たどり着くには
ハードルの高いパン屋さんである。
最寄駅が遠く
バスも中途半端。
なにより、木金土しか営業してない。

勇気を出して電話したら
朝7時半から開いてるという。
お目当ての食パンは9時くらいに焼きあがるとの事!
おっ、朝なら仕事前に取りに寄れるやん、と思って
その旨伝えると…
お昼じゃないと渡せないという。
なぜ?
そこで、電話の相手がかわる。
どうやらおばあちゃん店主に電話を代わった様子。
「どちらさま?」
「いや、初めてなんです…。」
「あら、だれかの紹介?」
「いえ、おいしいって噂をお聞きして。
食パンを頂きたいんです。」
「なに、食パン何人分?」
「1人です。」
「食パンは焼き立ては美味しくないのよ。
冷めないと切れないし。
とっといてあげるから夜おいでよ」
「は、はい。」
「名前と電話番号教えて」
「090-〇▽・・・」
「えーーーーつ?聞こえないよー!」
「090-〇・・・」
「はいーーー???」
「0・9・0・〇・▽・・・」
「大きい声でゆっくり言ってくれるーーー???」
こうゆうやり取り延々続く…。
わたし、ビビる…。
が、実はこのおばあちゃんがめっちゃいい人やった。
翌日。
仕事終わってダッシュで藤屋さんへ。
到着は夕方5時半。

なんといい感じの店構え!
お店に入ったら
もちろん棚にパンは一つもなく
お取り置きの名前メモが貼られた食パンがいくつか。
遅い時間やのに
次々に人がきはる。
あ、電話のおばあちゃんいた☆
70代くらい?
すこし腰の曲がった本気のおばあちゃまです。
「すみません、昨日電話した○○です」
「あー!
ほんとに来た!
電話よく聞こえなくてさ、でも一応とっといたよ」
「ありがとうございます♪」
「なに、この辺の人?」
「1つ先の駅です。」
「ひとり暮らし?ひとりで食べんの?」
「は、はい。」
「じゃ一枚ずつパックしてあげる。
何牧に切る?」
こうゆうやり取り延々と続く…(笑)
後ろでお客様が2人待ってるけど、
おばあちゃんマイペース!
結局
一枚一枚丁寧にパウチしてくれて
「お家帰ったらすぐにジップロックに入れなね。
パウチだけだと水分逃げちゃうから。
美味しかったらまた電話して。
とっといてあげるからねー。」
なんかよく分からんけど
最後のほう涙出そうになった。

シンプルすぎる
THE 食パン。
なのにこんなにおいしい。
今まで食べた中で一番の食パン。
もっちりで
ミミの部分の引きも強い。
それから香りがいい。
よく小麦の香りが強いパン、みたいなこというけど
初めてその感じが分かった気がする。
おばあちゃん!また電話する!
と心に誓った夜でした。