ところが、ここのところ厚生労働省からの通達で、処方せんをお持ちでない方でも気軽に立ち寄れるような薬局、いわゆる健康サポート薬局(注)を目指すように求められるようになりました。

 

注:

健康サポート薬局とは、厚生労働大臣が定める一定基準を満たしている薬局として、かかりつけ薬剤師・薬局の機能に加えて、市販薬や健康食品に関することはもちろん、介護や食事・栄養摂取に関することまで気軽に相談できる薬局のこと。 (日本薬剤師会のホームページより)

 

この健康サポート薬局の認定を受けるために、薬剤師に課される学習課題が相当な時間数あり、e-ラーニングで学んで試験を受けたり、休日を返上して講習会に出てレポートを書いたりしてきました。

勉強したことは即患者さんの役に立ち、喜ばれたり感謝されたりして、仕事のやりがいにもなるので、それ自体は苦ではありません。

なので、ここまではまあ愚痴も言わずに、むしろ感謝して働いてきました。

 

しかしハード面での改革が思うように進みません。

健康サポート薬局では、処方薬の他に市販薬、健康食品、介護用品なども取り備えなければなりません。

社長の再三に渡る要請で取り揃えるように言われても、薬局長がとにかく動かない!働かない!

私自身、さすがに上司を飛び越えて仕事をするのもはばかれるので、様子を見つつ、

「仕事が増えて面倒ですよね。でも、社長の気持ちが落ち着けるように、少し何か置いて見ませんか?患者さんへのサービス向上にもなりますし…」

と薬局長にやんわり促したりしていました。

 

以前から少しずつ健康食品や化粧品の販売も始めているのですが、これも結局は薬局長が全く動かずで、仕方なく私が職場のみなさんと相談しながら品目を決めて仕入れ、販売をはじめたものです。

なので、取引き先の担当者は、私を名指しで電話をしてきたり、来局されたりします。

本来なら対外的なやりとりは全部薬局長の仕事だと思うのですが、彼女にはその自覚がありません。

市販薬の販売については、さすがに管理薬剤師(薬局長)が取引きをしなければならないので、私は何もできないままでいました。

そしたら社長自らが話を進め、今年11月にようやく市販薬58種類(これも厚生労働省が決めている品目)の納品に漕ぎつけました。

 

「市販薬もやっと納品できたので、値段を赤字にならない程度の安価に設定して、早速陳列しましょうか」

と私がやる気満々に薬局長に声をかけたところ、

「ヘタに売れても困るから、目立ないところに置いておこう」

と言って何もしません。

仕事の指示すらしないのです。

納品した市販薬は倉庫に置いたままになりました。

 

市販薬が納品された2日後、納品業者の担当者が薬局を訪れました。

店内をぐるりと見回して、

「あれ〜?置いてないんだ…」

と力なく呟きました。

担当さんはすごくがっかりしたのだと思います。

おそらくウチの社長にせっつかれて納品をものすごく急いだのに、その割には何も販売されていなかったからです。

私はまずいと思って、担当さんが帰られた後すぐに市販薬販売用のカードを患者さんの見えるところに並べることだけはしました。

 

その2日後、社長がやって来て昼休み中ずっとキレていました。

社長は、

「市販薬の販売について適当にカードを並べてるだけって、どういうことなの?これがみんなで話し合ってやっていることなら、本当にがっかりだ!」

と大声で言いました。

 

それに対して、誰も何も言いません。

薬局長だけが怒られるならわかるけど、なんで他の人たちまで怒られなきゃいけないのか、納得がいかない。

社長は現場の事情を少しも聞こうとはせず、一方的に言いたいことを言って怒っています。

ここで薬局長が「自分の責任です。すぐに対応します」と一言言えばいいのに、全く何も言いません。

私は彼女の無責任さを声を大にして訴えたかったけれど、たぶん本人が一番わかっていることだろうからとグッとこらえていました。

それにJ兄さんだったら、誰かを責めることはしないでしょうから、私はとにかく赦すだけだと思い直していました。

 

ある意味ここで、社長がキレてくれたおかげで、実はグッと仕事がやりやすくなりました。

薬局長を飛び越えて、みな仕事をせざる得なくなったからです。

なので、私はすぐに市販薬のディスプレイをし、宣伝用のポップを作り、『市販薬の販売はじめました。お気軽にご相談ください』と書いて数カ所に貼り出しました。

(ここでも薬局長は市販薬の値段を決めただけ。それも私がお願いしてようやくやってくれた。)

 

誤解があるといけないので、あえて言いますが、薬局長はリーダーシップを取って仕事を分配し、部下に指示を出すことは得意ではないようですが、人柄はものすごくいい方です。

とてもやさしいし、実は頭もよい方です。

記憶力に優れ、計算もめちゃくちゃ早いし、調剤、投薬については間違いがほとんどありません。

人としては信頼できる方です。

ただ一つの欠点が、“積極的に仕事をしない”という点だけ。

これも考えようによっては欠点ではないかもしれません。

というのも、仕事の指示がほとんどないので、結構自由に仕事ができるからです。

だからって、立場を超えてまで仕事をするのはやはり違うので、薬局長には責任者としての自覚を持って、長として果たすべき責任はちゃんと果たして欲しいと思います。

 

ここで、今までの話を聖霊と共にコース的に見直しました。

全ては私(自我)の投影であり、ねつ造なのです。

私はこの世界の唯一の仕事である“赦し”をあまり積極的にはやらないし、神の子としての自覚を持って、神の子として果たすべき責任(赦すこと)をちゃんと果たす必要があるのだと思いました。

 

そんな風に思っていた矢先、「ACIMで行こう!」のタオさんにお会いする機会がありました。

タオさんと一緒にいろいろおしゃべりして、ガハガハ大笑いしていたら、私の仕事の悩みなんて見事に吹き飛んじゃいました。

(悩みについては一切話していません。)

笑ったら悩みなんてものが何にもなくなっちゃった!という感じなのです。

『何でも笑い飛ばすのが一番』という形の赦しのように思いました。

 

27章 Ⅷ.6.2-4

すべてが一なるものである永遠の中に、一つの小さな狂った考えが忍び込み、その時点で神の子は笑うことを忘れてしまった。彼が忘れたとき、その考えは深刻なものとなり、達成することも、実在性ある結果を生むことも、どちらも可能なものとなった。私たちが一緒に居れば、そのどちらをも笑って退けられる。

 

その後、私は相変わらず薬局長にお伺いを立てつつ、積極的に『健康サポート薬局』を目指して、真面目に仕事をしています。

以前なら『余計なことはやらなくていいし、やりたいなら勝手にやればいい』という感じの薬局長でしたが、今では私のアイデアを受け入れて、薬局長自ら協力して動いてくれるようになりました。

彼女は相変わらず仕事の指示はしないので、まるで立場が逆転しているようなのですが、私はそれを気にしなくなったし、薬局長はむしろ楽なようなので、お互いwin-winということで、よい雰囲気で働いています。

社長の文句も収まったし、やれやれ、何とかよい形で仕事納めの日を迎えることができました。

おかげで良い年越しになりそうです。

ありがとうございました。